インタビュー映画祭・特別上映

『怪物』第76回カンヌ国際映画祭 日本用囲み取材

©2023「怪物」製作委員会

 フランス時間5月17日(水)にコンペティション部門での公式上映を終えた『怪物』(インターナショナルタイトル:MONSTER)より、是枝裕和監督をはじめ、脚本家の坂元裕二、主演の安藤サクラ、永山瑛太が、日本用囲み取材に参加した。

●フジテレビ

映画が終わった後大きな拍手が送られていましたが、皆さんの反応をどう見られましたか?

坂元:カンヌのスタンディングオベーションを見たことないものですから、どれくらいのレベルか分からず監督を見たら微笑んでいたのでいい反応だと思いました。胸が震えるような思いがしました。
永山:まずは本当に感謝したい。是枝さん、坂本さん、さくらさん、皆さん含め怪物に携われたことが今まで俳優やってこられて良かったなと思いました。
安藤:地響きのような拍手で圧倒されました。監督の姿を目に焼き付けようとずっと監督を見ていました。なにより主役の(黒川)想矢と(柊木)陽太と一緒に感じられたら良かったのになと思いながらいました。夜遅い時間での上映だったので、2人が一緒にいられなかったのが、もやもやっとしました。しっかり2人に伝えたいなと思います。
監督:トップバッターだったんで責任重大だなと思いながら現場にいましたが、上映後の観てくれた方達の顔がとても輝いていたので、良かったなって思いました。

●共同通信

拍手も盛り上がって、観客の皆さんも泣いてる方もいらっしゃる方もいて、地元の方に感想をお伺いしたら、Beautifulという感想が出たのですが、どう思いますか?

安藤:激しく同意します。初めて観たときになんと美しいものを見たんだろう、頭で考える美しさでなく、生きとし生けるもの全ての美しさを感じたので激しく同意です。
監督:なぜでしょうね。映画全体としては人と人が理解できない世界をずっと描いていくのだけど、観終わると、そういう光を感じるっていうのが、自分の映画ではない読後感で、それは坂元マジックだと思うのですが、それがしっかり届いたのではないかなと思います。

●北海道新聞

今回トップバッターということですが監督がリクエストしたんですか?

監督:結果的にそれは良かったなと思うのですが、そんなリクエストなんておこがましい。彼らがこの作品にとってベストな上映日時を決めてくれたんだろうと思っています。観終わってから、1日、2日、3日と反芻したほうが良い映画なのでね。

●日経新聞

監督、何百回も観ていると思いますが、今日観てどう思われましたか? 山田さん・川村さんが坂元さんと開発していた企画ですが、坂元裕二さん、坂本龍一さんと組んで何が加わったと思いますか?

監督:なんか違いました? 何が変わったか、か……。それは観た方が感じることだと思うんですよね。僕自身はこの作品の大ファンなんです。本当に面白いと思っています。自分で自分の映画を分析するのもなんだけど、通常はスライス・オブ・ライフを僕は描いているけど、今回は圧倒的に物語の推進力が強い。2018年12月にプロットをいただいて一緒に開発した一人ですが、描かれる人間たちの瑞々しさをしっかり描けてうまくいったんじゃないかと思います。そこがこの映画の強さじゃないかと思います。

