イベント・舞台挨拶

『グラン・ブルー 完全版 4K』最速試写会

©1988 GAUMONT

 登壇者:松永大司(映画監督)
 聞き手:立田敦子(映画ジャーナリスト)

 リュック・ベッソン監督の原点にして頂点との呼び声も高い『グラン・ブルー 完全版』が、37年の時を経て4Kリマスター版として8月29日(金)より、角川シネマ有楽町ほかにて全国順次公開となる。
 今回、本作の公開に先駆けて最速試写会を実施し、映画監督の松永大司が登壇。思い出のエピソードなどを語った。

 リュック・ベッソン監督が29歳で手がけた本作は、1988年にフランス全土で公開され1000万人以上を動員する大ヒットを記録。若者たちの絶大な支持を集め、「Grand Bleu Generation」と呼ばれる社会現象にまでなった。
 主人公のモデルが伝説的なダイバーにして“イルカに一番近い男”と称された故ジャック・マイヨールであることは有名だが、物語の奥には幼少期より海に慣れ親しんで育ったベッソン自身の記憶や体験も息づいている。17歳のときに“グラン・ブルー”の世界に魅せられたベッソンの夢の結晶であり“原点”を、彼の頂点作と位置づける映画ファンは少なくないだろう。これまでにさまざまなバージョンが劇場公開され、世界中で愛され続けてきた不朽の名作。観る者を惹きつけてやまない “深淵のブルー”が、ついに今4Kスクリーンで“本物”の輝きを放つ――。

 1988年に製作され、第41回カンヌ国際映画祭のオープニング作品としてワールドプレミア上映を終えたあとフランス国内で大ヒット。当時新進監督だったリュック・ベッソンの名前を一躍世界的に有名にした。本作を観て映画監督を目指すようになったという松永大司は、「高校生か大学生くらい、当時はサッカーや水泳が好きなスポーツ少年だったのですが、たまたま家で観たんです。いつかこういう仕事(映画制作者)に就きたいなと思ったきっかけをつくってくれた作品です。今日改めて観て本当に良くて……。」と『グラン・ブルー』との出合いを振り返り、その魅力を噛み締める。「数十年ぶりに観て、今の方が響くものがありました。宮崎 駿さんが『天空の城ラピュタ』のインタビューで確か“すでにこの世の中に知らないことがないと思っている。まだ空の上には知らない世界を作れるのでは、と思って物語を作った”といったお話をされているのを覚えているのですが、空の上にそういうものがあるとすら思わないような時代になってしまっている気がして。海の世界にはまだまだ知らない世界が、空よりもあるなとすごく感じました」と続ける。

 『ハナレイ・ベイ』(2018)では、ハワイを舞台に美しい海とマリンスポーツを描いた松永監督。海の撮影の難しさを聞かれると、「夜の海の撮影って本当に怖くて。どんな生き物がいるか分からないですし。真っ暗な中でカメラマンと一緒に潜って撮影するという行為を経験した僕にとって、海の中でイルカと役者を撮影するという大変さと凄さという技術的な面でも『グラン・ブルー』には舌を巻きました」と大絶賛。直接的な影響はなかったものの、『ハナレイ・ベイ』撮影前にも本作を見返したというエピソードも飛び出した。

 本作は、ベッソンが29歳のときに製作した長編3作目。少年期に海に魅せられたものの、事故で海洋生物学者の夢を断念したベッソンが、伝説のダイバーであるジャック・マイヨールの存在を知ったことで10年以上あたためて実現した“原点”かつ“夢の結晶”。海への愛が溢れている作品だという聞き手の指摘に対し、「ほぼドキュメンタリーですよね。僕がなぜこの映画に惹かれたのか当時は言語化できなかったのですが、行ったことのない国の風景も本当に綺麗ですし、イルカがたくさん泳いでいたり、フィクションを観ているという感覚がなかったんじゃないかなと。とにかくすごい!」と、ベッソンの真摯で熱量ある演出の数々に魅了されたという。

 これを機に有名ロケ地となったシチリアへも「行きたいと思っちゃいますもんね!」と食い気味に率直な感想を述べると会場からは笑いも。実際に冬の海を潜ったという撮影裏を聞き、「いや〜とにかくすごい! すごいとしか思えない。僕自身もドキュメント的な瞬間をフィクションの映画の中に閉じ込めていきたいなと思っていて、そういう意味で『グラン・ブルー』はドキュメント的で奇跡的な瞬間が詰まっている」と話し、「撮影中にイルカを探して待っていた話もそうですし、イルカがいたけどカメラが回っていなかったトラブルとか、大変なことも多かったんじゃないかなと思います」と製作の苦労を想像。

 レオス・カラックス、ジャン=ジャック・ベネックスとともに“御三家”と呼ばれ、当時のフランスで最も勢いのある若手監督群の中心にいて、とりわけ“ビジュアリスト”と評されたベッソン。本作でも、ジャックとエンゾがスーツ姿で素潜りしシャンパンを飲み交わすシーンや、ジャックが天井から海が迫ってくる悪夢を見るシーンなど、印象的な場面が満載。松永が「海の中にずっと潜っていくシーンが、怖いけど綺麗だなと思ってしまうんですよね。配信やテレビでいろいろな作品を観られる時代ですが、映画館のスクリーンで、贅沢な空間で音を感じながら、まさに体感できるシーンがいっぱいあって、そういうところがすごく印象に残りましたね。シンプルな表現に魅せられました」とコメントすると、さらに話題は“没入感”へと及び、「僕はこの映画をテレビの画面でしか観たことがなかったので、初めて劇場空間で観てまた印象が変わりました。観終わったあとに、日常の時間の流れが変わったりする体験ができる面で映画というものがすごく好きなんですが、もう今日は登壇せずにそのまま帰りたいくらい良かった(笑)。人間の五感を刺激してくれる映画だと思いました」と熱く語った。

 イベント最後には、「改めて映画の表現というものは豊かなものだなと思いましたし、こういう作品をまた劇場で見てもらえることで映画という表現の面白さをいろいろな人に感じてもらえたらいいなと思いました」と締めくくり、イベントは幕を閉じた。

水面下100m。海面の光さえも届かない、限りなく深い海が広がる “グラン・ブルー”を追い求めて――。

 幼い頃に海辺で出会い、潜水の腕を競い合ったジャック(ジャン=マルク・バール)とエンゾ(ジャン・レノ)。大人になったエンゾは、フリーダイビングの大会にジャックを誘う。勝負に燃える情熱的なエンゾと、イルカと対話し海と心を通わせるように潜る孤高のジャック。ふたりは競い合いながらも互いに影響を与え合う。そしてジャックは彼に想いを寄せるジョアンナ(ロザンナ・アークエット)との関係に戸惑いながら、海への憧れと人間世界との狭間で揺れ始める――。ある日、ジャックは人間の限界に迫るような記録を打ち立てる。負けず嫌いのエンゾは、なおもその記録に挑み続けようとして……。
 ※「4Kデジタル修復版」パートは4Kマスターから作成したHDを基にしています。

公開表記

 配給:KADOKAWA
 8月29日(金) 角川シネマ有楽町ほか全国順次公開

(オフィシャル素材提供)

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