
カンヌ国際映画祭の映画作家の発掘と支援を目的とした部門・監督週間において、史上初めて最高賞となる観客賞を受賞した作品『ユニバーサル・ランゲージ』は、アカデミー国際長編映画賞のカナダ代表にも選出されている。各エンタメ誌の評価も高く、米メディアのVultureからは「カンヌで観た中で最高の映画」と評された。
監督を務めるのは、カナダ首相の座を巡る権力争いを皮肉と遊び心たっぷりに描いたブラック・コメディ『The 20th Century』がベルリン、トロントなど主要な国際映画祭を始め、全世界で絶賛された実験映画監督と知られるマシュー・ランキン。
本作は、架空のカナダ・ウィニペグを舞台に、ちょっとズレた人々が織りなす、すれ違いのファンタジー。監督は、「この映画の主要なテーマの一つは“人に優しくすること”」と語っており、言語や文化、さらには自分と他人との境界も曖昧になって混沌とする町で起きる日常の風景が切り取られている。切れ味のあるユーモア・センスと、アッバス・キアロスタミやジャック・タチなどの巨匠たちに強く影響を受けたテイストを感じ取れる作品となっている。
本作の主人公役を射止めた二人の子役の、キャスティング秘話が解禁!
本作は、暴れまわる七面鳥にメガネを奪われたと語る同級生のために、メガネを新調するために奮闘する姉妹の様子が紡がれていく。今回物語のキーマンとなるネギン&ナズゴル姉妹を演じた、演技未経験の子役について深掘りしていく。

舞台はペルシャ語とフランス語が公用語になった、“もしも”のカナダ・ウィニペグ。暴れまわる七面鳥にメガネを奪われたオミッドは、学校の先生に黒板の字を読めるようになるまで授業を受けさせないと理不尽に怒られてしまう。それに同情したネギンとナズゴルは、凍った湖の中に大金を見つけ、そのお金で新しいメガネを買ってあげようと思いつくのだった。
演技未経験で妹のネギン役を務めたロジーナ・エスマエイリと、舞台の出演歴がある姉のナズゴル役を演じたサバ・ヴェヘディウセフィは、主人公役を射止めた逸材だ。カンヌ映画祭を皮切りに世界から注目を集めていき、なんと妹役のロジーナは、第13回カナダ・スクリーン・アワードのコメディ部門・主演女優賞(Best Lead Performance in a Comedy Film)にノミネートされている。さらに姉を演じたサバも。同賞で助演女優賞ならびにヤングアーティスト賞にもノミネートされている。人々の心を打つ演技が評価された結果を表している。


どうして未経験の人物を起用したのか、本作の監督・脚本・出演も果たすマシュー・ランキンに聞いてみた。「モントリオールのペルシャ語学校を訪れ、“映画に出演してみたい人はぜひ会いに来てください。経験は不要です!”と呼びかけたんです。するとすぐに30人ほどの、とても利発で才能ある子どもたちが集まってくれました。ロジーナ(ネギン役)とサバ(ナズゴル役)は、とても強い個性と高度なアイロニーの感覚を持っていて、この映画特有のトーンをすぐに理解してくれました。当初の脚本では兄妹設定だったのですが、二人の相性が素晴らしかったので、姉妹に書き直したんです!」と語り、二人との出会いとキャスティング理由を明かしてくれた。


演技未経験ながらも不自然さもなく、まるで是枝裕和監督のような演出をしたのではないかと思う程、違和感を覚えさせない。どんな演技指導を行ったのか、再びマシュー・ランキン監督に伺ってみた。「是枝裕和監督は巨匠ですし、子役に台本を渡さず現場でセリフを伝えるという手法は、本当に素晴らしいと思います。本作は、必ずしもリアリズムを追求していたわけではありません。多少の即興はありましたが、基本的には私と脚本家のイラ、ピローズ・ネマティが書いたセリフを使っています。大切だったのは、子どもたちを含めて、ほとんどが演技経験ゼロのキャストが役を通して自分を表現できることでした。ロジーナとサバの人柄を知るにつれて、彼女たちの個性を脚本に反映させていったんです。ですから、キャスティングそのものが執筆プロセスの大事な一部だったと言えます」と、自ら輩出した女優達に敬意を払いながら、作品作りを追求した語ってくれた。
ちょっとズレてる人々が織りなす“すれ違い”のケミストリー。架空の都市を舞台にしたフィクションだけれど、きっとあなたの周りでも起きている日常の風景でもあるはず。どうかあなたの“ユニバーサル・ランゲージ”が見つかりますように。
公開表記
配給:クロックワークス
8月29日(金) シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか公開
(オフィシャル素材提供)