
登壇者:吉永小百合、天海祐希、阪本順治監督
“女性だけで海外遠征を”を合言葉に女子登攀クラブを設立し、1975年にエベレスト日本女子登山隊の副隊長兼登攀隊長として、世界最高峰のエベレスト(ネパール名:サガルマータ、中国名:チョモランマ)の女性世界初登頂に成功した田部井淳子。その後も飽くなき挑戦は続き、生涯で76ヵ国の最高峰・最高地点の登頂を成功。その勇壮な生涯を壮大なスケールで描く映画『てっぺんの向こうにあなたがいる』が世界初女性エベレスト登頂の偉業から50周年となる2025年10月31日(金)に公開。
主人公・多部純子を演じるのは今作で映画出演124本目となり、日本映画界を牽引する俳優吉永小百合。純子を支える夫・正明を演じるのは数々の映画賞を受賞し、圧倒的な存在感を誇る名優佐藤浩市。純子の盟友であり、エベレスト登頂の相棒でもある北山悦子役には、吉永と映画『最高の人生の見つけ方』以来6年ぶりのタッグとなる天海祐希。青年期の純子役は俳優としての活動を軸に、アーティスト活動など多方面で才能を発揮するのん。また、木村文乃、若葉竜也、工藤阿須加、茅島みずきと険しい高峰へ向けて実力派の俳優たちが揃った“パーティー”となった。
10月17日(金)、主演・吉永小百合、天海祐希、阪本順治監督が合同記者会見に登壇。本作にかける思いを語った。

冒頭の挨拶では、吉永が「私は20代の頃、ちょっとした山ガールで山に登ることが大好きだったのですが、そのうちに登ることが辛くなり、スキーに転向しました。今はほとんど登っていませんでしたが、2012年に田部井淳子さんにお会いしてすっかり魅了されました。今回このような形で田部井さんをモデルにした作品に出演できるということで、嬉しく思いました」と喜びを口にすると、天海も「今回は小百合さんの盟友という役を仰せつかりました。『小百合さんとまたご一緒させていただけるなら』と思って飛び込み、阪本監督を先頭にたくさんの方々の熱意がこもった映画に仕上がりました」と話した。また阪本監督は「私の監督作品の主演級がほとんど男衆なので、女優さん二人と会見に臨むのは初めてかなと思っています。本当にお二人には可愛がっていただきました」とユーモアをまじえて挨拶した。

撮影中の印象的なエピソードについては、阪本監督は「富士山での撮影は天候に左右され、何度もトライできる場所ではありませんでした。そして『これは4日目の奇跡を狙うしかないね』と朝4時出発くらいに山へ登り始め、そこで(多部純子・正明の)ご夫婦の素晴らしい場面が撮れたことが印象に残っています。『これで映画が上手くいく』という安堵感を得られました」、天海は「吉永さんと一緒に山を登ったシーンがありますが、そのときに歩いた丘が『吉永の丘』というそうで、小百合さんにちなんで付けられたようなんです。そこに小百合さんと一緒にいられることがとても奇跡のようで嬉しくて。『なんて素敵なことなんだ』と一歩一歩、踏み締めて歩きました」、吉永も「あの丘の景色のすばらしさと空気のおいしさ、そして天海さんと一緒にテントに入って歌を歌ったり、本当に友だちという感じで演じられたりしたのは、ずっとずっと思い出に残ると思います。それと私が歌を歌うシーンがあり、天海さんが先に撮影を終えられたのですが、ずっとステージのわきで私が歌っているところを見守ってくださったんです。感謝、感謝です」と振り返った。

また吉永は、自身のラジオ番組に田部井さんが出演したときのことも回想。「2012年、私がやっておりますラジオ番組にご出演いただきました。そのときは東北の高校生たちを富士山に連れていくためのプロジェクトに対する想いをアピールされました。とにかく明るくて、なんでも話してくださって、お耳にはピアスをつけていらっしゃって。大ファンになりました。私が『登山家』と言ったら、田部井さんは『愛好者です』とおっしゃったんです。そういうところがとても謙虚でいらっしゃり、『こういう方がエベレストに登ったんだな』という思いがいたしました。私より3センチくらい背が低くていらっしゃって、そういう方が大変な苦労をなさりながらも世界中の山を踏破しているということで、大ファンになりました」と語った。また、田部井さんをモデルにした純子を演じるにあたっては、「田部井さんの『一歩一歩、前へ』という心と、大変なご病気になっても『病人にはならない』と前へ進んでいらっしゃるところをしっかり出したいと思いました」と演じる上で心掛けたという。
そんな純子を青年期から支えた悦子について、天海は「悦子さんは、純子さんのことが大好きだったんだと思います。悦子さんの夢を実現しているというか、人として、女性としてのバイタリティ、生き方、純粋な想いなど、悦子さんからするとキラキラしたものを、ひけらかすわけではなく自分の中に秘めて毎日を大切に生きている純子さんがとても魅力的だったのではないでしょうか。すごく憧れていた人なんじゃないかなと私は受け止めていて、それは私自身の小百合さんに対する想いとリンクしていたんです。悦子さんが、純子さんを見つめる視線などは、私が見つめる先にいつも小百合さんがいらっしゃったときの気持ちと重なります」と役に共感できたのだそう。

