
ポルトガルの鬼才、ペドロ・コスタの『血』『溶岩の家』『骨』の初期3作品を監督自ら監修した4Kレストア版で劇場初公開する特集上映「ペドロ・コスタ はじまりの刻(とき) 1989-1997」(5月24日[土]から渋谷・ユーロスペースで公開)のポスタービジュアルと予告編が完成した。
この度解禁するポスタービジュアルでは、長編デビュー作『血』からクララ役のイネス・デ・メデイロスのモノクロの憂いを帯びた印象的なアップをフューチャー。イネス・デ・メデイロスは『血』『溶岩の家』『骨』と今回上映されるペドロ・コスタ初期3作品全てに出演し、コスタ監督も当時「自分の女性的な面を体現している」と語っているように、まさにペドロ・コスタの“はじまり”を象徴するビジュアルとなっている。また予告編では、3作品それぞれから印象的な場面を抽出。『骨』のシーンには伝説的傑作『ヴァンダの部屋』に登場するヴァンダの姿も垣間見え、マノエル・ド・オリヴェイラ、ジャン=マリー・ストローブ、ジャック・リヴェットという名だたる巨匠たちのペドロ・コスタ礼賛のコメントも見逃せない。
本特集に合わせて世界にペドロ・コスタの名を知らしめた『ヴァンダの部屋』と『コロッサル・ユース』も2Kレストア版で特別上映、その類まれな軌跡を見つめる。
マノエル・ド・オリヴェイラ(映画監督)
ペドロ・コスタの映画はよく見ている。彼は特別な才能を持つ監督だ。
ジャン=マリー・ストローブ(映画監督)
ペドロ・コスタのように、フリッツ・ラングや溝口のような画面を撮れる人は他にいない。
ジャック・リヴェット(映画監督)
コスタは本当に偉大だと思う。彼の映画は美しく強力だ。
瑞々しくも激しく、そして鮮烈に――
ペドロ・コスタ初期3作を、監督自ら監修した4Kレストア版で劇場初公開
『ヴァンダの部屋』から25年、『コロッサル・ユース』から19年――世界を驚かせ続けるポルトガルの鬼才、ペドロ・コスタ。
その伝説前夜とも言える、漆黒のモノクロが鮮烈な長編デビュー作『血』、“カーボ・ヴェルデ”というペドロ・コスタの後の作品群に繋がる場所が初めて登場した重要作『溶岩の家』、スラム街フォンタイーニャスに住む人々を起用し、圧倒的なリアリズムで底辺の生活の厳しさを描く『骨』の初期3作を監督自ら監修した4Kレストア版で初めて劇場公開する。
また、破壊されつつあるフォンタイーニャスを舞台にそこに生きる人々の営みを強烈な映画手法で描いた、『ヴァンダの部屋』と『コロッサル・ユース』も特別上映し、その類まれな軌跡を見つめる――。
上映作品
『血』(4Kレストア版)

不安や恐れに苛まれる恋人たち、幻想的な森、黒く光る沼、得体の知れない男たち……。
自らが受けた映画史と自国の記憶を色濃く反映し、「ポルトガル映画の最も美しい一本」との評価を得たペドロ・コスタ初の長編作品。
(英題:Blood|原題:O Sangue、ポルトガル/1989年/ポルトガル語/モノクロ/DCP/95分)
出演:ペドロ・エストネス、ヌーノ・フェレイラ、、ルイス・ミゲル・シントラ
2022年 ヴェネチア国際映画祭 国際批評家週間出品
1989年 ヴェネチア国際映画祭出品
1990年 ロッテルダム国際映画祭 国際批評家連盟表彰
青年ヴィンセントは病に苦しむ父親を安楽死させ、墓地に埋める。父親の消息に疑問を持った伯父は青年の許にやってきて弟を連れ去ってしまった。一方、父親の負債の返済を求めて二人組が現れる。弟を取り返すべく動く青年を二人組が追っていく……。ペドロ・コスタ長編第1作となる本作はフィルムノワール的風貌を見せつつ、瑞々しく輝く画面が観る者を魅了する。マノエル・ド・オリヴェイラ作品常連のルイス・ミゲル・シントラが重要な役で華を添えている。

『溶岩の家』(4Kレストア版)

