インタビュー

『火だるま槐多よ』主演・遊屋慎太郎 オフィシャル・インタビュー

©2023 Stance Company / Shibuya Production

 映画『火だるま槐多よ』は、22歳で夭逝した天才画家であり詩人の村山槐多(1896-1919)の作品に魅せられ取り憑かれた現代の若者たちが、槐多の作品を彼ら独自の解釈で表現し再生させ、時代の突破を試みるアヴァンギャルド・エンタテインメント。タイトルの由来は、槐多の友人・高村光太郎の詩「強くて悲しい火だるま槐多」である。

 この度、公開を前に、主演・遊屋慎太郎のオフィシャル・インタビューが到着した。

遊屋慎太郎 (Shintaro Yuya)プロフィール

 1992年5月31日生まれ、静岡県出身。
 モデル活動後に、2015年に映画『アレノ』(越川道夫監督)でスクリーン・デビュー。以降、映画『佐々木、イン、マイマイン』(20/内山拓也監督)、『花束みたいな恋をした』(21/土井裕泰監督)、『福田村事件』(23/森達也監督)、『路辺花草』(23/越川道夫監督)などに出演する他、劇団ハイバイの舞台にも出演。

オーディションでの様子を教えてください。

 オーディションでは脚本から抜粋したシーンを演じた後、寿保監督から「表現についてどう思っていますか?」と聞かれたり、踊ったりもしました。しかもそれは振付のあるダンスを求められたのではなく、子どもが喜んだ時にする動きを体で表現してほしいというオーダーでした。村山槐多の絵画『尿する裸僧』を自分なりに解釈して模写するという時間もありました。

槌宮 朔をどのように演じようと思いましたか?

 オーディションの際に寿保さんから「自分にとっての表現とは?」と聞かれた影響もあると思いますが、槌宮 朔は抑圧されて生きてきた人物であることを意識しました。そんな抑圧された人が換骨奪胎ダンスを踊るときに、どのように爆発させようかと。そもそもダンス名に換骨奪胎という言葉を合体させるってすごいですよね(笑)。撮影が行われたのはコロナ禍が始まって2年くらい経った頃。俳優として作品が作れない状況が重なったことで、表現を抑え込まれた人が解放した時にどのような表現をするだろうか?と考え続けました。髪を逆立てたのも槌宮 朔の潜在的な爆発を表す狙いがありました。

佐藤寿保とは、どのような監督でしたか?

 寿保監督は情熱的な方で、僕はそこに槌宮 朔を演じるヒントがあると思いました。撮影中はずっと子どものように子どものようにと演出してくれましたが、それを一番体現していたのは監督。諦めない気持ちや自分のやりたいものが明確で、自分のインスピレーションに向かってスタッフたちを納得させる力がある。アクション!の言い方がカッコよくて声がでかくて、それだけで現場が引き締まります。カメラのフレームの中に入ってきてしまうのではないかと思うくらいこちらに肉薄してくる時もあって、監督は手を震わせながらカット!と言っていました。とにかく熱量がすごくて、気合が入ると真っ赤なバンダナを頭に巻きます。息を止めて僕らの芝居を全集中で見つめている感じがあって、だからこそカットの声も震えて大きな声になるのかなと。渋谷で撮ると街の雑踏がどうしても入って来るので録音部の方が止めたりしますが、監督は「そんなのどうでもいい! 行くぞ!」みたいな(笑)。補正を嫌うというか、その場の今起きていることが大事。その瞬間の衝動を重要視している気がしました。

初共演の佐野史郎さんの印象を教えてください。

 佐野史郎さんは飄々と現場にいらっしゃるけれど、どこか人を寄せ付けないような威厳的オーラを放っている印象でした。一見優しそうで口調も穏やかで接しやすそうだけれど、いざ近づいてみると「おおお……」と思わせるカリスマ感すらありました(笑)。

©2023 Stance Company / Shibuya Production
遊屋さんが裸で浜辺を全力疾走するシーンは迫力満点でした。

 前貼りだとシャープなシルエットが出ないということで、前貼りではなく股間部分に子ども用の靴下をかぶせました。浜辺を全力で走ったら取れてしまうのではないかと心配しましたが、意外と取れずにフィットしていました。撮影隊がかなり遠くにいたのでカットの声に気づかず、かなりの距離を走りました。幸いにも通報されるようなハプニングもなく一安心です。撮影は12月で寒かったけれど超気持ち良かったです。倒れるシーンで股間が見えずに上手く行ったのは、ソックス効果です(笑)。寿保さんは尿の放物線にもこだわっていました。海なので風が強くてなかなかいいポジションに落ちず、何度も試行錯誤しました。尿はもちろんフェイクです(笑)。

©2023 Stance Company / Shibuya Production
洞窟の中で佐藤里穂さんと血まみれ全裸で抱き合うシーンも壮絶でした。

 血のりを頭上に垂らす装置を完全DIYしていたので撮影までかなりの時間を要しました。体も血まみれになるわけですから失敗はできない。大量に流れてくる血のりも温かくはしてくれたものの、外気の寒さで冷えてしまって、震えながらの本番でした。ほとんど覚えていないくらい何も考えられず、もはや死に物狂い。佐藤里穂さんもそうだと思いますが、お互いに脳みそは使っていないと思います。真冬の樹海の洞窟で全裸になって血のりを浴びるなんてこの先経験することはないと思うので、大変貴重な経験になりました。

©2023 Stance Company / Shibuya Production
劇中劇『悪魔の舌』はどのような意識で演じられましたか?

 実はそこが一番イメージしやすかったです。それは村山槐多本人が書いた小説として物語形式なので(笑)。ただ僕が脚本を読んでイメージした画と寿保さんが生み出した画はまったく違いました。その違いがまた面白くて。トゲトゲの舌は自分のベロを実際に模った特殊造形で、舌に装着して動かすのがとても難しかったです。自分の舌にフィットするけれど異物感があってえづいちゃう。映像ではしっかりと気持ち悪かったので、素晴らしいと思いました。

観客にメッセージをお願いします。

 物語を追いかけるのが難しい作品ではあるし、登場人物の誰かに感情移入できるかというと難しいかもしれません。しかし僕が浜を裸で走っているシーンや血のりを浴びているシーンなどは普段生きていく中でそう見られる映像ではないので、芸術の爆発を受け取ってもらえたら嬉しいです。

 (取材・文・構成:石井隼人)

『火だるま槐多よ』公開表記

 配給:渋谷プロダクション
 12月23日(土)~1月12日(金) 新宿K’s Cinemaにて公開他全国順次公開

(オフィシャル素材提供)

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