記者会見

Kodansha Studios 設立発表会見

 登壇者:野間省伸(株式会社講談社 代表取締役社長)、クロエ・ジャオ(Kodansha Studios最高クリエイティブ責任者)、ニコラス・ゴンダ(Kodansha Studios COO)

 株式会社講談社は、アカデミー賞®受賞監督のクロエ・ジャオ氏、プロデューサーのニコラス・ゴンダ氏とタッグを組み、ハリウッドを拠点とする新会社「Kodansha Studios」を設立する運びとなった。なお、ハリウッドに制作会社を設立することは、講談社初の試みとなる。本スタジオでは、クロエ・ジャオ氏が最高クリエイティブ責任者(Chief Creative Officer)として企画やクリエイティブを統括し、数多くの映画やTVドラマを手掛けてきたプロデューサーのニコラス・ゴンダ氏がCOOを務める。また、講談社専務取締役の森田浩章がCEOに就任する。講談社は本スタジオを通じ、日本で出版された多種多様なマンガや小説の海外実写映像化およびグローバル展開において、より主体的な役割を担っていく。

 なお、11月4日(火)に「Kodansha Studios 設立発表会見」を実施し、講談社代表取締役社長の野間省伸、第93回アカデミー賞®の作品賞、監督賞、主演女優賞の主要3部門を独占した『ノマドランド』の脚本・編集・製作・監督を務めたクロエ・ジャオ氏、そして、ジャオ氏と共に制作会社「Book of Shadows」を共同創業し、以来ともに歩んできたプロデューサーのニコラス・ゴンダ氏が登壇した。

 会見冒頭では、Kodansha Studios設立にあたって講談社代表取締役社長の野間省伸が「このたび講談社は、ロサンゼルスを拠点にKodansha Studiosという、ハリウッドを中心に映画を制作する会社を設立いたしました。そのパートナーとして、こちらにいらっしゃいますアカデミー賞®受賞監督のクロエ・ジャオさんとニコラス・ゴンダさんらによる制作会社Book of Shadowsと提携しました。今後、さまざまな日本のIPをハリウッド映画などの形で広めていきたいと思っていますのでご期待ください」と挨拶した。

 続いてKodansha Studios 最高クリエイティブ責任者に就任することとなったクロエ・ジャオ氏が「本当にワクワクしていて、今日はとても嬉しい機会です。わたしは子どもの頃から深く日本の漫画やアニメを愛してきました。ですから本当にこのような機会をいただけて光栄です」とあいさつすると、Kodansha Studios COOに就任したニコラス・ゴンダ氏も「特に講談社さんのように、100年以上の長い伝統、そして素晴らしいクリエイティビティを育み、保ってきた会社とご一緒させていただけることを心から光栄に思っております」と語った。

 そしてあらためてKodansha Studios設立への思いを尋ねられた野間は「わたくしども講談社は、長年にわたってさまざまな物語を創出してきました。近年は海外へのIP提供にも力を入れているところでございます。いま世界的に日本のエンターテインメント・コンテンツの人気があるという状況もありますし、日本としてもコンテンツの輸出を世界に広めていこうといった追い風もございます。そういった中で、わたくしどももハリウッドをはじめ、海外からの実写映画化のお話をいただいてはいたのですが、やはりさまざまな課題が多い、というのが実情でございます」と日本のIPをめぐる現状を説明。

 その上で今後どうするべきか、という答えとして、Kodansha Studiosが設立される運びとなったことを明かした。「これまでは日本のIP、原作の権利を海外の企業にお渡しして、そこから企画・制作・プロモーションなどをすべてお任せするような形でしたが、今回、我々が制作会社を設立することによって、そういったところに深く関与していって。日本のIPを、そして日本のクリエイターを世界に広めていく。またこういった海外の素晴らしいクリエイターの方々とコラボレーションをして、ある種、化学反応を起こして新しいコンテンツを作っていく。そういったことを目指したいと考えております」。

