イベント・舞台挨拶

『兄を持ち運べるサイズに』先行公開記念イベント

Photo by HIROKAZU OWADA

 登壇者:オダギリジョー、村井理子(原作者)、中野量太監督

 中野量太監督が脚本・監督を務めた最新作は、作家・村井理子氏が実際に体験した数日間をまとめたノンフィクションエッセイ「兄の終い」をもとに映画化した『兄を持ち運べるサイズに』。絶縁状態にあった実の兄の突然の訃報から始まる家族のてんてこまいな4日間の物語が11月28日(金)より全国公開となる。

 全国公開に先立ち、11月21日(金)からTOHOシネマズ日比谷、TOHOシネマズ梅田にて先行上映がスタート。これを記念して、11月23日(日)にTOHOシネマズ梅田にて行われた舞台挨拶に、オダギリジョー、本作の原作「兄の終い」の著者・村井理子氏、中野量太監督が登壇した。

 「ようこそ大阪へ!」という呼び込みで入場した三人。舞台に立ったオダギリは、「全国公開1週間前からの先行上映ということで、初めてそういう機会に参加しているのですが、皆さまも(28日の全国公開を前に)口コミを広める意識で帰ってください(笑)」と、観客に呼びかけ、会場は和やかなムードに。続けて、原作者・村井氏は、「初めての機会で緊張しています」と少し緊張気味に挨拶。監督は、「僕は出身が京都なので地元の仲間たちも何人か見に来てくれていると思うのですが、村井さんに最初に会ったのは3~4年前で、それぐらいから準備をしていたので、やっと一本の映画になって皆さまにお届けできたことが嬉しいです」と、上映の喜びを語った。

 映画化のきっかけを聞かれた監督は、「元々はあるプロデューサーからのお誘いで、原作を読んだんです。そしたら、兄が亡くなる話ではあるのに、読んでいたらクスっと笑ってしまったり、熱い思いになったり、これまで僕がつくってきた映画と方向性が似ているなと思って、これなら僕がつくったら面白くできるんじゃないかと思ったのがきっかけです」と、振り返る。一方、映画化の話をきいた村井氏は、「率直にとても嬉しかったです。おそらくどの作家さんもそうだと思うのですが、映像化されるということは書き手にとってとても嬉しいことなので。でも、本当は何が起こっているのかあまり分かっていませんでした(笑)」と、少し戸惑いもあったと当時の心境を述べた。

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 そんな脚本を読んだオダギリは、「とても素敵な脚本だったので、読んだ後監督にすぐメッセージを送りました」と、即決だったことを明かした。中野監督作品には、『湯を沸かすほどの熱い愛』以来10年振りの出演となるオダギリ。「(監督とは)歳がすごく近いので、分かり合えている何かがある気はしています。監督が書く脚本はいつも”笑って泣ける“面白い脚本が多いので、参加するのがとても楽しみでした」と、中野監督へ信頼を口にした。

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 本編を観た感想を問われた村井氏は、「最初はもちろん感動しました。ただ、私の本だけでは兄の死は悲劇的なかたちで終わってしまうのですが、映像になることによっていろんな仕掛けがあって、悲しいだけではなく、楽しい話にもなっていて、私にとってはそれが救いだったなと思います」と、とても気に入った様子。

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 実在の人物である<兄>を演じたオダギリ。実在の人物を演じる上での取材や準備について聞かれると、「監督から撮影の前に、村井さんにオンラインでお話しを聞く機会があるのですが参加されますかとお声がけいただいたのですが、それを断ったんです」と、事前取材を断っていたことを明かした。「何となく、知るのが怖いというか、今から演じる人のことを、答えを先に見せてもらいたくないと言いますか、(自分で)探していきたいと思ったんです」と打ち明け、「(村井さんを)目の前にして失礼なんですが、原作もあえて読まなかったですし、監督が書かれた脚本だけを信じて、監督との作業だと思って演じました」と、撮影時の心境を語った。

 これに監督は、「何となくオダギリさんはそういうスタイルだと思っているので、今回も参加しないならしないで良いかなと思っていました(笑)。でもその分、僕が村井さんにたくさんお話を聞いて脚本にちゃんと反映させていたと思うので、それを信じてオダギリさんが演じてくれた兄を、村井さんが見て『本当の兄みたい』と言ってくれたのは、嬉しかったです」と語った。

