記者会見

『車軸』公開記念記者会見イベント

©「車軸」製作委員会 © 小佐野彈

 東京・歌舞伎町で生きる3人の若者の三角関係を描き、現代の若者のリアルな姿を炙り出す⻘春映画『車軸』がTOHOシネマズ新宿他にて公開中。
 セクシャル・マイノリティの視点を織り込んだ数々の短歌を発表し、多くの賞を受賞した歌人・小説家である小佐野彈の同名小説『車軸』(集英社文庫刊)を、『最後の命』や『パーフェクト・レボリューション』そして『桜色の風が咲く』で知られる松本准平が映画化した本作。
 資産家でオープンリー・ゲイの潤役に、現在放送中のテレビ朝日の特撮テレビドラマ「王様戦隊キングオージャー」に出演中の矢野聖人、裕福な実家を“偽物”と嫌悪する大学生の真奈美役に、今後の活躍が期待される新人女優の錫木うり、潤に枕営業をするホスト・聖也役に、映映画『忌怪島』に出演し話題となった水石亜飛夢、さらにリリー・フランキーや筒井真理子、奥田瑛二など実力派俳優が脇を固める。

 この度、映画のロケ地でもある新宿のホストクラブClub Airにて公開記念記者会見イベントを実施!  キャストの矢野聖人、錫木うり、水石亜飛夢、松本准平監督、原作者の小佐野彈が登壇した。映画の公開を記念して、シャンパンタワーでお祝いした!

 来場者の温かい拍手の中登壇した登壇者たち。松本監督は「この地でおおよそ2年前に撮影して、ようやく公開を迎えこの地に戻ってくることができて感無量です」と、監督を始めキャスト陣が実際に映画のロケ地として使用したホストクラブで初日を祝えることに喜びを述べ、舞台挨拶がスタート。

 いよいよ初日を迎えた本作だが、映画が作られたきっかけについて監督は「ちょうどコロナ禍に入って緊急事態宣言が出された2020年の4月頃に企画者でもある郷遼太郎さんから連絡があり、郷さんの友人の小佐野彈さんを紹介していただいて、『車軸』という小説を映画化できないかと打診をいただきました。すぐ脚本に取り掛かって、GW頃に初稿が出来上がっていたという感じです。原作はすごく面白く不思議な小説で、小佐野さんのおつくりになる世界、小佐野さんの眼差しをどうやったら映画に出来るかというところを第一に考えつつ、コロナ禍の街に生きる若い人たちを真摯に撮れれば良いなと思って取り組みました」と振り返る。続けてこの歌舞伎町の街を表現するにあたってどう工夫したのかと問われ「あまりこだわったところはないんです。むしろ嘘をつくのはやめよう、あるがままの街をおさめようと思って取り組みました。そこに力やエモーションが宿っているとしたら、それをありのままに手を加えることなく撮ろうと臨んだので、工夫をあまりしないようにシンプルに撮るということが、あえて言えば工夫だったのかと思います」とありのままを映し出すことを意識したという。

 資産家でオープンリー・ゲイである潤をリアルに演じた矢野は、「僕の役者人生ではやったことのない役でした。30歳になった年だったので、自分にとっても挑戦だなと思ってこの役をやろうと思い、当事者であるいろいろな方にお会いしてお話を聞いたり、お店に行ったり、自分なりに調査をしました。そして松本さんから痩せて欲しいという要望があったので、8キロくらい減量して撮影に挑みました。体重を落とすと気持ち的にもナイーブになるので、潤を演じる上で理にかなっていた作業だったのかなと思います」と撮影を振り返る。

 続けて、裕福な実家を“偽物”と嫌悪する大学生の真奈美を体当たりで演じた錫木は、「彼女は目の前に起こることや自分の興味があることに対してすごくまっすぐに向き合うタイプの人間だと思うんですね。SNSなどの宙に浮かんでいる情報というより、とにかくやってみる、感じてみる、会ってみる、と行動力がすごいんです。そういう部分はリンクする部分もありましたし、真奈美の姿勢は憧れというかかっこいいなと思っていたので、理想とする部分と、自分にも共鳴する部分というものを具体的に役を通して感じていたので、その両面を大事にして演じました」と真奈美という役への思いを語った。

 さらに、潤とも真奈美とも関係を持つホストという難しい役どころを演じた水石。実際に現役のホストたちと共演した水石は「彼は自分が働くホストクラブでNo.2とされているのですが、野心というものはあまりない、けど普通の人じゃ辿り着けない境地にいるという難しい塩梅の役どころでした。撮影するときの“よしやるぞ!”という気持ちもありつつ、聖也としてはゆらりゆらりとしている人間なので、不思議な気持ちで演じていました。この映画では“本物”というワードがキーワードになっていますが、まさにこの場で実際に活躍されているプロのホストの方々とご一緒して、ホストという存在が映っている画がこんなに“本物”であることは普段ないですし、僕も皆さんの中に混じってお芝居をすることで、この場が戦場であるプロの皆さんに負けないくらいの怪しい雰囲気を纏えるようにと思って演じていましたね」と当時を振り返った。