 野間とジャオ氏がロサンゼルスで会ったのは2年半ほど前のこと。漫画、アニメという共通項で、両者はすぐに意気投合することとなりました。「もちろん彼女が、アカデミー賞®で監督賞を受賞した著名な監督であることは存じ上げておりましたし、日本の漫画が大好きだということも存じ上げておりましたが、実際にお話をしてみますと、本当に漫画が大好きで。中国にいた子ども時代からずっと漫画を読んでいたこともあり、漫画に対する愛情、深い造詣を持っている人だなと感じました」(野間)。

 さらに、その場でジャオ氏から「アニメもぜひつくりたい」という話が飛び出したと言い、野間も「実写とアニメ、両方とも一緒に作ればいい」と提案。「彼女からは『それはimpossible(不可能)なこと』だと言われたのですが、講談社は英語で“Inspire Impossible Stories”というスローガンを掲げていることもあって、“We’re here to make impossible stories”と言ったら、彼女が大層喜んでくれて。そこから仲良くなっていきました」と経緯を説明。その後、ゴンダ氏とも食事をしたり、ゲームをしたりと親しく付き合いをするに至り、「非常に良い信頼関係を築けているのではないかと思っております」と付け加えた。

 一方、Kodansha Studiosに望むものについて、ジャオ氏は3つのポイントを掲げる。「まず1つ目は東と西の懸け橋となること。異文化間の理解を促進するということ。わたし自身、子ども時代からそれを成し遂げたいという思いがありました。そして2つ目は、Kodansha Studiosに“庭”として機能してほしいということです。映画作家として、ストーリー・テラーとして、わたしがいつも望むものは安心できる場所です。作家、作品、アイデアがそこから発展して、そして外からの変革や情勢に左右されることなく守られる場所として機能させてほしい。つまり日本の作家と海外のクリエイターたちが共に植物を強く育て上げ、そこから巣立つことを助けられるような役割を担うことを期待しています。最後に3つ目は、野間社長と知り合った時に、彼の勇敢さに非常に魅せられたのです。不可能なことに果敢に挑んでいく。ですからわたしは彼に“Mr. Impossible”というあだ名をつけたのです。その精神をKodansha Studiosに取り入れて。果敢に取り組んでいきたいという思いがあります」。

 隣に立つゴンダ氏もジャオ氏の意見に深くうなずく。「この発表が行われる2年以上も前から、わたしたちはいろいろなものを学び続け、そしてたくさんの声を聞き続けてきました。もしかしたら今までもさまざまな課題があったかもしれませんが、そのような課題を克服するために、いろいろなシステムやプロセスをきちんと築き上げていきたいと思っております。このスタジオを設立することによって、まさにこれまで講談社さんがこれまで何年もしてこられたように、どんどん良いものに挑戦してつくっていきたいと思っています」。

 あらためてジャオ氏に、日本のコンテンツへの思いを尋ねたところ、「日本のコンテンツは、まさにこのわたしの血と肉をつくったと言えます。漫画だけではありません。小説、アニメ、同人誌といったすべてに影響を受けました」とコメント。「わたしは孤独な子どもでした。ですから漫画の中のキャラクターが友達だったのです。それはわたしだけではなく、世界の多くの人に共通する思いだと思います。たとえば漫画のシリーズ、作品がずっと続いていく中で、わたしもその漫画のキャラクターとともに成長していったのです。わたし自身、今はストーリー・テラーとして仕事をしていますが、もともとは漫画家を目指していたのです。ただ絵を描くのがあまりうまくなかったということで断念しました」。

 その上で、子どもの頃に漫画から学んだことは陰影だったとジャオ氏は語る。「漫画のキャラクターには明るさ、暗さだけではなくて、グレーのような幅広い表現があります。ですから漫画の中のキャラクターというのは単一的ではなく複雑です。それを日本文化が表すようになったのは、やはり西洋の文化を観察し、それを取り入れ、統合した上でアウトプットをしているからでしょう。そこには人間とは何かといった問いかけがあり、深いレベルで漫画に描かれていました。わたし自身がストーリー・テラーとして探求をする何か。埋もれてしまっているものや怖いもの、見えないもの、神秘的なもの、神話的なもの、科学、そういったものをわたしが映画で描こうとしているのも、やはり漫画の世界にわたし自身が何年も生きてきたことが大きな理由になっています」。

