イベント・舞台挨拶

『遠いところ』初日舞台挨拶

©2022「遠いところ」フィルムパートナーズ

 沖縄のコザを舞台に、幼い息子と夫との3人暮らしをする17歳のアオイ(花瀬琴音)が社会の過酷な現実に直面する姿を描き、第56回カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭[クリスタル・グローブ・コンペティション部門]に出品、Variety誌が“貧困にあえぐ日本の性差別を、痛烈に告発する。溝口健二的な現代悲劇”と激賞した映画『遠いところ』が、大ヒット上映中の沖縄に続き、7月7日(金)より全国公開を迎えた。
 7月7日(金)、待望の全国公開を迎えた映画『遠いところ』。ヒューマントラストシネマ渋谷にて、花瀬琴音、石田夢実、佐久間祥朗、尚玄と、工藤監督が集結し、初日舞台挨拶が開催された。

 主人公のアオイを演じた花瀬はモスグリーンのサテンドレスで登場し、「沖縄で先行上映され、ようやく全国公開ということでやっとだなという気持ちです」と笑顔で挨拶。警察官を演じた沖縄出身の尚玄は観客に向けて、「沖縄の若年層の貧困を描いていますが、この問題は沖縄だけの問題でないと思っているので、東京の皆さんに関心を持ってもらえて嬉しい」とコメント、工藤監督も「皆さん、本当に今日はありがとうございます」と感謝の言葉を口にすると、満席の会場は観客たちの温かい拍手に包まれた。


 工藤監督とプロデューサーが本作を企画してから、5年の年月を経て全国公開を迎えた。工藤監督は、「この映画に携わって下さった沖縄の方々、スタッフやキャスト、公開の配給、宣伝のチームに感謝の気持ちでしかないです」と改めて感謝の気持ちを伝え、「こういった沖縄の若年母子であったり、シングル・マザーのことを知るきっかけになったのは、沖縄から発信されているルポルタージュであったり、ノンフィクションの本でした。僕はそれを読んだ時、ものすごく強烈に登場する少女たちが脳裏に焼き付いて離れませんでした。男である自分がなぜ強く惹かれて、こんなにも強烈に映画を撮りたいと思ったのか、その感情を探るために取材からはじめたというのが、この作品のスタートです」と製作の経緯を説明した。

 過酷な現実に直面する若者たちを演じた花瀬、石田、佐久間は、撮影が始まる1ヵ月前から沖縄で生活をして役作りに挑んだ。花瀬は「アオイが実際に住んでいるセットに1ヵ月住んで役作りをスタートしたのですが、その中で沖縄のコザに住むアオイと同じような境遇のお母さんや女の子たちのお話を聞いていたので、そういった方々の声を大切にして演技に反映させていただきました」、石田は「この作品が女優のデビュー作だったのですが、本当に役作りというものが何か分からない状態で入ったので、花瀬さんや佐久間さんには“どうしたら良いの?”と聞き、真似をしながら自身で取り入れていきました。私と同じ役柄のようにキャバクラで働いている方や、実際に同世代の学生さんにインタビューしたり、そこで方言を学んだり、その子たちと同じような洋服を着たり、メイクをしたりして吸収していきました」と話し、佐久間は「僕はひたすら沖縄の人たちとお酒を飲んでいました。(役作りのために働いていた)工事現場で一緒に働きながらも、サボって電話が鳴りやまなかったり……アオイに“お金を貸してよ”みたいなことをやっていました」と役作りの準備期間中は、演じたマサヤと日常が混在しながら生活していた話すと、花瀬が「まだ3千円返してもらってないよ」と突っ込み、佐久間は「あ、そうだった」と忘れていたことを謝罪し、会場を笑いに誘った。

