イベント・舞台挨拶

『車軸』シークレット試写&トークライブ

©「車軸」製作委員会 ©小佐野彈

 東京・歌舞伎町で生きる3人の若者の三角関係を描き、現代の若者のリアルな姿を炙り出す⻘春映画『車軸』が11月17日(金)にTOHOシネマズ新宿他にて公開する。
 セクシャルマイノリティの視点を織り込んだ数々の短歌を発表し、多くの賞を受賞した歌人・小説家である小佐野彈の同名小説 『車軸』(集英社文庫刊)を、『最後の命』や『パーフェクト・レボリューション』そして『桜色の風が咲く』で知られる松本准平が映画化した本作。

 この度、新宿LOFT /PLUS ONEにて公開前初のシークレットイベント「LOFT PLUS ONE × 9MONSTERS Presents 映画『車軸』シークレット試写&トークライブ」を実施。資産家でオープンリー・ゲイの潤役を演じた矢野聖人、裕福な実家を“偽物”と嫌悪する大学生の真奈美役を演じた錫木うりが登壇した。

 登壇した矢野が「トークショーは初めてで緊張しています。今日はひと足早く皆さんに本作を観ていただいたのですが、いかがでしたでしょうか」と客席に問いかけると、会場からは温かい拍手が。続けて「作品は重い感じなので、トークはポップにいければと思います」と笑いを誘った。錫木は「今日はひと足先に皆さんに観ていただいて、公開前なのに、皆さんの感想や雰囲気を“もう味わえるんだ!”という気持ちになっています。楽しみです」と挨拶。
 本作への出演の経緯に矢野は「僕は(監督の)松本さんとは『最後の命』で初めてご一緒して、そこからたまに(出演の)お話を頂いたりしていたのですが、一昨年の夏に松本さんに新宿のとある喫茶店に呼び出されて『車軸』の台本を渡されて、“聖人、一緒に映画やろうよ”と。“もっと矢野聖人を広げていきたい”とおっしゃっていただいたのですが、その場では内容を知らなくて、とりあえず台本を読んでみて、すぐ“やりたいです”と返事をしました」と語った。続いて錫木は「オーディションのお話を頂いて、原作を読んで、受けたいですというお話をして。普通のオーディションはお芝居を見せてジャッジしていただくことが多いのですが、今回のオーディションは台本を一切渡されずに、簡単な質疑応答をした後に椅子を用意されて、“そこに真奈美が座っていると仮定して、錫木うりとして真奈美に自己紹介をしてください”というものでした。芝居をしていないので手応えも何もなく……。とにかく全部言いました。私の生い立ちから全部」と変わったオーディションを振り返った。
 思い入れのあるシーンに関して、錫木は真奈美の父(奥田瑛二)が真奈美の頬を打つシーンを挙げ「すごく痛かったんですよ。奥田さんはリアリティを追求しますから。でも、奥田さんずるいんですよ(笑)。衣装合わせのときに奥田さんと“大変なシーンがあるね”という話をしていて。私はアクションの経験があまりないので、叩かれるというのも一つのアクションだから不安ではあります、という話をしたら、奥田さんは“大丈夫、僕は痛くするフリをするのがすごく得意だから”とおっしゃっていて、それなら安心!と思っていざ撮影に入ったら、手の平で打たれているのに“ゴン”という音がするんですよ。手形がついちゃって。星が見えましたもん(笑)。でも、それがすごいよかった」と回想し、矢野は「『車軸』はいろいろなことが大変でしたね。個人的には、撮影に入る前に身体をつくっていたんですよね。そこで、松本さんに“細くなってほしい”と言われました。『最後の命』に出演したとき僕はガリガリだったんですけど、“あれくらいにできないかな?”と。ですが体重の増減が僕にできるのか、今後の役者人生も含めてやってみる価値はあるなと思って、8キロくらい落としました。また、三人(潤・真奈美・聖也)のベッド・シーンは大変でした」と話す矢野に、錫木も「大変でしたね。カットがかかった後に隠すところが多くて、闘牛を捕まえるように捕まえられていろいろなところを隠されました(笑)。花園神社のシーンも寒すぎて、毛布が十二単みたいになっていました。でも、矢野さん含めキャストもスタッフも皆さんが本当に温かくて、本当に優しかったです。気温は低かったけど、すごーーーく周りの方が温かかったです。皆さんに演じるための土台を作っていただいて、私は集中するだけの状態にさせてくださっていたのはすごく大きかったですね」と温かい現場を振り返る。

 ある意味、この作品の主役とも言える歌舞伎町。二人にとって、歌舞伎町という街の印象を聞かれると「この作品をやらせていただいて、新宿を歩く度に“この場所で撮ったな”“ここで短歌を詠んだな”と思えて、そのことがすごく嬉しく思いますし、『車軸』は僕にとって一生かけがえのない作品になるだろうなと思います」と思いを語る。錫木は「歌舞伎町が主人公じゃないかと思うところもありますよね。私は美術系の専門学校出身で、その学校が新宿にあったんです。学校終わりに世界堂にほぼ毎日行って、画材を買って新宿御苑でスケッチをして、同期と歌舞伎町の安い居酒屋に行ったり……。ゴールデン街も行っていたし、新宿はすごく好きなんです! 新宿は青春です」と新宿への愛を語った。

 本作は、三人の関係を二つの車輪と一つの軸として描いているが、この関係について矢野は「車軸って言われると車を想像するけど、聖也を入れて三人って考えると、三輪車だなと。聖也がいないと、まず真奈美と潤は出会っていないし、聖也がいるからこそ恋愛感情も交錯するし、潤という人物の男でも女でもない新たな在り方を示せたのも、聖也と真奈美がいたから。これもまさしく三輪車だと思います」と三人だからこそ成り立つ関係性だと言う。

 最後に、この映画をこれから観る方々に向けて矢野は「人間とは誰しも一人では生きていけない、いろいろな人の支えがあって成長するものだと思っているのですが、必ずしも人生の最後まで同じ人が寄り添うわけではなくて、その瞬間瞬間で自分にとって大事な人がいて、そういう人に自分も含め人は救われていると思います。この映画を観て、改めて自分の周りの人を思い出して感謝してみたり、久々に連絡をとったり気にかけたりしてもらえると良いなと思います」とコメント。錫木は「自分の閉鎖的な環境や焦燥感や退屈さなど、今の居場所にもどかしくなっている人ってたくさんいると思うんです。自分が置かれている環境もそうだし、自分が置かれている状況、家族との関係など、いろいろなことに窮屈になっていると感じやすくなっていると思う。今回、潤、真奈美、聖也という3パターンの人間が在ることで、自分自身って何なんだろうということを、自分に問うてみたり、自分を知るきっかけになれば良いなと思っています。こう言ったほうが良い、こう言わなければない、という気持ちに惑わされずに、自分が思ったことを発言できる。自分勝手でいいから、愛を持って自分の感情と向き合うことを大切に思って欲しいです」と締めくくり、イベントは和やかなムードで終了した。

 熱を失ってしまった残骸のような東京・歌舞伎町の街を舞台に三人の若者の生を通して、自己の存在、繋がることと繋がらないこと、人と人の間に生きること、都市に生きることを描く本作にご期待いただきたい。

 登壇者:矢野聖人、錫木うり

公開表記

 配給:CHIPANGU、エレファントハウス
 11月17日(金) TOHO シネマズ新宿他全国公開

(オフィシャル素材提供)

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