Photo by HIROKAZU OWADA

 そんなオダギリが演じた<兄>について村井氏は、「見た目こそ兄とは違いますが(笑)。例えばお葬式のシーンでお金を無心する場面や、スーパーで焼きそばを買う場面、アパートで履歴書を書いているシーンなんかは、本当にびっくりするぐらい兄と雰囲気が似ていて、すごいなと思いました」と、見た目は違えども兄の面影を感じたことを明かした。それを聞いたオダギリは、「そう思ってくださっていたことを初めて聞きましたし、それは偶然です!」と冗談交じりに返しつつ、「でも、嬉しいです」と、喜びをにじませた。

 6割は原作から、2割は村井氏への監督取材、そして後の2割が監督のオリジナル要素でつくられた本作。「文字と映像は別物なので、それを面白く見せるためには原作の要素だけだと難しいですが、原作の大切な部分はぶらさずつくります。ということは村井さんにはお伝えしていました」と監督。さらに、村井氏への取材の中で明かされた“お兄さんと焼きそばのエピソード”など、原作にない話も取り入れたという。
 劇中、妹・理子の心の中の声がテロップで表現するのは監督によるアイデア。また、原作では回想シーンでしか登場しない兄を、劇中でどう扱うか悩んだ末、理子の頭の中だけに現れる存在として描くことで、脚本作業が一気に進んだという。兄の描写についてオダギリは、「理子の回想と、理子のイメージの中でしか<兄>は出てこないので、演じるにあたって幅がありすぎて、逆に怖かったです」と、演じる難しさを明かした。

 これまで「家族」をテーマに作品を生み出してきた監督と、村井氏。監督は、「『兄の終い』を読んだ時に、残された人々が右往左往しながらも頑張って生きている姿に感銘を受けたんです。僕の作品も、“家族の死”を描いてはいますが、残された人々が死を受けてどう生きるか、ということを描いてきているので、そういう一生懸命生きている姿がちょっと滑稽でおかしくて、そういう方向性は、村井さんと似ている部分でもあるのかなと思います」と語り、村井氏も、「監督も家族を描いてこられていると思うのですが、私も家族を描くことが多くて。なぜかというと、家族というものがよく分かっていないからなんです。『家族とは何か?』をずっと探っていて、そこが監督との共通点かもしれません」と、共感を寄せた。

Photo by HIROKAZU OWADA

 公開前の試写会で「家族について考えさせられた」という声が多く寄せられている本作。それにちなみに、心境の変化を尋ねられた三人。村井氏は、「映画の中で両親と兄と私、四人がスーパーに大集合するシーンを観た時に、『あぁ、こうやって集まることができるんだ』と、本来は無理なんですが映像の中で集まれたことで安心を感じました。今でも亡くなった両親のことを考えると、そのシーンが出てくるようになりました」と、胸の内を語った。監督は、「何で家族の物語を撮っているかというと、村井さんと一緒で『家族とは何か』という答えが分からないからなんですが、今回だと村井家にとっての家族の形、前回だと『浅田家!』にとっての家族の形の答えはあると思っていて、でもそれって毎回違うんですよね。だからこそ、毎回新鮮です」と、毎回撮るたびに心境の変化はあると語った。

 最後にオダギリが、「この作品を皆さまの愛情をもって、ぜひいろんな人に届けてください」と呼びかけ、監督が、「映画って長い旅で、やっとここから皆さんに観てもらうために出航する感じです。皆さんはそれの最初のお客様です。皆さんで勢いよく広めていただけると幸せですし、5年振りに撮ったこの映画は自信作です。観て思ったことをお伝えいただけると嬉しいです」と締めくくり、イベントは幕を閉じた。

Photo by HIROKAZU OWADA

 さらに同日、TOHOシネマズ日比谷で行われた中野量太監督によるティーチイン舞台挨拶に、オダギリジョーもサプライズで登壇! 公開前の盛り上がりを一層高めるイベントとなった。

公開表記

 配給:カルチュア・パブリッシャーズ
 11月28日(金) TOHOシネマズ日比谷他、全国ロードショー

(オフィシャル素材提供)

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