●ハリウッドレポータージャパン

演じる上で気をつけたことと、意識したこと、脚本を読んでこんなふうに表現したいということがあったら教えてください。

坂元:できるだけ嘘のない物語を作ろうと心がけました。面白いストーリーを作るために一人ひとりの登場人物が物語に振り回されないように、一人ひとりが生きている物語を作りたいなと心がけました。特に子どもたちが出る物語なので、自分自身が子どもと遠く離れた歳になったが、自分にとって都合の良い子どもを描かないように気をつけました。
永山:ぼくは保利先生を演じたのですが、これまでも坂元脚本を演じてきたのですが、一貫してあるのは「生きづらさ」。僕に書いてくれるキャラクターはある苦しみを抱えている。意識することは過去とか未来を頭で考えることをやめて、今、共演者やカメラの前に立った時に、思考せずに本能的に感じられるか。今回は教師役で子どもと向き合う役だったのですが、とにかく余計なことを考えない、現場では監督を信じてやりました。
安藤:現場に入る前は、最終章の物語をどういい形にサポートしていけるか、最初の登場人物としてどう表現していくかというのを大事にしたい、その上で脚本を読んだ時に最初に感じた私の印象をお守りのように抱いて現場に入って、現場ではセットに入ったら、ニュートラルな状態で楽しく毎日撮影をしていて、現場で特に慎重に繊細にやっていたのは、触れ合うこと。人と触れ合う、息子とのふれあいの距離感だったり、校長先生もそうですし、そのちょっとしたふれあいで距離感が変わる作品なので、そこは繊細にやりました。ちょっとのふれあいで意味合いが変わるなということは、現場に入って思いました。
監督:この面白い脚本とこのキャストがそろった時点で監督はあまり余計なことはしないほうがいいとは思っていましたが、何が起こるか分からない中を、観客もいろいろな怪物を見ることになることだけを意識していました。スタッフが成熟して、取り組んでくれたので、素敵な現場でした。

●NHK

観た人にどう感じて欲しいか、一言ずつ教えてもらえませんか?

監督:今日見ていい表情をされているなとは思いましたが、どう感じているかは人それぞれなので、感じてほしいと思うのもおこがましいのではと思いました。
安藤:すごいご覧になって感じた感想を含めた質問でしたね。私全然違う感想だったので、今すごくびっくりしました。

スタッフも成熟したとありましたが、何かエピソードありましたら。

是枝:元の脚本を読み込んだスタッフが町や湖を見つけてきてくれて、スタッフがあの電車、車両を作ってくれて、それがこの映画の世界観、子どもたちだけの宝物である空間と時間を見事に表現している、その絵の持っている力強さがワン・カット、ワン・カット繋がったものが今回の結果だと思う。

●キネマ旬報

安藤さんへ、『万引き家族』以来のカンヌだと思いましたが、変わってましたか?

安藤:カンヌが変わったなんてまだ私には分かりませんが、私自身が二度目ということで、前回の初めての興奮じゃない状態でしっかりと味わおうという気持ちで、前回はあっという間に終わってしまったのですが、今回は「これがカンヌか」というのを噛み締めながら過ごしてます。

前回はパルム・ドールですが、拍手は前回と今回のどっちが大きかったですか?

安藤:今回!? あれ? 違う!? それは私の感じ方か。正解??

●ライター

映画の中で、嵐がでてくることでスペクタクル感がありましたが、あの雨を待っていたのですか?

監督:雨は全部降らしました。全部作りました。一箇所唯一校庭に降る雨だけ本物で、あとは作り物です。

●朝日新聞

監督はカンヌ7回目ですが、作ったり演出するうえで海外を意識するのですか?

監督:題材選びとか、そういうことですか? あんまり意識してないのかも。デビューして、僕らの世代はすぐに海外の映画祭に呼ばれていくっていう状況が1990年代~2000年代初頭にあって、どうやって日本の外で受け入れられるかを考えざるをえない時期があったんだけど、それを考えないと全く成長しないってことはないと勉強しました。自分のローカルな題材をしっかりと掘り下げていけば、地球の反対側にも届くと知りました。

坂本龍一さんが音楽担当されていましたが、やりとりはどうされていたのですか?

監督:映画の中で3回繰り返される夜の湖のシーンについて、ロケハンで諏訪に行った時に、ここに坂本龍一さんのピアノが入ると確信しました。ご体調のことはありましたが、一回自分の好きな坂本さんの曲を仮当てし、それをお手紙と共に送って見てもらいました。お返事が来て、映画全体を引き受ける体力はないのだけど、1~2曲閃いたから書いてみます、気に入ったら使ってくださいと返事のお手紙をもらいました。
 観た直後に音楽室のシーンがすごく好きだと言ってもらい、あのホルンとトロンボーンの音を邪魔しない音楽を作ろうと思ったという意見をもらいました。映画の中から聞こえてくるような曲になったんじゃないかなと、おこがましいけれど思いました。今日も最後に大好きなAquaが流れて良かったなと思いました。

 出席者:是枝裕和監督、脚本・坂元裕二、安藤サクラ、永山瑛太

公開表記

 配給:東宝、ギャガ
 6月2日(金)、TOHOシネマズ 日比谷ほか 全国ロードショー

(オフィシャル素材提供)

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