 この三人の共演について聞かれると、水石は「心と体が繋がれるか、というところがこの物語の主軸であり、劇中ではそれが上手くいかなかったりするんですが、この三人は本当に助け合っていました。現場では毎日が山場とも言えるくらいそれぞれ激しいシーンがあったので、心強く良いチームだったと思います」と語ると続けて矢野が「撮影が始まる前に準備として監督のメソッドをいろいろこなして、1ヵ月半くらいかけて二人とは一緒に過ごしてきて三人でのチームワークや信頼関係が出来上がっている中での撮影だったので、僕的には二人に頼る部分もあったし、頼ってくれた部分もあったし、それが作品に出ていると思いますね」と三人のチームワークの良さが窺えるコメント。さらに錫木が「この三人って性格や持っているキャラクターや個性が違うタイプなので、現場での撮影中も撮影していないときもバランスが良かったのかなと思っています。基本矢野さんがボケて、私がそのボケで遊んで、亜飛夢くんが止める(笑)」と当時を振り返ると、水石が「聖人さんは佇まいはシュッとしているけど、ボケの球数が多すぎてツッコミきれないので、受け流してました(笑)」と笑いを誘う。それに対して矢野が「反動が大きいんです。本編で真剣なシーンが多いほど、回ってないときに発散しないと内に入っちゃうので、撮影以外のときにみんなにツッコんでもらって精神状態を保っていました(笑)」と仲睦まじいやりとりを見せた。

 原作者の立場から映画を観た小佐野は「『車軸』は僕にとっては初めての小説だったんです。僕は元々短歌で賞をいただいて、歌人としてのデビューだったので、小説としてはこれが本当に初めてでした。小説は“自分が作者だ!”という気持ちがどうしても強くなりがちだと思うのですが、短歌は作者自身に帰属意識がなくて、言葉にしてしまったあとは手紙にして瓶に詰めて海に放り投げるというか、誰かが受け取ってくれという気持ちで放り投げるような感覚なんですね。この『車軸』を書いた時は歌人マインドだったので、書いたものを受け取り手に投げて、それを受け取ってくれたのが松本監督だったのかな。松本監督と一緒に瓶の中の手紙を読んでくれたのがお三方だと思うんですけど、皆さんが体当たりという言葉じゃ足りないくらいの体当たりな演技をしてくださったおかげで、原作以上に心を持った存在としてキャラクターが描かれていました。映像を観て“こういう作品だったんだ”と後から気づきをもらうような。そういった意味でも感慨は非常に大きいですね。矢野さんの潤は……これは言葉にならない! 潤というキャラクターは5割くらい僕を託したようなキャラクターで、矢野さんは“潤というキャラクターのモデル人物に会ったら、自分が作ってきた潤が壊れてしまうんじゃないか”と、僕に会うのが怖いとおっしゃっていたみたいで(笑)、そのくらいストイックに潤を演じてくださっていました。撮影最終日を見に行った時、矢野さんはガリガリに痩せていて、役者魂のすごさというものを心から感じましたね。うりちゃんの演技は、今日のこの場でもなんですが、ナチュラルに真奈美に化けているんですね。真奈美は非常に難しいキャラクターだと思うのですが、そのキャラクターを自分の中におろした上で、真奈美になりきってくれました。亜飛夢くんの聖也は僕の中で一人の鑑賞者としては一番ツボな存在。クールでドライで空っぽな人物をこんなに完璧にやってくれるんだ、という。原作にも出てくる“まあいっか。”というセリフが、僕が頭の中に描いていた“まあいっか。”そのままだったのがとても感動しました」とそれぞれの演技を絶賛。

 最後に監督が「あまりいろいろなことを解釈したつもり、分かったつもりにならないようにしながら、街についてもキャラクターについても、もっと分かりたいなと思いながら撮っていくという形だったので、僕も編集しながらいろいろな気づきがあった作品です。ご覧いただいた方によっていろいろな捉え方があると思いますので、観れば観るほど思いがリンクして湧き上がってくるような作品になっております。僕は“どうしたら分かり合える?”という映画のコピーがすごく好きです。歌舞伎町にいる皆の“誰かと繋がりたい”という思いと、“繋がれないけど繋がれない”という思いと、“けどやっぱり繋がりたい”という思いを感じながら撮っていました。この撮影の直後に、海外でも日本でも紛争だったり大変なことが起きていますが、それでも人と人で繋がりながら共に生きたいという思いが映っていると思いますので、何か感じ取っていただけたら嬉しいです」と呼びかけた。

 最後に登壇者の皆で公開初日を記念してグラスのタワーにシャンパンを注ぎ、シャンパンタワーが完成! 記者会見は華やかに終了した。

 熱を失ってしまった残骸のような東京・歌舞伎町の街を舞台に三人の若者の生を通して、自己の存在、繋がることと繋がらないこと、人と人の間に生きること、都市に生きることを描く本作にご期待いただきたい。

 登壇者:矢野聖人、錫木うり、水石亜飛夢、松本准平監督、小佐野彈(原作者)

公開表記

 配給:CHIPANGU、エレファントハウス
 全国公開中

(オフィシャル素材提供)

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