イベント・舞台挨拶

『突然、君がいなくなって』トークイベント&本編映像解禁

© Compass Films , Halibut, Revolver Amsterdam, MP Filmska Produkcija, Eaux Vives Productions, Jour2Fête, The Party Film Sales

 登壇者:枝 優花(映画監督、写真家)、シバノ ジョシア(フォトグラファー)

 第77回カンヌ国際映画祭ある視点部門のオープニング作品に選出されたアイスランドの俊英ルーナ・ルーナソン監督の最新作が『突然、君がいなくなって』(英題:When the Light Breaks)の邦題で、6月20日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、新宿武蔵野館ほか全国順次公開となる。

 この度、公開に先立ち6月10日に一般試写会を実施した。上映後には、繊細な若者の関係性を描き続けている映画監督・写真家の枝 優花とアイスランド最大の音楽フェスを始め、アイスランドの様々な風景を長年に渡り撮影している、フォトグラファーのシバノ ジョシアが登壇するトークイベントを開催した!
 アイスランドという国で生まれたからこその本作の魅力や、子どもと大人の狭間に経験する“喪失”と“再生”、同じ人を想う2人の“嫉妬”や“共感”について、それぞれの視点からたっぷりと語った!

 本作は……
 喪失から人間を受け入れるまでの話――。by枝
 首都に暮らす若者たちの青春映画――。byシバノ
 枝の本作の感想は、「喪失というより、主人公のウナが喪失から人間を受け入れるまでの話。単に恋人とのことではなく、ウナが悲しみを悲しみ切れないということに葛藤し、それも全て受け止めることで自分を許す、という話だと思いました」。
 一方、シバノは「本作は“首都に暮らす若者たちの青春映画”というのが印象的でした。特に若者のグループが、家でお酒を飲むシーンはとてもアイスランドの若者らしいシーンでした。アイスランドは酒税の高い国で、大学生たちは、自宅で友達たちと飲んで、夜22時くらいからバーに行くようなライフスタイルなんです」と長年アイスランドの風景を撮り続けているシバノならではの視点で率直な感想を述べた。シバノは「アイスランドは北海道と四国を合わせたくらいの国土で人口が38万人(ほぼ新宿区と同じ規模)です。レイキャビクに住んでいるのが約20万人なので、アイスランドのほとんどの人がレイキャビクに住んでいます。20万人のうちのさらに若者の人数と考えるともっと少ない。そんなレイキャビクで繰り広げられる青春群像劇だと思って本作を観てもらうと、彼らの“恋人になる”という感覚は、東京で暮らしている我々の想像している以上に結構貴重な縁だと思います」と続けた。

ウナとクララの感情の変化。同じ人を思う二人は通じ合えるのか?

 本作のストーリー、ウナがクララを受け入れていくまでの心情の変遷や2人の関係性について枝は「監督が描きたかったのは“大事な人を失った悲しみを受け入れること”なのかなと思いました。最初にウナとクララが対面する2ショットはお互いが正対せず、“光”と“影”でよく見えないというところから始まっています。(映画の中で)いろんな2ショットがあったのですが、きっとラストから逆算されて撮ったのではと思っています。ウナとクララがそれぞれ“私のほうが好きだったはず”“私のほうが長く一緒にいた”とかおそらくお互い言わないいろんなものがあるなかでも、それでもやっぱり“想っていた大事な人を失った悲しみはお互い一緒というところを受け止め合う”ところは、職業的な目線でみると一番魅せたかった部分なのかなと」と、さまざまな作品で繊細な若者の関係性を描き続ける枝だからこその視点で話した。

 さらにウナとクララ、2人の関係性については、枝は「キャスティングが上手いと思いました」とキャラクターについて触れた。「“付き合っている女と浮気する女って違う”みたいな(笑)。元カノ同士は似ていたりするのに、浮気をするときは付き合ってる恋人の足りない部分を補う女性を選ぶという心理が働くんだな、と。本作でいえばウナのシュっとしていておしゃれで、アートも分かっているので話も合うけど、付き合う相手は正反対で、刺激はないけど安心感でクララを選ぶみたいな。監督分かってるな、と思いました(笑)」というと会場では、頷きや笑い声があがり、枝の話に共感する声が広がっていた。

