最新ニュース映画祭・特別上映

小津安二郎生誕120年記念プロジェクト『長屋紳士録』4Kデジタル修復版 カンヌ国際映画祭ワールドプレミア上映レポート

©1947/2023松竹株式会社

 第76回カンヌ国際映画祭(5月16日~27日)クラシック部門(Cannes Classics)にて小津安二郎監督作品『長屋紳士録』(1947年、英題:Record of a Tenement Gentleman)の4Kデジタル修復版のワールドプレミア上映が、5月18日17:30~(※現地時間)に行われた。(会場:Bunuel Theatre)

 現地では修復に合わせて新たに作成した海外向けポスターを掲出。長屋の和やかな雰囲気を表現したデザインが現地でも好評を博している中、来場したヴィム・ヴェンダース監督がポスターにサインをしてくれた。”For the next 60 years of OZU”の文字と、少年の肩に翼のスケッチを描いた。

 上映前には小山芽里(松竹株式会社 メディア事業部 海外版権室長)が登壇し、観客を前に作品紹介を行った。デジタル修復された『長屋紳士録』は世界中の映画関係者から高い注目を集めており、チケットは即完売に。上映にはヴィム・ヴェンダース監督をはじめ、大変多くの観客が来場。上映後の会場は大きな拍手に包まれ、世界中の注目を集める、熱気に溢れたワールドプレミア上映となった。

 小津安二郎監督作品のデジタル修復版は、2013年のベルリン国際映画祭の『東京物語』(2K)から世界三大映画祭クラシック部門へ10回目の選出。本年のカンヌ国際映画祭では小津安二郎生誕120年を記念し『長屋紳士録』(1947、松竹)と『宗方姉妹』(1950、東宝)の2作品がクラシック部門に選出。小津安二郎監督作品が世界三大映画祭のクラシック部門に同時選出されるのは史上初となる!

上映前スピーチ概要(松竹株式会社 メディア事業部 海外版権室長 小山芽里)

 本年は小津安二郎監督の生誕120年、没後60年にあたる節目の年です。小津安二郎は60歳の誕生日にその生涯を閉じました。監督なき後、彼の作品たちはさらに60年生き続けたことになります。60年は干支の一巡りであり、日本文化では生まれ変わりを意味しています。本年は小津安二郎と彼の作品たちにとって、非常に特別で記念すべき節目の年だと感じています。
 『長屋紳士録』は、小津安二郎が戦争から帰還して最初に製作した映画です。捕虜として過ごしたシンガポールから帰国した小津安二郎は、1947年に2週間で脚本を書き上げ、3月に撮影を開始。作品は5月に公開されました。後期の小津作品では、戦争は台詞の中で語られるだけで視覚的に表現されることはありませんでしたが、本作では公園に集う孤児たちや焼け野原の東京の風景など、戦争が落とした影が多々見受けられます。しかしながら決して暗く憂鬱なテーマを扱っているわけではなく、 他の作品同様にユーモアに満ち溢れ、「人と人との繋がり」や「家族になるとは」といった根本的なテーマを描いています。
 本作は戦前作品のキャストやスタイルを維持しながら、戦後の日本の生活を描き新しい時代をスタートさせた小津作品として、生誕120年での上映に相応しい映画だと思っています。

観客コメント

●修復作品や小津作品に興味を持つようになって今日観に来たのですが、作品を通して随所に散らばるユーモアや、誰にでも共通する普遍的なテーマもとても良かった。素晴らしい作品でした。(ドイツ人、20代男性)

●小津作品は初めて観ました。最初は良くなかった二人の関係性が少しずつ変化していき、最後には愛すら感じられるところがとても良かった。(フランス人、地元高校生)

●修復作品を初めて観たが、大変大変感銘を受けた。特に撮影のクオリティと修復のクオリティが素晴らしいと思った。(ポーランド人、30代男性)

●こんなに古い作品を観たのは初めてで、修復作品自体を観たのも初めてだが、クリアーな音声と画質のクオリティの高さに驚かされた。上映を観られて、素晴らしい経験になりました。(中国人、20代女性)

『長屋紳士録』(1947年、英題:Record of a Tenement Gentleman)

 戦災の焼け野原で迷った孤児を、文句を言いつつも引き取って面倒を見てやる長屋の心ある人々を描いた作品。飯田蝶子、河村黎吉、笠智 衆といった大船撮影所を代表する俳優たちが結集した、小津安二郎監督の戦後第1作。
 長屋に住むおたね(飯田蝶子)は、たった一人で金物屋を営んでいる。ある日、彼女の家の裏に住む田代(笠智 衆)が、親をなくした少年(青木放屁)を連れて帰ってきた。少年の世話を押し付けられたおたねは面倒に思いながらも、仕方なく一晩だけ泊める。翌日、少年がかつて父と共に住んでいたという茅ヶ崎へ向かうが、少年の身寄りは見つからなかった。やがて少年との共同生活を通して少しずつおたねにも情が芽生えていくが……。

 1947年5月20日公開
 モノクロ/スタンダード/72分
 監督:小津安二郎
 脚本:池田忠雄、小津安二郎
 撮影:厚田雄春
 美術:濱田辰雄
 音楽:斎藤一郎
 出演:飯田蝶子、青木放屁、小澤榮太郎、吉川満子、河村黎吉、三村秀子、笠智 衆、坂本 武

※ 同時選出された『宗方姉妹』(1950年、英題:The Munekata Sisters、東宝)の作品詳細はこちら:https://www.cinemaclassics.jp/ozu/movie/2868/(外部サイト)

これまでにデジタル修復された小津作品ワールドプレミア上映

4Kデジタル修復について

 小津安二郎監督作品『長屋紳士録』の35mmデュープネガをフル4K(4K解像度(4096× 3112)スキャン、4Kデジタル修復、4KDCP)で修復。画像修復は、近森眞史キャメラマンに監修いただき、イマジカにて作業。音声修復は、35mmデュープネガから96kHz24bitでデジタイズし、電源、キャメラ、光学編集、ネガのキズや劣化等、さまざまな要因によるノイズ、レベル・オーバーによる歪みを、原因に立ち返って類推し、清水和法さん監修のもと松竹映像センターにて修復。小津安二郎監督の製作意図を尊重して修復することを主眼に作業しております。

小津安二郎公式WEBサイト

映画監督 小津安二郎|トップ
映画監督小津安二郎オフィシャルサイトです。

(オフィシャル素材提供)

関連作品

スポンサーリンク
シェアする
サイト 管理者をフォローする
Translate »
タイトルとURLをコピーしました