イベント・舞台挨拶

特別講座2023 vol.3 NCWOBプレミアムトークセッション

 映画学校ニューシネマワークショップ(以下、NCW)が主催する「特別講座2023 vol.3 NCWOBプレミアムトークセッション」がオンラインで開催され、NCWOBで映画『愛がなんだ』『ちひろさん』などで知られ、今や日本映画界を代表する恋愛映画の名手となった今泉力哉監督、そして同じくNCWOGで、2022年の大ヒットドラマ「silent」で一躍注目を集め、恋愛ドラマの旗手として今後が期待される脚本家・生方美久氏との“初対談”が実現! 200名以上のオンライン参加者が見守る中、新世代恋愛作品のトップランナー二人による創作の秘密が語られる貴重なトークセッションとなった。

 以前からNCWのOB・OGにして共に恋愛作品を手がけ、共通項の多さから互いに気になる存在だったという両者。SNSの投稿で今泉氏との対面を熱望していたと生方氏に対して、今泉監督は「近しい存在だと感じていた、今日は貴重な機会」と本イベントの開催を心待ちにしていた様子。

 今回、初対面となった両者のトークセッションの前にお互いがトップランナーになるまでのキャリアの変遷が語られた。今泉監督は「一度映画に挫折したが、もう一度やりたいと最後の想いだった」とNCW受講の理由を振り返れば、今では脚本家としての地位を築いた生方氏は受講当初は映画監督を目指していたそう。「大学時代から映画が好きで、NCWに入る前から独学で脚本は書いてはコンクールに応募していた。ただ、いざ社会人になってやっぱり好きな映画を目指したいと思った時、映像のことは習わないと限界があると思った」とNCWの門を叩いた理由を回顧。

 二人が受講した映画クリエイターコースは「映画監督になりたい人」「映画をつくってみたい人」向けの半年間の講座。「まず撮ってみる」という実践中心のプログラムで、二人も在校当時、短編作品を制作。15分の短編作品『透明なシャッター』(04)を制作した今泉監督は「長尺で作ればよかった。内容的に15分に収める作品じゃなかった」と当時を思い返し、悔しさをにじませていた。一方、生方氏に初監督作品『まだ生まれていない、生きているあなたへ』(21)での監督業について触れられると「監督を経験して自分は向いていないと思った。監督は現場で周りをどう動かすのか本当に難しい。まずは脚本を極めようと思った」というエピソードを披露。しかし、「監督は諦めていない。いつか機会があればやってみたい」と監督業への意欲も見せていた。

 トークセッションでは生方氏から今泉監督へ「他の方が書いた脚本を現場で変えたい、もっと手を入れたいと思った時のさじ加減をどうしているのか?」という質問に対して苦笑いを浮かべながらも、「原作がある場合は、原作者や脚本家から事前に了承をもらいつつ、なるべく失礼にならない範囲でセリフを足すことがある」と回答。一方で、大ヒットした映画『愛がなんだ』では、原作者の角田光代氏と一度も会わずに制作を進行したという。当初、「角田さんにお会いして事前にお話したほうがいいのでは?」と周囲に話していたが、「角田さんは自身の原作と映像作品は切り離しているため、おそらく映画も観ることはないんじゃないかな」という話を聞いて「そうなのか」と思っていたそう。だが実際には、完成後に角田氏本人が初号試写にいらっしゃったそう。「あれ、話が違うぞ」という若干の焦りはあったものの、映画を観た角田氏が作品を気に入ってくれて安堵したという。さらに、その後、角田氏が原作を読み直すためにわざわざ本を探して読んだというエピソードを伝え聞き、今泉監督が興奮気味に「それが一番幸せでした」と笑顔で振り返れば、生方氏も「それはすごいですね!」と驚いた様子で反応していた。

 話題が脚本作りに及ぶと、「セリフへのこだわりがある、セリフを書くために脚本を書いている」と生方氏が言えば、今泉監督も「セリフにこだわりたいから自身の作品の脚本も共作にしてもらっている」と続く。一方で、プロデューサーからセリフを削ってほしいと言われ、いざ修正をしてみるとページ数が増えてしまうということもよくあるそう。いい作品の条件として会話に引き込まれることが大事だという想いがあるが故に「本当の言葉の意味やニュアンスを伝えようとするとセリフが増えてしまうので、どこまでこだわるか、いつもせめぎ合いをしている」と今泉監督が続けると、生方氏も共感するように頷いていた。

 その後も監督、脚本家の双方の立場から作品作りへこだわりやスタンス、映画、ドラマ問わず今後制作してみたい作品などの話が続き、トップランナー同士の刺激的な2時間半にも及ぶトークセッションは終了。そんな二人の貴重な初対談を見守った200名以上のオンライン参加者も彼らが作る今後の作品を楽しみに待ちつつ、映画・エンタメ業界の未来を感じたに違いない。

 登壇者:今泉力哉(『愛がなんだ』『ちひろさん』監督)
     生方美久(「silent」脚本)
 進行:小川和也(NCW映画クリエイターコース・ディレクター)、武藤起一(NCW主宰)

ニューシネマワークショップ

 2023年度10月コース(半年間/10~3月)説明会開催!
 第1回:6/25(日)、第2回:7/16(日)

(オフィシャル素材提供)

関連作品

スポンサーリンク
シェアする
サイト 管理者をフォローする
Translate »
タイトルとURLをコピーしました