イベント・舞台挨拶

ドキュメンタリー『ザ・ビートルズの軌跡』トークイベント

©SHORELINE ENTERTAINMENT

 登壇者:藤本国彦(ビートルズ研究家・本作字幕監修)、朝日順子(音楽ライター・翻訳家)
 MC:汐月しゅう

 初期のビートルズをよく知る男たちの証言からビートルズが成功するまでの軌跡を辿るドキュメンタリー『ザ・ビートルズの軌跡 リヴァプールから世界へ』の公開2日目に、本作の字幕監修者でもあるビートルズ研究家の藤本国彦と音楽ライター・翻訳家の朝日順子が本作の魅力や裏話を語るトークイベントが開催された。

 冒頭、藤本は、「ビートルズは8年足らずの活動だった。デビュー前後のビートルズを知っている人は年配の方が多く、この映画は2008年製作で、既に亡くなっている方が結構いらっしゃる。どこに向かって何をやろうかということが固まっていないが、情熱だけは持っている時代のビートルズの話。まだピート・ベストがドラムを叩いていた時の話で、最終的にリンゴが加わって、という前段。ある種の青春物語。当時関わった方の証言を交えて、こういう形で映像に残されて、公開され、今見るというのは意味があることだと思う」と感慨深げに話した。

 朝日は、「ビートルズの子ども時代から関わりのある方たちの証言がたくさん出てくる。何度も試写で観させていただいているけれど、見れば見るほど深掘りし甲斐がある。話の仕方が面白い。深いことを言っているし、地味に見えて見応えがある」と絶賛。

 お二人は本作の字幕に関わっていて、朝日は、「リヴァプール出身の人が何人も出てくるけれど、中でも訛りが強いのはピート・ベスト」と名前を挙げた。ブライアン・エプスタインのレコード店に『マイ・ボニー』を買いに来た人が実存していたという話で、ピート・ベストはブライアン・ジョーンズと言っているけれど、実際はレイモンド・ジョーンズだそう。「ピート・ベストの勘違い。ブライアン・ジョーンズはローリング・ストーンズのメンバー」と訂正した。

 本作で描かれるドラマーの交代劇について、藤本は、「この映画ではピートはドラムが上手いという声が割と出ていた」けれど、「リズムが走ったりしちゃう」という点を挙げた。また、ジョージ・マーティンに乞われデビュー曲「ラヴ・ミー・ドゥ」のレコーディングにリンゴ・スターの代わりに参加したセッション・ドラマーのアンディ・ホワイトについては、「上手いけれど、アンディ・ホワイトはあてがわれた人で、仕事として受けた以上のものではない」と話した。この映画では、「『リンゴとほとんど口を効かなかった』など非常に珍しいアンディ・ホワイトの証言が出てくる」と話した。

 劇中ピート・ベストが話している場所に、朝日は去年行ったそう。カスバコーヒーというピート・ベストの実家で、今も一般公開している。ベスト家総出で、ロード・マネージャーだったニール・アスピノールとピート・ベストのお宝が集まったミュージアムを経営している。モナ・ベストの孫が館内を案内してくれたそうで、「ピート・ベストの解雇について、ベスト家の公式の見解は、『ピート・ベストがルックスが良すぎてポールが嫉妬しただとか、髪型を皆がビートルズ・カットにしたのに、自分だけリーゼントのままにしていただとか、ノリが合わなかっただとか、ドラムが下手だったとか言われているけれど、全部正しくなくて、ビートルズがレコード会社にことごとく断られて、やっときたEMIの話があって、ビートルズのメンバーがとにかく若くて焦っていたのと、ブライアン・エプスタインが初めてロック・バンドのマネージャーをやったのでやり方が分からなかったという、その二つの理由から解雇された』と教えてくださった」と話した。

 藤本は、本作の注目ポイントしてデビュー時から『ラバー・ソウル』までのエンジニアであるノーマン・スミスを挙げた。「1962年6月6日に、ビートルズが(音楽プロデューサーの)ジョージ・マーティンと会った時のセッションの様子を話している。演奏自体は普通だけれど、終わった後にジョージ・ハリスンがジョージ・マーティンに『あんたのネクタイ気に入らない』と言った時のノーマン・スミスの『涙が出るくらい笑った』という反応の証言が具体的だった。普通だったら茶化されたりしたら怒ったりするけれど、ジョージ・マーティンはコメディ・レコードも作っていたし、ビートルズが本来持っているユーモアをすぐその場で受け入れた。演奏よりもキャラの面白さもEMIのテストレコーディングに繋がったという話をしていて面白いと思う」と話した。

 朝日も、「この映画で、ノーマン・スミスは、『ビートルズが現れた時に、リヴァプール訛りでしゃべっているから、リヴァプール人だと分かった。自分はリヴァプールのユーモアが大好きで、好印象を抱いていた。契約するかどうかとなった時に「あの人たちは面白い」と言った』というのがいいエピソード」とこの証言がどれだけ貴重かを話した。

 本作のパンフレットは、藤本と朝日が寄稿している他、ビートルズ研究所の写真も多数掲載されている。朝日によると、「ネットで見ないようなお宝の写真がたくさん載っている貴重な資料」で、藤本は、「ピート・ベストは自分の日記を(ビートルズ研究所の)本多さんに売っちゃったんだ。よっぽど金に困っていたのかな」とジョークを飛ばした。

 最後に朝日が、「全然知られていない事実がたくさんあるので、革ジャン時代のビートルズについて盛り上げていきたいと思います!」と力強く宣言し、トークイベントは盛況のうちに終了した。

 下記の劇場で、上映終了後アフタートークが決定している。

■福岡:キノシネマ天神
 7月7日(日) 11:50の回
 登壇者:藤本国彦(ビートルズ研究家・本作字幕監修)
 MC:汐月しゅう

■福岡:小倉昭和館
 7月7日(日)16:20の回
 登壇者:藤本国彦(ビートルズ研究家・本作字幕監修)
 MC:汐月しゅう

■栃木:小山シネマロブレ
 7月12日(金)14:35の回
 登壇者:藤本国彦(ビートルズ研究家・本作字幕監修)
 MC:汐月しゅう

■東京:池袋シネマ・ロサ
 7月12日(金)19:00の回
 登壇者:藤本国彦 (ビートルズ研究家・本作字幕監修)
 MC:汐月しゅう

公開表記

 配給:NEGA
 7月5日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開

(オフィシャル素材提供)

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