イベント・舞台挨拶

『湖の女たち』完成報告会&完成披露上映会

© 2024 映画「湖の女たち」製作委員会

完成報告会

 登壇者:福士蒼汰、松本まりか、大森立嗣監督

 いよいよ5月17日(金)の公開まで1ヵ月をきった映画『湖の女たち』。この度、本作の完成を記念して完成報告会を実施。この日のステージは、ステージ中央に設置されたウォーターパネルを筆頭に、湖をイメージしたブルーの色彩が印象的な空間。まずはそこに大森監督が登壇すると「なんとか映画が完成して、この日を迎えられました。皆さんにどんなふうに映るのか、楽しみにしています」と挨拶。続いて黒い衣装の福士、そして黒いドレスの松本がステージに登場すると会場は一気に華やいだ。

 本作が映画化された経緯について質問された大森監督は、原作小説出版時に書評を書いてほしい、という編集者からのオファーがきっかけだったと振り返る。「本を読んで驚きました。衝撃的だし、考えさせられましたし。僕はいつも頭の片隅には映画化というのが浮かんでいるんですけど、これは難しそうだなと……。この企画をプロデューサーに持っていっても、かなり嫌がられそうだなというのもあったので。それで最初は書評を書かせていただいたんですが、そしたらお礼の手紙をいただいて。編集者から『吉田さんが『大森監督が映画をつくってくれたらな』とつぶやいておりました』と伝えていただいて。それはとても光栄だったので、ちゃんと考えたというところがはじまりでした」。

 大森監督が感じた難しさとは何なのだろうか? 「ここには戦争の時代から現代まで続く、僕たちが持つ負の部分が書かれているなと思ったんです。そしてこのふたりが負の部を抱く中で、少しだけ希望というか、もう一度生きようという思いに変えていく話だと思った。僕としても、ここまで歴史的な何かを背負って映画を撮ることはなかったので。ちょっと怖いなと。そして小説の最後の部分にもあったんですけど、湖を見ているふたり、という小説の表現がすばらしかったので。それを映画でやりきれるのか、ということも挑戦でした」。

 一方、介護士の豊田佳代(松本)へのゆがんだ感情に支配される西湖署の若手刑事・濱中圭介を演じた福士は、吉田修一原作、大森立嗣監督というタッグに魅せられ、やりがいを感じたという。「ただ最初、監督にお芝居を見てもらったときに、いろんなダメ出しをいただきまして。その駄目出しの中で気づいたことがありました。勝手に圭介が近づいてきてくれた感覚があって。自分でも想像以上にスッとハマった役だったなと思います」と振り返った福士。これまでの“好青年”という福士のイメージとはまるでかけ離れた役ということで「この役を引き受けるというのは大きな決断だったのでは?」という質問に、「そう思われるんですけど、意外とふたつ返事くらいで『やりたい!』という感じだったんです。確かにセクシャルなシーンとか、ハードなシーンもあるんですけど、そこに関しては演じるのに難しさはないかなと思っていました。むしろこの作品が包み込んでいる大きなものを、どう言葉で表していくのか分からなくて。だからこの役を演じることに関しては楽しみでしたね」と振り返った。

 そして圭介とインモラルな関係性を見いだすことになる介護士・豊田佳代を演じた松本は「わたしもこの作品について頭で理解するのは難しかったので、佳代を頭で理解することをやめました。ただ彼女が置かれている環境、状況、体感というのは体現できるかなと思って。たとえば、琵琶湖の近くの介護施設で介護をし続けてきた人であり、まわりに圭介のような刺激的な人がいたわけでもないですし、そういうある種の孤独感というか、静かな生活に自分の身を置くという。そういう極限状態に陥った身体感覚みたいなものは自分に近づけることはできるのかなと思ってそういう状態でいました。監督もおそらく感覚的な部分で理解してほしい、ということをおっしゃっていたのかなと。だからこそ、感覚や孤独感、焦燥感などを近づけてはみましたけど、ただし理解しようなんておこがましいと思ってしまうような作品ではありました」と本作に取り組む難しさを語った。