アフリカ、カーボ・ヴェルデの言葉、習慣、気候、風土――その現実的な生活と歴史を映画に取り込みながら、荒々しい色彩と感情に彩られた記念すべき長編第2作。
(英題:Down to Earth|原題:Casa de Lav、ポルトガル・フランス・ドイツ/1994年/ポルトガル語・クレオール語/カラー/DCP /110分)
出演:イネス・デ・メデイロス、イサック・デ・バンコレ、エディット・スコブ
1994年 カンヌ国際映画祭〈ある視点〉部門出品
1994年 テサロニキ国際映画祭 最優秀芸術貢献賞
1994年 ベルフォール国際映画祭 最優秀外国映画賞
看護師のマリアーナは、リスボンの工事現場で意識不明となった男レオンに付き添って彼の故郷カーボ・ヴェルデに向かうが、病人とともに荒野に取り残される。島民に病院まで運んでもらうが島民の誰一人として病人のことは語ろうとしなかった……。
本作の撮影後に、託された手紙をフォンタイーニャス地区に届けたことを契機に、“カーボ・ヴェルデから届いた手紙” というペドロ・コスタの重要なモチーフが生まれるきっかけとなった重要作。伝説的女優、エディット・スコブが特別出演している。

『骨』(4Kレストア版)

狭い路地、壁に背をもたせ何かを待つ男と女、行き場のない空気。
リスボンのスラム街フォンタイーニャスで絶望を抱えた人々の息づかいが圧倒的なリアリズムで迫る。
(原題:Ossos、ポルトガル・フランス・ドイツ/1997年/ポルトガル語/カラー/DCP /94分)
出演:ヴァンダ・ドゥアルテ、ヌーノ・ヴァス、マリア・リブキナ、イザベル・ルート、イネス・デ・メデイロス
1997年 ヴェネチア国際映画祭 金のオゼッラ賞(撮影賞)
1997年 ベルフォール国際映画祭 審査員特別賞
赤ん坊を産んだティナはリスボン郊外にあるスラム街に戻ってくるが、夫は赤ん坊を連れて家を出て行ってしまう。彼は物乞いをし、看護婦のエドゥアルダと知り合い、彼女の家に居候するようになる。ティナの隣人クロチルドは家政婦をしているが、ある日エドゥアルダの家でティナの夫に出会う。スラム街フォンタイーニャスに住む人々を起用し、圧倒的なリアリズムで底辺の生活の厳しさを描き、高く評価された。『ヴァンダの部屋』のヴァンダも家政婦役で出演。

特別上映
『ヴァンダの部屋』(2Kレストア版)

(英題:In Vanda’s Room|原題:No Quarto de Vanda、ポルトガル・ドイツ・スイス/2000年/ポルトガル語・クレオール語/カラー/DCP/178分)
出演:ヴァンダ・ドゥアルテ、ジータ・ドゥアルテ、レナ・ドゥアルテ、アントニオ・セメド・モレノ、パウロ・ヌネス
2000年 ロカルノ国際映画祭 ドン・キホーテ賞・特別賞・青年批評賞・最優秀賞
2001年 山形国際ドキュメンタリー映画祭 最優秀賞・国際批評家連盟賞
2002年 カンヌ国際映画祭 フランス文化賞・最優秀外国映画作家
数十人の規模の映画制作に疑問を持ったコスタは小型のDVキャメラを手にフォンタイーニャスに戻り、撮影を敢行。『骨』に出演したヴァンダ・ドゥアルテとその家族を中心に、再開発が進み、パワーショベルによる破壊が進む街に暮らす人々を見つめる。小津、溝口、フォードを想起させるスタンダード・サイズの画面と、街に響く破壊音の対比が強烈な印象を残し、新たなドキュメンタリー表現として多くの映画作家に影響を与えた。
『コロッサル・ユース』(2Kレストア版)

(英題:Colossal Youth|原題:Juventude em marcha、ポルトガル・フランス・スイス/2006年/ポルトガル語・クレオール語/カラー/DCP/155分)
出演:ヴェントゥーラ、ヴァンダ・ドゥアルテ、ベアトリズ・ドゥアルテ、イザベル・カルドーゾ
2006年 カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品
『ヴァンダの部屋』のスラム街は取り壊されて、ヴァンダは新しい集合住宅に移り住んで夫と子どもと暮す。カーボ・ヴェルデから移り住み34年間、フォンタイーニャス地区に住んできたヴェントゥーラ。妻に去られた後、まだ残るスラム街と新築住宅を行き来し“子どもたち”を訪ねる。過去と現在を縦横無尽に交錯させながら、彷徨える魂を描き出す。ヴェントゥーラが繰り返し口ずさむ手紙が感動を呼ぶ。
公式サイト:https://cinematrix.jp/early_pedro/
facebook:fb.com/CostaPedroJP(外部サイト)
X:@ pedrocosta_jp
公開表記
配給:シネマトリックス
2025年5月24日(土)〜 ユーロスペースにてロードショー全国順次公開
(オフィシャル素材提供)