イベント・舞台挨拶

『入国審査』ジャパンプレミア

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 わずか17日間で撮影された低予算の監督デビュー作が、スペイン映画として初めてインディペンデント・スピリット賞3部門にノミネート、さらに世界各国の映画祭で新人監督賞や観客賞を獲得するなど大きな注目を集めたリアリティMAXの深層心理サスペンス『入国審査』が、8月1日(金)より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル池袋ほかにて全国公開!

移住のためにNYに到着したが、なぜか入国できないカップル。
なにが真実で、どれが嘘?
答えひとつに人生が左右される――。

 監督・脚本はアレハンドロ・ロハスとフアン・セバスチャン・バスケス。故郷のベネズエラからスペインに移住した時の実体験からインスピレーションを受け、実力派俳優を迎えて制作。わずか17日間で撮影された低予算作品ながら、SXSW国際映画祭2023に正式出品、第39回インディペンデント・スピリット賞では新人作品賞・新人脚本賞・編集賞ノミネート、 さらに北欧最大の映画祭第26回タリン・ブラックナイト映画祭で新人作品賞受賞、第28回コルカタ国際映画祭・最優秀作品賞受賞、第72回マンハイム-ハイデルベルク国際映画祭・観客賞受賞、第16回スペイン・ラテンアメリカ映画祭・観客賞受賞など、なんと15ヵ国の映画祭で20余りの賞を受賞し、世界中の映画祭を席巻! さらに米レビューサイトのロッテントマト(Rotten Tomatoes)でも「批評家100%、観客97%」(2025.4/30時点)の高評価! 監督デビュー作にして、その才能を世界に見せつけている、注目の一本だ。

 そして、この度本作の日本公開を前に、アレハンドロ・ロハス監督とフアン・セバスチャン・バスケス監督が初来日し、7月3日(木)インスティトゥト・セルバンテス東京にてジャパンプレミアを開催!
 上映前には、まずインスティトゥト・セルバンテス東京のビクトル・アンドレスコ館長が「満員のお客様の中、監督お二人を迎えられて嬉しい」と挨拶。続いて監督二人も登壇し、「本日このようにたくさんの方に観ていただけるのはとても嬉しいです」(フアン・セバスチャン・バスケス監督)、「日本で劇場公開となったことが夢のようです」(アレハンドロ・ロハス監督)と笑顔で挨拶。
 そして、77分間の本編上映後は、観客の大きな拍手に迎えられ、アレハンドロ・ロハス監督とフアン・セバスチャン・バスケス監督が改めて登壇しトークイベントを実施。入国審査にかかわる自らの体験談や、観客にリアルさを感じてもらうための制作時のこだわりなど、大いに語った!

■まず、本作の誕⽣きっかけについて伺いたいと思います。お⼆⼈とも、劇中のディエゴと同様にベネズエラ出⾝、バルセロナ在住とのことで、この物語はお⼆⼈の実体験が元になっていると伺っています。どんな体験だったのでしょうか︖また、それを映画化しようと思ったきっかけは何でしょうか︖

アレハンドロ・ロハス監督:この映画の物語には私たちと周りの人たちの経験が入っています。ベネズエラ出身なので、アメリカの入国管理では元々要注意の国として、ベネズエラの旅券(パスポート)だと素直に入国することが難しい現状がありました。それにより私自身入国管理局に対する反感や恐怖があります。誰も見ていないところで行われる“審査”で、実際何が起きているのかを語りたかったんです。

フアン・セバスチャン・バスケス監督:もう一つ、この物語のポイントは登場人物であるカップルの女性エレナの存在です。ヨーロッパの国の国籍である彼女は私たち南米の国出身の人がどんな苦労をしているのか知らない。例えば人種や宗教などいろいろな差別がある中で、自分の国籍でそもそも差別されるということを知ってもらいたかった。彼女のように経験がない人たちにも、もし自分が移民の立場だったらどうなるかを知ってもらいたいとも思いました。

■ちなみに今回の入国審査はお二人ともいかがでしたか?

アレハンドロ・ロハス監督:今回(市民権を得ている)スペインのパスポートで入国しましたので、とてもスムーズでしたし空港は静かでした。ベネズエラのパスポートで来ていたらどうだったか分かりませんが(笑)。

フアン・セバスチャン・バスケス監督:静かな空港のどこかに、もしかしたらどこかの国の人が二次審査をうけていたかもしれませんね。

■お二人は20年来の友人と聞いております。脚本もお⼆⼈で書かれていますが、どのように共同作業をされましたか︖ またその際、体験部分とフィクション部分をどのように融合されたのでしょうか︖

