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『ロックの礎を築いた男:レッド・ベリー ビートルズとボブ・ディランの原点』トークイベント

© 2024 House of Lead Belly

 登壇者:ピーター・バラカン、汐月しゅう(MC)

 公開中の映画『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』で、ニューヨークの街中でレコードが映ったり、ティモシー・シャラメ演じるボブ・ディランが病院で歌う“Song to Woody”の歌詞内で絶賛するレッド・ベリー。
 「レッド・ベリーがいなかったら、ビートルズもなかった」という有名な言葉を残したジョージ・ハリソン同様、ヴァン・モリソンも「レッド・ベリーがいなかったら、私はここにいなかったかもしれない」と追懐。ジャニス・ジョプリンは最初に買ったレコードがレッド・ベリーだったことを明かし、以来、ブルーズに夢中になったと回想する。また、(『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』で冒頭ボブ・ディランが病床を訪ねる)ウディ・ガスリーは「最も偉大なフォーク・シンガー」と称賛を惜しまない。1950年代、イギリスを席巻したスキッフルの中心にあったのは、レッド・ベリーの曲だ。ロニー・ドネガンが歌うレッド・ベリーの曲を聴いた子どもたちがバンドを結成、やがてレッド・ツェッペリンやローリング・ストーンズが誕生。レッド・ベリーの故郷アメリカの白人に、ルーツ音楽が逆輸入される形で広まった。まさに「音楽史を変えた」と言っても過言ではないレッド・ベリーの真実に迫る音楽ドキュメンタリー。それはロックのルーツを探す旅ともいえる。

 この度、本作字幕監修のピーター・バラカンのトークイベントが開催された。

 ロック・ファンでも詳しく知っている人は少ないレッド・ベリー。バラカンも、「CCRの『ミッドナイトスペシャル』や『コットン・フィールズ』、ビーチボーイズの『コットン・フィールズ』などカバー曲を知っている人は多い。僕の世代だと、ロニー・ドネガンも若干後追いで、ビートルズを経由して知ったので、リアルタイムだとは言い難い」と告白。

 バラカンは、本作について、「この映画を観て知ることはいっぱいあった。よくできた面白い映画。編集も上手だし、語る人たちがたくさんいる。アラン・ローマックスはかなり前に死んでいるので、彼の映像のように相当昔の話もある一方で、新しく、手広くいろんな関係者の話を聞いている。ポジティブなことだけじゃなくて、例えば(音楽学者の)ジョン・ローマックスの伝記を書いた人が、彼のことを赤裸々に話すので、すごく説得力がある」と大絶賛した。

 レッド・ベリーが発見された経緯について、バラカンは、「30年代はアメリカは結構近代化して、小作農の世の中ではなくなっていて、多くの黒人は南部から北部に移住していて、昔の歌がなくなってしまうとローマックスは見ていたと思う。議会図書館用にそういう歌を記録しておきたいからとりあえず録っておこうと思っていたと思う。ジョン・ローマックスとまだ若かった息子のアランは、1933年にアンゴラというルイジアナの中の悪名高い刑務所に行き、レッド・ベリーだけでなく、かなり多くの受刑者の歌の採取をしていた。翌年もまたアンゴラに出かけて、多分レッド・ベリーだけを録った。相当多くの曲を録音した」と説明。

 そのレッド・ベリーがどのように知られるようになったかを聞かれたバラカンは、「皮肉なことに、アメリカの大手のラジオでは白人の音楽しかかかっていない時代。レッド・ベリーのコンサートを直に知ることができるニューヨークの一部の人たち以外は、『グッドナイト アイリーン』がチャートの1位になったウィーバーズのカバーで知った。ボブ・ディランも、ラジオではかからなく、『風に吹かれて』もピーター・ポール&マリーがカバーしたものがラジオでかかってヒットした時代。ジョーン・バエズが自分のコンサートにディランを招いて、ディラン自身がアーティストとして売れるのはデビューから4年くらい後。レッド・ベリーがディランより不利なのは、黒人だったから。公民権運動が始まるのは50年代半ば。亡くなった後にピート・シーガーらが彼の曲を歌っていなければ、彼は知られなかった可能性もある」と解説した。

 最後に本作の邦題『ロックの礎を築いた男:レッド・ベリー ビートルズとボブ・ディランの原点』についてバラカンは、「イギリスで、ロニー・ドネガンらが、バンドの演奏の合間にスキッフルを演奏。(イギリス人にとっては、)エルヴィスを初めて聞いたのと同じくらいの衝撃だったと思う。スキッフル・ブームが起こった。レコードが出たのは1955年の終わりで、ヒットしたのは1956年。エルヴィス・プレスリーの『ハウンド・ドッグ』と同じ時期で、ジョン・レノンはエルヴィスと同時に聞いていると思う。ロニー・ドネガンはイギリス人なので、さらに身近に感じたと思う。ジョンは、安いギターを買って、自分のスキッフル・バンドをやった。レッド・ベリーがいなければ、ロニー・ドネガンもヒットしない。ロニー・ドネガンがスキッフルをやっていなければ、(ビートルズの前身の)クオリーメンもない、クオリーメンがなければ、ビートルズもない、と言える」と説明し、本作のトークイベントは終了した。

公開表記

 配給:NEGA
 5月23日(金)より池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺他全国順次公開

(オフィシャル素材提供)

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