
登壇者:ゆっきゅん(DIVA)、月永理絵(ライター/編集者)
米インディペンデント映画『フォーチュンクッキー』が、6月27日(金)よりシネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷ホワイトシネクイント、アップリンク吉祥寺ほかにて絶賛公開中!
フォーチュンクッキーをきっかけに、孤独な女性が新たな一歩を踏み出す姿をオフビートなユーモアを交えて描いた『フォーチュンクッキー』は、ジム・ジャームッシュやアキ・カウリスマキの作品を彷彿させると話題を呼び、第39回インディペンデント・スピリット賞ではジョン・カサヴェテス賞を受賞。映画批評サイトRotten Tomatoesでは批評家たちから98%という高い支持を獲得した注目作。
公開初日の6月27日(金)、新宿シネマカリテにて『フォーチュンクッキー』公開記念トークイベントが行われた。登壇者は、映画にまつわる執筆活動や、2ndアルバム『生まれ変わらないあなたを』のリリースを記念した特集上映「ゆっきゅん映画祭」を開催するなど、多岐にわたって活躍する唯一無二のDIVA・ゆっきゅん氏と、映画ライター、編集者として数多くの映画作品の映画評、解説を手掛け、昨年2024年には、酒と食をめぐる五感に響く映画コラム集『酔わせる映画 ヴァカンスの朝はシードルで始まる』を刊行した月永理絵氏。
イベントは、先着入場者プレゼントとして配布された、ゆっきゅん氏書き下ろしメッセージ入りフォーチュンクッキーを、ゆっきゅん氏と月永氏が来場者と一緒に開封するところからスタート。2人が引いたメッセージ「あなたの好きなあなたが、あなた!」、「あなたのことを見ててくれる人は必ずいる。私とか。」を読み上げて紹介し、来場者それぞれがメッセージを噛みしめながらトークがスタートした。


まず映画の感想を聞かれるとゆっきゅん氏は、「ドニヤという主人公が魅力的で、過去にいろいろなことを抱えながらも、移民として孤独を感じて生きていて。でも自分が変わっていきたいとか進んでいきたいという、一歩踏み出す静かな勇気が描かれていて、良い映画だなと思いました」とコメント。

月永氏は「ドニヤと精神科医との会話の中で、アフガニスタンからアメリカへやってきたとか、通訳をしていたとか、彼女の背景が明かされてはいきますが、そこまで彼女が苦しんでいるかどうかが分かりやすく描かれていないんですよね。でも観進めていくと、彼女が過去に捉われていて、どこにも行けずに立ち止まっている人なんだということが徐々に見えてくるのが良かったです」と語り、ゆっきゅん氏は「トラウマを抱えてはいるけど、すでに行動には移して“ここ”に来ていて、記憶や辛さに閉じこもっている人ではないのも応援したくなりました」とドニヤのキャラクターについて掘り下げた。

ドニヤ役を演じたアナイタ・ワリ・ザダについては、ドニヤ同様、2021年8月にアフガニスタンより逃れてきた移民で、本作で映画デビューを果たしたというバックグラウンドを解説しながら、月永氏は「ドニヤという女性がいたからこそ進んでいく物語。ドニヤの物語ですよね」とコメントするとゆっきゅん氏は、「アナイタの演技として観るものでもなくて、ドニヤがそこにいるという感じがしていた。他人や今の環境や自分自身に対しての諦めが彼女の佇まいや目線に宿っているんだけれど、それを繰り返しているだけの絶望は全然ないと思いました」。
さらにドニヤの魅力について「他人から転がってきたきっかけを絶対に逃さない。きっかけがやってきたときに怖気づかずに行動に移していけるところが素敵だと思う。ドニヤは人からの言葉や精神科医との会話によって自分の認識が変わっていくけど、人生が進んでいくことになるのはドニヤ自身の言葉なのが良かった」と語った。

フォーチュンクッキー工場という舞台設定についての話題になると月永氏は、ババク・ジャラリ監督がそのフィルモグラフィーのなかで社会の周縁で生きる人々を描いてきたことに触れ、「フォーチュンクッキー工場は昔ながらで、少人数で、しかも中華系の人々が代々つくってきた工場」であり、フォーチュンクッキーの歴史や工場で働く移民など、さまざまなルーツがあることを指摘。

ゆっきゅん氏は「フォーチュンクッキーという幸運を祈って食べるものを作っている人たちが労働者としてクッキーを作っていて、マジカルな感じがないのが素敵だなと思いました」とコメントした。
実際にフォーチュンクッキーのメッセージを書いた感想を聞かれるとゆっきゅん氏は、「皆さんが開くことを想像して、“明日いいことあるよ”というようなことを伝えられたらいいなと思って書きました。でもうっすら占い師の仕事なので、ちょっと緊張しました」と答え、会場が笑いに包まれる一幕も。

さらに好きなシーンを聞かれると、カラオケ好きとして知られるゆっきゅん氏は「カラオケのシーン」を挙げ、ドニヤの同僚ジョアンナの家で、ジョアンナがヴァシュティ・バニヤンの名曲「Diamond Day」を歌い、ドニヤが涙を流してしまう一連のシーンを細かく分析。さらにドニヤとジョアンナの関係性について「程よい距離感をそれぞれはかれている」と指摘。それを受け月永氏は「そう考えてみると、同じアパートに住んでいる人だったり、職場の同僚だったり、精神科の先生だったり、友達という関係性とは違うけど、自分の生活の中で出会う人たちとの関係性がちゃんと出来上がっているのが良かったです」と答えるとゆっきゅん氏は、「今、友達の友達の歌を書いてます。何でも言えるという関係性ではないからこそとれるコミュニケーションがあるなと最近感じていました」と新曲についての話題も。
最後に2人が「美しいラスト!」と絶賛するラスト・シーンについて掘り下げ、トークを締めくくった。
公開表記
配給:ミモザフィルムズ
6月27日(金)より絶賛公開中
(オフィシャル素材提供)