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『スイート・マイホーム』「第22回ニューヨーク・アジアン映画祭」齊藤 工監督 舞台挨拶

©2023『スイート・マイホーム』製作委員会
©神津凛子/講談社

 映画やドラマで俳優として活躍する一方、監督やプロデュース業でも多彩な才能を発揮している齊藤 工が監督を務める映画『スイート・マイホーム』が、現在開催中の「第22回ニューヨーク・アジアン映画祭」コンペティション部門に出品。北米プレミア上映となった同映画祭に齊藤 工監督が参加し、舞台挨拶を行った。

 先日開催された「第25回上海国際映画祭」での上映では、約6年ぶり(2017年同映画祭にて『blank13』がアジア新人部門での最優秀監督賞を受賞)の登場ということで上海のみならずアジア諸国のファンが会場に詰め掛け、大きな盛り上がりを見せた。今回の渡米でも、まず本日の上映と登壇で熱気溢れるスタートを切り、コンペティションの結果が発表される7月30日(日)のクロージング・セレモニー&授賞式まで目が離せない。(クロージング・セレモニー&授賞式は7月30日 18時45分[日本時間7月31日(月)AM7時45分]から開催)

 まず上映前に登壇した齊藤 工監督は、観客から大きな拍手で迎えられた。「『スイート・マイホーム』の監督として、北米でのプレミア上映となるこのニューヨーク・アジアン映画祭という場に立てていることを光栄に思っております。皆さんとこのような特別な感情を共有できて、とてもうれしいです。この作品は恐ろしい映画ですが、キャストの方々の演技は大変素晴らしいものです。この映画を楽しんでいただければ幸いです」。

 上映後に再び登壇した齊藤監督に、観客から惜しみない大きな拍手が送られた。「20年前に初めてニューヨークに来たのが、この映画祭でした。『海猿』に訓練生の役で出ていまして、ウェットスーツに酸素ボンベを背負ってトレーニングをするパフォーマンスをしました(笑)。ニューヨークの入り口はこの映画祭だったので、監督として再びこの映画祭に戻って来られて光栄です」。

監督を務めた経緯は?

 2019年の冬に、(本作の)中村プロデューサーから監督をしてほしいと言われました。僕はあまりにも悲惨な物語に、何度もページを閉じて、本当にこれを映像にしていいのかと疑いました。僕もこの作品を監督する想像は当初できていませんでした。そしてパンデミックが起こり、ステイ・ホームという時間を皆さんも僕も過ごして、一番守られるべきサンクチュアリー(聖域)である家の中で、さまざまな悲惨なニュースが目に耳に飛び込んで来ました。家の中というのは、必ずしも守られた安全な場所ではない。家だからこそ起こる悲惨な悲劇が、悲しいニュースがパンデミック禍に目に飛び込んできたことも、この作品を今、監督すべきと思った理由の一つです。そして人間は一つの綻びで、雪だるまのようにどんどん大きく悪魔になっていく。その悪魔を作るきっかけも人間の脆さだったりすることが自分にも当てはまり、この物語にどんどん興味を持って、監督することになりました。

撮影監督の芦澤明子さんについて。

 撮影監督の芦澤明子さんは、黒沢 清さんや原田眞人さんらの作品を撮られてきた、僕も尊敬する日本を代表する、日本映画には欠かせない女性カメラマンです。彼女の(撮る)フレームで、素晴らしい役者さんたちが切り取られるのであれば、原作に負けない作品になるんじゃないかと思いました。当初は、クローズアップではなく、ロングショットをたくさん用いた作品にしようと思っていたんですけど、撮影が進むにつれて、芦澤さんが俳優さんに寄っていくんです。これは役者さんたちのアップのカットが強い、アップのカットで見せていくべきだと彼女に言われ、途中からこの作品の方向やフレームがどんどん変わっていって、強い表情の作品になりました。今、皆さんと一緒に観て、彼女の指摘や感性は素晴らしかったなと、ここアメリカでも思いました。
 僕が生まれて初めてカメラの前に立ったのは、小学生の時に、父の仕事仲間だった芦澤さんが構えるカメラの前で全裸になって、とある教育ビデオの出演の時でした。なので、現場でもそうですけど、彼女にはすべてを見られるところから始まっているので、すべてを知ってもらっている思いで、ずっとその僕を見守る母親のような存在でした。