劇中では、純子の青年期をのんが、現代期を吉永が演じている。阪本監督は二人について「のんさんと吉永さんには、田部井さんの書物の中から印象的だった言葉などを箇条書きしてお渡ししていました。そして、そこから外れないようにやってもらいました。のんさんに対しては自在に生きているという印象があり、田部井さんとの近さを感じていました。あと吉永さんのデビュー当時の写真集を見てみたら、のんさんと目元がそっくりだったので、キャスティングをさせていただきました。(撮影は)吉永さんの場面からクランクインしました。のんさんは、吉永さんの演じる様子の見学にも来られ、(演技の)リズムをつかもうとしていらっしゃいました」と共通点などを挙げた。

同作で心を揺さぶるのが、純子と正明の夫婦の関係性。二人で富士山に登る場面は特に感動的だ。吉永は「浩市さんは高所恐怖症だと仰っていて、私は『富士山はどうだろう』と心配していたのですが、七合目くらいではものすごく力強く私を引き上げてくださいました。だから高所恐怖症というのは“三味線”だったのではないかと私は思っています。あと純子が、手が痺れて料理ができなくなるシーンでは、浩市さんが夫役として料理を作ってくださいました。すごく上手で、大根の面取りなども普段からやっていらっしゃるのか、奥様から教わっていらっしゃるのか謎なのですが、安心して夫婦の関係をお互いに演じられました」と思い返した。

ちなみに吉永と天海は同作を通してさらに絆が深まったようで、「もし親友になったら、二人でやりたいことは?」との質問に対し、天海が「小百合さんと親友だなんて、百万年早いです」と謙遜しながら、「旅行がしたいです。これが実現するならカメラに付いて来ていただいて。私が全部企画して、小百合さんを(旅に)お連れするので」と旅行プランを打ち明けると、吉永は「いつも天海さんから500文字くらいメールが届くのですが、それで励まされることがとても多かったです」と天海への信頼を表した。

記者会見の最後には、吉永は「田部井さんは『人生、八合目からがおもしろい』とおっしゃっていました。ちょうど私もその辺に差し掛かっています。これからも一歩ずつ、田部井淳子さんのように歩いていきたいと思います」、天海は「自分が信じた道を一生懸命、一歩一歩、歩いていくということをこの映画を見て実感していただけたら。観ていただいた方の心に、田部井さんの想いや、スタッフ、キャストの皆さんの想いが届くように祈っています」、阪本監督は「劇中には高校生たちがたくさん出て来ます。思春期の子どもたちにもたくさん観ていただきたいです。昨今、道標になるような大人を見かけなくなりました。ですから高校生の皆さんに『あなたたちの映画でもあります』と思っています」とそれぞれ作品をアピールした。



映画祭情報
■第10回蔚山蔚州世界山岳映画祭(ウルサンウルジュマウンテンフィルムフェスティバルUMFF)
開催場所:韓国 蔚山・蔚州 2025年9月26日(金)~9月30日(火)
上映日:9月28日 14:30
登壇者:田部井進也
※ 山、冒険、探検、自然、環境を扱った映画と文化の紹介と宣伝を目的とした韓国初の国際山岳映画祭
■第45回ハワイ国際映画祭
開催場所:アメリカ ハワイ州ホノルル 2025年10月16日(木)~10月26日(日)
※ アジア太平洋地域における国際的な映画芸術の先駆けとして、新しい才能の発掘、革新的な教育プログラムによるキャリア開発の促進、そして映画芸術を通した文化交流の促進を目的としており、世界中の優れた映画関係者、新進気鋭のアーティスト、映画ファンが集う映画祭
公開表記
配給:キノフィルムズ
2025年10月31日(金) 公開
(オフィシャル素材提供)