強い愛情があるときは、強い憎しみがあるときと表裏一体だ

 アカデミー賞®を受賞した『博士と彼女のセオリー』やドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『メッセージ』などでも知られるヨハン・ヨハンソンの音楽について、実際に2011年にヨハン・ヨハンソンのインタビューとライブを撮影したことのあるシバノは、「そのときパフォーマンスしたのがまさに本作で印象的に使われている「Odi et Amo」で、印象に残っています。アイスランドは冬が長いので、若者たちが部屋でできること=楽器を手に持って演奏する、ことが根付いていて、たくさんのミュージシャンを輩出している大きな要因だと思います。横のつながりが強いなかでも、彼は世代を超えて活躍されているミュージシャンです」。
 「Odi et Amo」の意味が「我憎み、且つ愛す」ということについてシバノから「非常にこの映画の若者たちの心情に寄り添ってますよね」、枝は「私は強い愛情があるときは、強い憎しみがあるときと表裏一体だと思っていて、大好きと大嫌いが振り子みたいな状況にあるというか。確かに、この映画は“愛しみ”と“憎しみ”がずっと同じ強さで画面にありましたよね」とヨハン・ヨハンソンの楽曲「Odi et Amo」と本作の親和性について言及した。

アイスランド人と日本人は似ている!?海を越えて本作が私たちの心に響く理由

 第77回カンヌ国際映画祭のある視点部門でのオープニング上映をはじめ、世界各国の映画祭で評価されている本作。海を越えて届くこの映画のもつ普遍性について、枝は「日本やヨーロッパの映画は、思っていることがあるけど言わずにグッと耐えるような、自分を一旦ここに置いておいて外を守る、というやり方が文化的に強いので、きっと本作も日本の私たちが共感できたのではないかと思う」と自身の経験を交えて話した。
 シバノは「日本と同じ島国でもあるし、アイスランドの人はシャイな人が多い。母国語がアイスランド語で、ほとんどの人は英語もしゃべれるけど、英語が母国語ではないので、どこか一枚フィルターがかかっているような、お酒飲むまでは打ち解けないみたいなところも日本人と似ているかもしてないですね」とアイスランド人と日本人の共通点について話した。

 さらに本作のセリフの少ない演出について、シバノは「言葉が少ないことによって、今後このウナとクララの2人の関係性がどうなっていくのか尾を引いて観ることができて良かった」、枝は「最低限のセリフだった分、強いセリフを印象に残るように打っていて。あるシーンの“大切な人を失ったのはみんな同じだ”という言葉が私は印象的でした」と二人共、セリフが少ないからこそ観ている人たちを引き込むような本作の魅力について話した。

 最後に、枝は「この映画は大切なものがいなくなってしまってから、それでも生きていかないといけない人たちがどういうふうに手と手を取り合って生きていくのか、それを丁寧描いているところが私は好きでした。大事な人と観に行くのもいいのではと思いました」
 シバノは「私がアイスランドで一番惹かれているところは“何もない”というところなんです。大自然にでたときの圧倒的な孤独感というか、日本では味わえない怖さもあるような。ただ、そういうなかでもコミュニティがあるレイキャビクは小さいけどあたたかみのある街で、映画を観て、興味をもった方はぜひアイスランドに行ってほしい。たった38万人で国をやっている島国とおもってアイスランドを見ていただくと、日本という島国と比べると鏡のような国に感じると思います。この時代だからこそ、シンプルな人間関係と向き合う映画は大事だとおもいます。ぜひ機会があったらアイスランドにも足を運んでほしいです」と語り、イベントは満席で盛況のまま幕を閉じた。
 イベント終了後には登壇者に想いを伝える観客の姿も見られ、SNSでも「大傑作」「上半期個人的ベスト」「友人に勧めて、一緒に語り合いたい」と絶賛の声が相次いで見られ、鑑賞後の満足度の高さが伺え、これから観る方へからの期待の声へとつながっている。

併せて本編映像が解禁!!
同じ一人の男を愛したウナとクララが意味ありげに視線を交わし合う!

 この度解禁された本編映像は、トイレでウナとウララが初めて二人きりで会話する緊張感あるワンシーン。主人公・ウナはディッディと恋人関係だが、ディッディには遠距離恋愛中の恋人・ウララがいる。ディッディが事故で亡くなったあとに初めて対面したウナとクララ。トイレで遭遇し、初めて二人きりで会話する。クララが「あなたがバンドに加わった時、実は嫉妬したの」「でもレズビアンでよかった」とこぼすと、ウナはあふれ出そうな気持をグッとこらえ、「レズビアンじゃない。こだわらない」と淡々と答える。続けて「最後の恋人は男だった」と、クララの目をじっと見つめながら返すのであった。
 その後の展開も、二人の緊張感のある会話のやりとりに目が離せない。二人の結末はぜひ劇場で確認してください!

© Compass Films , Halibut, Revolver Amsterdam, MP Filmska Produkcija, Eaux Vives Productions, Jour2Fête, The Party Film Sales
公開表記

 配給:ビターズ・エンド
 6月20日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、新宿武蔵野館ほか全国順次公開

(オフィシャル素材提供)

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