
登壇者:菊池日菜子、小野花梨、川床明日香、南 果歩、松本准平監督
1945年、夏。原爆投下直後の長崎を舞台に、被爆者救護にあたった若き看護学生の少女たちの“青春”を描く映画『長崎―閃光の影で―』が、8月1日(金)に全国公開となる(7月25日[金]長崎先行公開)。
7月22日(火)、TOHOシネマズ日比谷において東京プレミア上映会が実施され、菊池日菜子、小野花梨、川床明日香、南 果歩、松本准平監督の5名が登壇。戦争の記憶を未来に繋ぎ、平和の尊さを再認識できる作品に仕上がった本作の魅力や、撮影秘話をたっぷり語った。
主人公の看護学生・田中スミを演じた菊池は、本作が映画初主演。「私たちが一生懸命1ヵ月間の撮影期間を経て追い求めた1945年の長崎を、こうして東京の地で皆さんに観ていただけることを嬉しく思います」と感無量の表情で挨拶。今月、長崎県内の看護学生や市民約2,000人を招待して行われたワールドプレミアのために長崎を訪れた際、被爆を経験した方たちと交流したそうで「想像を絶する苦しみや辛い出来事の数々を聞かせていただいた最後に、必ず皆さんが『頑張ってね!』と声をかけてくださったのが心に染み入るように残っています。その一言に皆さんの平和に対する願いを託してもらったような実感があったので、『頑張ってね!』に込められたエールを少しも薄めることなく平和に対する祈りや願いを強く持って生きていかなければという強い決意に繋がりました」と平和への願いを改めて誓っていた。

長崎出身で被爆三世というバックボーンを持つ松本監督。長崎でのワールドプレミアを回想し「僕の生まれ故郷である長崎に本作を届けるのが望みでしたので感無量でした。地元の皆さんが喜んでくれて嬉しく思いました」としみじみ。スミの幼馴染で看護学校の同級生・大野アツ子役に小野、同じくスミの幼馴染である岩永ミサヲ役の川床は、本作の主題歌『クスノキ -閃光の影で-』のモチーフにもなっている長崎市・山王神社にある被爆クスノキを実際に見学したという。

小野は「被爆してから2ヵ月で芽が生えたそうで、それは物凄いパワーで科学的にはありえないそうです。ありえないことを実現した木々の生命力を感じました」と実感を込め、川床は「被爆クスノキの下にいるだけで守られているかのような感覚がありました。これまで長崎という地を見守ってくれたんだなと感じて、これからも見守り続けて欲しいと思いました」と願いを込めた。


スミと運命的な出会いをする南原令子役の南は、長崎に原爆が落ちる前日を描いた黒木和雄監督作『TOMORROW 明日』(1988)では看護師を演じた。南は「シナリオを読んで演技をして内容も知っているんだけれども、完成作を観た時に一瞬で奪われてしまった命を映画で体験した気がした。自分が出演しているのにしていないかのような状態で観れた初めての作品でした」と同作を通して感じた衝撃を回想。同作と同じく鍋島壽夫氏がプロデュースを手掛けた本作で、今度は原爆投下後の長崎と映画を通じて向き合った。「日菜子ちゃん、花梨ちゃん、明日香ちゃん3人の姿を見ていると、胸が締め付けられる思いになりました。3人の懸命に生きる姿はこの映画の中では希望としか言いようがない。私はこの3人の姿に何度も涙腺が崩壊しました。本作を通して長崎と再び出会えたのは運命的なものを感じますし、戦後80年目の夏にこそ観て欲しい作品です」と想いを込めていた。

そんな南の言葉に、菊池の涙腺が決壊。「私はいまだにこの作品から抜け出せていなくて、南さんを見ると令子さんと重なる部分があるんです。スミにとっても私自身にとっても令子さんは救いの存在だったので、今日来てくださったことを感謝します」と涙ながらに語った。これに南が「現場では戦時下に生きたスミという少女そのものだったので、今日久々に日菜子ちゃんとお会いして『元気になったね!』と声をかけてしまったくらい。それくらい役に入られていました」と述べると、菊池は「はい!元気になりました!」と笑顔を見せていた。
改めて南は戦時下の少女を熱演した3人に向けて「3人の生き様、役に対する真摯な姿勢が画面から溢れていました。貴重な体験を生きたその時間は今後色々な仕事をしていく中でも心の奥底に残るはず。本作をご覧になる方々にもそうなって欲しいという願いがあります」とエールを送っていた。
親友役を演じた菊池、小野、川床は撮影に入る前にワークショップの一環として3人でゴム跳びや刺繍などの昭和時代の遊びを行ったりしたという。松本監督は「原爆に直面した人を演じて欲しいといきなり言われてもそれは難しいと思ったので、そこに極限まで近づいてほしいという狙いがあった」などと説明した。
昨年には日本被団協がノーベル平和賞を受賞した。本作の仕上げ中にそのニュースを知った松本監督は「長年の間、被爆者の方々が平和への想いを繋いでくださらなかったら、世界のどこかで核兵器が使われる可能性もあったと思う。被団協がノーベル平和賞を受賞したことは喜ばしい事です。世界を見ても核兵器使用のリスクが高くなっている中でのニュースだったし、僕も本作を控えている中だったので平和への想いが込められた風が吹いて行けばいいなと思いました」と述べていた。
最後に主演の菊池は「撮影から1年と10か月が経とうとしています。スタッフ全員が妥協なく1945年の夏を追い求めて作ったと言える作品です。皆さんそれぞれの感性でそれぞれの自由な目で本作を捉えてもらえたら嬉しいです」と期待。松本監督は、平和活動をする人に言われた「原爆は広島人と長崎人の話ではない。日本に落とされた。日本人の話だ」という言葉を紹介し、「日本人だからこそ発信できるものがあると思うので、今作品を観て響くものがあったら、それぞれの立場で平和への想いを広げて行ってもらえたら幸いです」と期待を込めていた。
公開表記
配給:アークエンタテインメント
2025年7月25日(金) 長崎先行公開 / 8月1日(金) 全国公開
(オフィシャル素材提供)