 日本IPのハリウッド実写化に挑戦していくKodansha Studiosだが、今後、ハリウッドにどのような影響を及ぼしていくのだろうか。「我々は今までさまざまな作品が映画化される上での困難というのを目の当たりにしてきました。そしてそれはわたし自身も経験してきたことですが、その大きな要因は東西文化における理解不足と言えるかと思います。知らないものへの恐れというものもあるでしょう。ただそれを超えて、両者は強く求め合っている。そもそも文明というのはその上に築かれてきたものですから、今回、Kodansha Studiosが“庭”となって、文化、そしてストーリーをつなげる。そうした調和を生み出す、impossibleなものを実現化するということは、今から考えただけで待ちきれないほどに楽しみです」と語るジャオ氏。

 さらにジャオ氏はこう続る。「きっとハリウッドも深く影響を受けるのではないかと感じています。ある意味ハリウッドはこれまで違う文化のIPを勝手に解釈して扱ってきたわけです。でもこれからは、作家なり、元々のアイデアに耳を傾け、コラボレーションをして、作家を尊重して、より作家性に近いものをつくるというのは、ハリウッドにとっても健全な形ではないかと感じるからです」と期待を寄せた。

 その言葉を受けた野間は今後の展望をこう語る。「今、クロエが話していた通り、ハリウッドの実写作品に関しては、クロエやニックたちがやっているBook of Shadowsの皆さんという非常に力強いパートナーを得られました。その中で我々としては、これまであまり知られていなかった日本の数多くのIPを、より多く世界に広めていくということをまず目指したいと思っています。また日本の漫画家、作家といったクリエイターと、海外の監督や俳優に限らず、さまざまなクリエイターが出会うこと、コラボレーションすることによって、新しいコンテンツ、新しい表現方法が生まれてくることを期待しています」。

登壇者プロフィール

野間省伸(株式会社講談社 代表取締役社長)

 1969年 東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、株式会社三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に入行、1999年に株式会社講談社に入社し取締役に就任。常務取締役、副社長を経て、2011年に第七代社長に就任。デジタル分野ではいち早く自社作品の大規模な電子書籍化を推し進めるなど業界を牽引してきた。多様なIPラインナップによるライツビジネス展開を軸に事業のグローバル化を推進。アメリカ、中国などで現地拠点の整備、拡充を図っている。
 2021年、創業以来掲げてきた企業理念「おもしろくて、ためになる」をベースに、新たなパーパス“Inspire Impossible Stories”を発表。コーポレートロゴを刷新するなどブランディングの強化に取り組み、自社のグローバル戦略を更に推進する。

クロエ・ジャオ(Kodansha Studios最高クリエイティブ責任者)

 1982年、中国・北京生まれの脚本家・映画監督・編集者・プロデューサー。三作目の長編映画『ノマドランド』でアカデミー賞®(作品賞・監督賞・主演女優賞)を受賞し、ベネチア国際映画祭金獅子賞、ゴールデングローブ賞、英国アカデミー賞、全米監督協会賞、全米製作者組合賞などでは主要賞を獲得。マーベル・スタジオ『エターナルズ』では共同脚本・監督を務める。近作では、スティーヴン・スピルバーグやサム・メンデスが製作に名を連ねる『ハムネット』にて脚本・監督・編集・製作総指揮を務める。同作はトロント国際映画祭で最優秀作品に相当する観客賞を受賞し、同賞を二度受賞した唯一の監督となった。

ニコラス・ゴンダ(Kodansha Studios COO)

 ハリウッドの制作会社Book of Shadowsの共同創業者・最高執行責任者(COO)。かつては、世界有数の没入型・インタラクティブ・アート組織であるMeow Wolfの初代チーフ・コンテンツ・オフィサー(CCO)を務め、現在も没入型・インタラクティブなストーリーテリングの第一人者として活躍。ウォルト・ディズニー・カンパニー、ワーナー・ブラザース、Epic Games、Roblox、MGMリゾーツと最先端の体験型プロジェクトで継続的に協業している。近作では映画『ハムネット』や『ツリー・オブ・ライフ』(アカデミー賞®ノミネート)をプロデュースする。

(オフィシャル素材提供)

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