 続いて、沖縄が故郷である尚玄は、「いろいろな方が沖縄で映画を撮影する機会が増えてきて、僕も出身地の作品なので目を通す機会も多かったのですが、エッセンスの一つとして沖縄を扱われるというわけではないですが……もっと時間をかけて、じっくりとやったら違う描き方が出来るのではないかなと思う部分も多々ありました。でも、今回監督たちの覚悟をみて、何か僕に出来ることはないかなと思い、参加させていただきました」と工藤監督との信頼関係のもと、次世代に残してはいけない問題を描く本作への友情出演を決めたと明かす。

 撮影で苦労したエピソードについて聞かれた花瀬は、「ほとんどのシーンが精神的に辛くて、アオイとして大変だったシーンは多かったのですが、肉体的にきつかったのは裸足で走るシーンがあって……でも、何度走っても工藤監督に疾走感が足りない、本当に逃げているのだから本気で走れと言われて。でも、観ていただいたら分かると思うのですが、スローモーションで編集されているんですよ!」と赤裸々に語り、会場は驚きと笑いで包まれた。「本当に痛かったよね?」と石田と共感しあうと、監督は「すみませんでした」と謝罪。花瀬は「でも、あのスローがアオイの必死さが伝わり、画として素晴らしいんですよね」と作品の見どころを語った。

 尚玄は印象深いエピソードとして、「撮影場所のキャバクラで座っていたら、お姉さんが“何を飲みますか?”と尋ねてきたんですけど、それがお店の人だと思ったらアオイだったんですよ。沖縄の方言で慣れた手つきだったので、僕は“沖縄の子?”って聞いたら主演の花瀬さんでした」とアオイに同化したかのような花瀬のたたずまいが素晴らしかったと称賛した。

 工藤監督は準備期間中が印象深かったと明かす。「僕も助監督として仕事をしていたのすが、今の作り方に疑問を持っていたので、せっかく一生懸命やってくれるチームがいるので思い切っていろいろとやっていようと思っていました。彼女たちにはアプローチとして、普段の映画ではやらないことを挑戦してもらいました」と撮影へのこだわりを語り、「台本を事前に渡さずに、撮影の直前に読んでもらったり、1ヵ月前に沖縄に住んでもらって、彼女たち自身に当事者に話を聞いてもらうとか……そういうことを繰り返して、正解か分からないことをずっとやってきたんですが、本当に沖縄の子たちに見えてきて。彼女たちの演技でピリピリときた瞬間もありました」とキャスト陣の演技を絶賛した。

 事前に台本を渡されなかったことに対して花瀬は、「まさに今から皆さんが映画で観る目線が、本当にそのまま私の気持ちだったと思います」とリアルな映像としてとらえられているとコメントした。

 尚玄はこの映画が描く社会問題を、「他人事ではなく、みんな自身の問題としてちゃんと想像して向き合っていくことが大切だと思っています。もしこの作品を観て感じるものがあれば、ぜひ周りの皆さんにも伝えてほしいです」と観客に想いをぶつけた。続いて監督が、「この作品を作るまで沖縄について何も知らなかった。でも、尚玄さんがおっしゃっていたように沖縄で起こっていることは“遠いところ”では決してなくて、本当に同じ日本人の問題であり、こういったことは今もずっと続く問題であるということ、それを知っていただけるきっかけになればと一番だと思っています」とコメントし、「この問題を僕と一緒に“知る”という体験をこの映画を通じてしていただけたら幸いです」と言葉を締めくくった。

 最後に花瀬は、「皆さんがどう感じるかをすごく大切にしていただきたいですし、何か感じた時はより多くの人に観ていただけるように協力していただけたら幸いです。本当にありがとうございました」とこれから映画を観る観客たちにメッセージを送った。

 映画『遠いところ』は、全国劇場にて大ヒット上映中。

 登壇者:花瀬琴音、石田夢実、佐久間祥朗、尚玄、工藤将亮監督

公開表記

 配給:ラビットハウス
 大ヒット上映中!

(オフィシャル素材提供)

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