 大森監督がふたりの役者に期待したこととは何だったのだろうか? 「福士くんとは初対面だったんですけど、波長が合うような感覚があって。会った瞬間から信じてくれている感じだったので、俺も信じようというところからはじまりました。だから現場中も齟齬はなかったし、何かを信じ切ろうという覚悟がありましたね。そして(松本)まりかは20年くらい前から知っていたので、今回、主演と監督という立場で一緒に映画をつくれることがものすごくしあわせでした」。

 そんな大森監督との出会いを福士は「俳優としてのターニング・ポイントになった」と語る。「今回の撮影では、3日目あたりまで、すべての芝居にNGを出された気がするんです。最初に着替えているシーンがあったんですけど、『(芝居に)声はいらないから』と言われて。『声?』と思うじゃないですか。どうやらそこで、意図せず“着替えている”という(芝居の)声を出していたようなんです。俳優として状況を説明してしまうことってあるじゃないですか。それはエンタメ作品ではよくやることですし、僕も仮面ライダー出身なので、すべての行動に音をつけるというのは得意なわけなんです。だけど、自然なリアリティーを求める作品では、それは必要ないんだなと気づいて。でもそれが慣れているからできないから、もう一回と言われ続けて。なんとなく分かってきたんですけど、あまり演出らしい会話はなくて。それはものすごくヒリヒリするんですけど、これがリアリティーあふれるヒューマン・ドラマを撮るうえでの役者の心構えなんだなというのを学びましたね」。

 その言葉を聞いた大森監督は「撮影も最初のほうはいきなり大変なところから入ったんです。目線の位置とかも細かく指示したりして。僕の本意としてはもっと自由にさせたいと思っているんですけど、目線の位置とか細かいところから始まって。僕としては、(優しい口調で)“いい?”“ごめんね?”とか言いながらお願いしたんですけどね」と笑ってみせると、福士も「こわかったですよ」と冗談めかして付け加えた。

 そしてその意見に「わたしもおそろしい人だなと思っていました」と続けた松本は、「監督は全肯定の人なんで。ここまで俳優を信じ切るのかというくらい俳優を信じる。『まりかがそう思うならそれでいいよ』『そう思ってやったんだったらそうだよ』と。たとえ迷いながらやったとしても、俳優がそう思ったのならそうだと。その覚悟ってすざましいなと思うんです。もし自分が思う演技と違ったら言いたくなるじゃないですか。それでも、どう動いてもらっても構わない、という覚悟を感じて。こちらとしては迷ってるから聞きたいんですけど、ある意味おそろしいというのは明確に答えてくれないんです。表面的なことではなく、ちゃんとこの映像の中で本当に生きろよと言われるおそろしさ。そういう意味で俳優を信じてくれる安心感と愛、そしてそれと同時におそろしさもあって。自分が自分でなくてはならない、本当の意味で演じなければならないという意味で、おそろしい監督だなと思いました」と付け加えた。

 そして今回、初共演となる福士について「福士さんってさわやかな好青年のイメージなんですけど、圭介を福士さんがやるなんて想像もつかなかった」と語る松本。「でも初日に会ったときにビックリするくらいおそろしくて。こんな福士さんを見たことがないというくらいすばらしかったんですよ。こわかったですし、変な色気もあるし。でもそれが良かったんです。この圭介だったら、考える必要はないなと思って。だとすると(圭介)以外の彼を知りたくない、この人の笑顔とかやさしさは見たくないとわたし自身も思って。だからわたしも福士さんからはすごく距離をとって。目も合わせないぐらいでいました」という。

 それは福士も同じ思いで役づくりをしていたそうで、「本来、僕はにこやかな人間で。自分から積極的に話しかけるほうではあるんです。でも今回は話さなかったんで。どう思われているのかな……」と語る福士の言葉にかぶせるように、「嫌いでした!」とたたみかけた松本の言葉に会場は大笑い。「撮影の時は本当に福士くんと合わないなと思っていました。そしてそのままお別れして。そこから1年半、会うこともなく今に至るわけですが。この間、この映画の取材会で久々に役から抜けてお会いすることになって。マネジャーに『わたしたちは合わないから、あまり話せないと思うよ。大丈夫かな』と言っていたくらいだったんですけど……」という松本の言葉に、心配そうな表情で「どうだったんですか……本当の僕は?」と尋ねた福士。

