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『市子』第36回東京国際映画祭 Q&A

©2023 映画「市子」製作委員会

 現在開催中の第36回東京国際映画祭にて、映画『市子』の公式上映が行われ、メガホンをとった戸田彬弘監督が観客からの質問に答えるQ&Aが行われた。

 映画監督のみならず、脚本家、演出家としてもマルチに活躍する戸田彬弘監督は、2014年に『ねこにみかん』で劇場デビュー。代表作として、映画『名前』(18)、『13月の女の子』(20)、『僕たちは変わらない朝を迎える』(21)、『散歩時間~その日を待ちながら~』(22)などが有り、国内外の映画祭で評価を得てきた。近年では、佐久間宣行が企画、根本宗子が脚本を担当したsmash.配信ドラマ「彼の全てが知りたかった。」(22)を監督しており、今後の活躍にも目が離せない。今回上映された映画『市子』は、戸田監督が主宰を務め、全作品の作・演出を担当している劇団チーズtheaterの旗揚げ公演である舞台「川辺市子のために」が原作だ。サンモールスタジオ選定賞2015では最優秀脚本賞を受賞し、観客からの熱い支持を受け二度も再演をされている人気の舞台だ。

 今月23日から開催されている第36回東京国際映画祭では、杉咲 花、若葉竜也らと共に華やかなレッドカーペットを歩き、先週にはジャパンプレミア上映にも登壇した戸田監督。初めて日本でお披露目された本作への感想では、「あの目が、表情が、忘れられない」「個人を描くことで社会を切り取っている鋭い映画」「世の理不尽が分かっていて、だからこそ生きてやるっていう市子の生き方がいい」など、絶賛の声があがっている。

 そして、本日30日も公式上映には多くの観客が詰めかけ、上映後Q&Aに登壇した戸田監督は大きな拍手で迎えられた。まずは、主人公・市子本人の心情は描かれず、他者の目線から彼女を映し出していく本作の構成について訊かれた監督は、「(観客が)想像意欲を使えるようにと思い、主人公・市子の人生ドラマとして描いていくのではなくて、客観的な目線からその人を浮き彫りにしていき、想像していくことでしか彼女を想えないというスタイルにしました」と本作の独特の演出を明かした。さらに、「映画にするとき、ファンタジーやSFでなくこういうリアリズムなものを撮る際は、カメラに映ったものが真実として映っていくものだと考えています。本作では、市子に実在性がないように映していくにはどうしたらいいんだろうと考えて、最終的には視点を変えていく、市子の主観としてのシーンを見せず、客観的な視点にカメラポジションを置いてドキュメンタリータッチのように構成をしました」と、舞台原作からの映画化で苦労、工夫した点も語った。
 さらに、杉咲 花とどのように“市子像”を築いていったのかを訊かれた監督は、「杉咲さん自身も市子というキャラクターにシンパシーを感じてくれていましたので、とても思い入れを持って演じてもらえました。構成上、キス・シーンもちょっと深めにやりたいと相談したところ、“もちろんです。”と一言で受け入れてくださいました」と杉咲の本作への熱量を明かしつつ、市子という人物を作り上げていくうえで、「市子が置かれた境遇の方が持つ傾向を有識者に訊くと、“目立った服装や髪型をしない”とのことだったので黒のワンピースを象徴的に使い、髪型も染めたり巻いたりせず臨みました。メイクに関しても、本人からスッピンでやりたいと言ってくださいました」と語った。

 さらに今回、杉咲 花演じる主人公・市子が、力強い眼差しで一点を見つめる場面写真を公開。
 解禁となったのは、過酷な家庭環境で抗えない境遇に翻弄され続けた市子がとった“ある行動”が映し出されるワン・シーンだ。杉咲はこのシーンで、およそ6分間にも及ぶセリフ無しの圧巻の演技を披露。表情や所作で魅せる圧倒的な表現力で観客を唸らせた衝撃のシーンとなっている。今月行われた釜山国際映画祭での公式上映後のQ&Aでも、戸田監督は解禁となる場面写真の部分を好きなシーン・印象深いシーンとして挙げており、「この作品は、セリフがないシーンがたくさんあるのですが、中でも、台詞がまったくないこのシーンは杉咲さんのお芝居ひとつにお任せしていて、6分ほどの長尺のシーンを俳優さんのお芝居ひとつに任せて撮っていくといことが非常に楽しくもありました。映画の中で重要なシーンのひとつなので印象に残っています」と語っている。

©2023 映画「市子」製作委員会

 釜山国際映画祭、そして今回の東京国際映画祭を経て、観客と熱い質疑応答を交わした監督は、作品を共有できた喜びを噛み締めしめるかのように、本作の表現方法や作品の背景を赤裸々に語っていた。『市子』は、12月8日よりテアトル新宿、TOHOシネマズ シャンテほかにて全国公開。益々熱を帯びていく映画『市子』に、引き続き注目していただきたい。

 登壇者:戸田彬弘監督

公開表記

 製作幹事・配給:ハピネットファントム・スタジオ
 12月8日(金) テアトル新宿、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開

(オフィシャル素材提供)

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