キャストについて。

「窪田正孝さんは、彼が受けてくれなかったらこのプロジェクトは進まない思いでした。原作にもジムのトレーナーで、グッド・ルッキングで、だけどその奥の奥に秘めた人間の醜い部分を持っている。だけど、最後まで観客に嫌われないような、絶妙な何かを繋ぎ続けてくれるような繊細なお芝居ができる日本の役者さんは数少ないし、僕ならできなかったし、彼が主役であることはひとつの大きな条件でした。彼が務めてくれたことで完成しました。
 窪塚洋介さんも、彼のアイデアで、目の動きだったり、しゃべり方だったり、原作の聡(さとる)のキャラクターより、強いキャラクターにしていただきました。
 奈緒さんと蓮佛美沙子さんもそうです。それぞれが難しい役なんですけど、自分からアイデアをたくさんくださって、原作を越えるキャラクターを共に作れたと思っています。すべて理想的なキャスティングがはまりました。
 僕はいつまで経っても一映画ファンで、(観客の)皆さんが座っている席に自分の目があります。自分が観たい映画、観たいキャスティング、観たいショットを、一観客として欲張りに願っているんです。なので、キャスティングに関しても、まずわがままを貫く、わがままを言わせてもらうのが、唯一俳優である僕が監督をする責任、責務だと思っているので、こういう奇跡が起こるんだなと、我ながら恵まれているなと実感しています。

日本のホラー映画などインスパイアされた作品について。

 おっしゃるようにJホラーを意識しました。なぜなら日本のホラーというのは、海外に向かって強みになると思ったからです。ただ、新築のホラーというものがなかなか無かったので、『Servant』と『Vivarium』には影響を受けました。
 自分が作るものは、家族の特殊な形だったり、母性というものだったり、作った後に指摘されて気づいたんですけど、どこかいつも作るものに自分なりのテーマが一貫しているというのもあるので、また新たなジャンルで皆さんに再会することも願っています。

 『Servant』https://www.imdb.com/title/tt8068860/?ref_=fn_al_tt_1(外部サイト)
 『Vivarium』https://www.imdb.com/title/tt8368406/?ref_=fn_al_tt_1(外部サイト)

ゴーストはいると思う?

 僕はいると思っていて。彼らの世界から見たら、僕たちがゴーストなんじゃないかなと。人間のほうが恐れられるべき存在な気がしています。『シン・ウルトラマン』でも怪獣の目線から見ると人間のほうが恐ろしくて、人間が人間のために作ったものが多くの生物を害しているという、いろいろな作品に実はそういったメッセージがあるんじゃないかなと思っています。

 最後にMCから、「今度は20年じゃなくすぐに次回作でまた戻ってきて」と懇願されると、会場は笑いと温かい拍手に包まれて、Q&Aセッションは締めくくられた。

 上映後の観客たちに本作の感想を聞くと、「最高! 不気味で素晴らしかった」「ふつふつと怒りが燃えていく感じとカメラワークが気に入った」「本当に不気味でとても興奮した」「物語がゆっくりスリリングに展開していくところがよかった」「窪田正孝さんの演技は素晴らしかった。ホラー映画、ホラー・ストーリーとしての彼の演技はとても才能があって感銘を受けた」など大絶賛!

 降壇後の齊藤監督も、「僕らの意図とは違うところで、面白いリアクションがありました。とあるキャラクターを観客たちは支持しているんだなという感覚がありましたし、上海に続き、いろいろな発見が海外の映画祭ではありますね。この感覚、基準、目線というものを忘れずに、日本で引き続きものづくりをしたいと思っていますし、いよいよ(本作の)公開が9月1日に迫るので、このニューヨークや上海でもらったエネルギーを、これからの宣伝活動や、最高の初日を迎えられるように監督として頑張っていきたいと思います」と語った。

 映画『スイート・マイホーム』は、日本国内では9月1日より全国公開される。

公開表記

 配給:日活・東京テアトル
 9月1日(金) 全国公開

(オフィシャル素材提供)

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