 するとニッコリ笑顔となった松本が「どっちが本当の素顔か分からないですが、役が抜けた福士蒼汰さんは、めちゃくちゃ好感度が高くて。こんなしゃべりやすいのかと。いいじゃん、福士蒼汰!って、すごく好きになりましたよ」と明かして会場は大笑い。さらに「福士さんにはお姉ちゃんがいるので、こんなに女子と会話をしやすい人なのかと。なんなら会話も弾むし。こんな人だと思わなかったけど、でもやはりわたしの中では、『湖の女たち』の圭介が、本当の福士蒼汰だと思っています。あれはなかなか出せないですもん。おそろしいですよ」とジョーク交じりにコメント。

 そして先ほどの言葉をフォローするように、「嫌いというのは、ちょっとしたユーモアですよ」と語った松本は、「それほどおそろしい圭介がこの映画でいますから。あの圭介と対峙(たいじ)した佳代が、その感じになるのは、仕方ないことなので。それも含めてわたしが嫌いと言っている圭介にはなんともいえない魅力があって。好青年・福士蒼汰にはない部分の、本当に見たこともない顔で。わたしが嫌いと言ってる部分が、ものすごい福士くんの魅力だと思っております」と語った。

 それほどまでに、ふたりのシーンの撮影では笑顔が封印されていたというが、「でもわたしがいないシーンでは笑顔だったと聞いて。けっこうショックだったんです。その真相をお聞きしたいです」と問いかけた松本。思わず福士が「監督とご飯にも行きましたね」と返すと、その言葉に意表をつかれたのか、松本も思わず立ち上がって「本当ですか! ちょっと待ってください」と目を見開く。そんな彼女を諭すように大森監督が「しょうがないよ。浅野先輩がね……」と語るも、「え! 浅野さんとも……」と二の句を告げることもできず、さらにショックを受けた様子の松本だった。

 「これはマズかったな……」と苦笑いの大森監督に、松本も「これはマズいですよ。わたしはひとりで、築70年くらいの旅館に泊まらせていただいたんですけど、ずっとひとりで……、ずっとひとりで悶々(もんもん)と絶望していたのに……。皆さんはどこかに行ってらっしゃったんですか? この作品でそんな余裕が?」と返答。その様子にタジタジとなった福士が「余裕はないですけど、ご飯は食べるものですからね」と返すと会場は大笑い。松本も「なんかさっき、打ち合わせルームに入ってきたときに、2人の様子がおかしいと思ったんですよ。なんでそんなににこやかな笑顔なんだろう。そんな関係性だったかなと思ったんですが……そうでしたか」とちょっぴりいじけてみせて会場は大笑い。そんな仲良しの3人だからこそできるやり取りに会場はドッと沸いた。

 そして最後のコメントを求められた松本は「今日は少し脱線をしてしまいましたが、なかなかここまでのことを描く挑戦的な作品って、今の日本ではなかなかないんじゃないかと思います。わたし自身も“ここまで”とか“こんなふうに”とか、そういった言葉でしか表現ができてないんですけど、言葉のプロである皆さんに、この作品をいろいろな表現で、日本の皆さん、世界の皆さんに伝えてほしいなと楽しみにしていますし、観てくださる皆さんがどんなことを感じるのか、わたしも楽しみにしています。ぜひ映画館に観に来てください」とメッセージ。最後に福士も「この物語にはこれがメッセージです、みたいなことが大きくあるわけではなくて。それぞれが思い浮かんだ絵とか、言葉がメッセージなのかなと思っています。人それぞれで違うものを感じるでしょうし、その違うものをシェアして、みんなで話し合ってもらうとこの作品が深くなっていくのかなと思います」と呼びかけた。

完成披露上映会

 登壇者:福士蒼汰、松本まりか、福地桃子、財前直見、大森立嗣監督

公開表記

 共同配給:東京テアトル、ヨアケ
 5月17日(金) 全国公開!

(オフィシャル素材提供)

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