アレハンドロ・ロハス監督:自分たちや知人などの体験談を参考に主人公のカップルをいろいろな視点で描こうと思いました。脚本の構成については、あるカップルが入国審査の二次審査に連れていかれるということは最初から決めていて、二次審査の中で初めて明らかになる事実により二人の関係に影響がでてくるという流れを考えていきました。結末も最初から決まっていました。二人で行う脚本作業はまさに手が4つあるような感じ(笑)で共に進め、コロナ禍でもリモートで一緒に作業していました。そしてこの作品はセリフも重要なのでお互い声に出して読んで、リアルに聞こえるか、何かおかしいところはないか確認し合ったりしました。

■主⼈公のエレナが「スペイン出⾝︖」と聞かれて何度も「バルセロナ」と答える場⾯が印象的です。⽇本の観客には少し馴染みがないかもしれませんが、彼⼥のカタルーニャ出⾝者としてのアイデンティティについて、もう少し詳しく教えていただけますか︖

フアン・セバスチャン・バスケス監督:スペインの中でも多様性があるのでそれを表現したかったのですが、エレナは自分がスペイン人であるというよりもカタルーニャ人であるという意識が強いので、出身をきかれ「(スペインではなく)バルセロナ」とつい答えてしまうのです。実際カタルーニャに住んでいるとそういうことを実感しますし、この映画では、彼女は実はスペイン人でいるのが嫌でカタルーニャ人だけでありたいのだけれど、一方のディエゴはスペイン人のパスポートが欲しいわけです。カップルのこういったコントラストが面白いのではないかと考えました。

■本作はほとんどが空港の限られた空間の中で展開します。緊張感を持続させる⾒事な演出が光っていました。密室劇を成⽴させるうえで、カメラワークなどどんな⼯夫をされたのでしょうか︖

アレハンドロ・ロハス監督:本作は17日間で撮影しました。その中の11日間を尋問のシーンに費やしました。そしてほぼ順撮りで撮影しています。ですのでキャストも私たちスタッフも自然にストーリーの流れに入っていくことができました。そして撮影の数日前からカメラアングルを細かく考えて、どうやったら登場人物の気持ちが一番表現できるかなど工夫し、どのようにすれば観客も登場人物と同じように圧迫感や不安を感じてもらえるか、考えていきました。キャストも素晴らしかったですね。またリズムを崩さないことにも注力し、私たちの優秀な編集マンが時計と同じようにリズムを刻むようなイメージで、一定のリズムで編集をしてくれました。
 またできるだけリアルに感じられるよう、撮影時カメラを動かさなかったので、カメラの存在を忘れるような編集を心がけました。それぞれの質問に次はどう答えるんだろうと常に不安を感じさせるような編集もよかったと思います。

■キャスティングについてもお伺いしたいと思います。ディエゴ役のアルベルト・アンマンは、アルゼンチン⽣まれでスペイン育ち。エレナ役のブルーナ・クッシもカタルーニャ出⾝と伺っています。また、審査官役のローラ・ゴメスはアメリカ・ニュージャージーで⽣まれ、ドミニカ共和国で育った俳優です。役柄は俳優のバックグラウンドを重ねて、意図的にキャスティングされたのでしょうか︖

フアン・セバスチャン・バスケス監督:この脚本は7年くらい前に執筆したのですが、その時点では俳優は決まっておらず、撮影するにあたってはまず演技力を重視しました。またこのキャラクターを理解してくれるかどうかもポイントでした。主要キャストの4人は昔から知っているかのようにいろいろ話し合ってくれて、それぞれの役柄を深く理解して演じてくれました。

 このあと、観客からとのQ&Aにうつり、観客からは「とても面白かったです」という感想とともにさまざまな質問が挙がった。
 監督が実際に体験された尋問がセリフに反映されているかという質問には「すべて私たちが聞かれた質問でないけれど、実際に経験した質問が含まれています」(ロハス監督)、「入国審査の空間についても自分たちの記憶をもとに忠実に作り上げました」(バスケス監督)と答えると観客席からは驚きの声があがった。またカップルを尋問する審査官の一人が南米系に見える女性で二人と同じように移民であるようなキャラクターにした理由については「重要なのは、ああいった社会に住んでいるとどういうふうに変わるかということです。自分がその社会の一員として認められるため、元々の自分の出身地のたちにも厳しくする。本来一番シンパシーを感じてもらえるだろう人に一番厳しくされるということをよく目の当たりにします」(バスケス監督)と実感を込めて答えるなど、監督二人も鋭い質問に感心しながら観客とのセッションを楽しんでいた。

 最後に、アレハンドロ・ロハス監督は「今日はありがとうございました。これから劇場公開ですので、気に入ってくださったらぜひ周りに勧めてください。よろしくお願いします」と話し、フアン・セバスチャン・バスケス監督は「日本の皆さんにとっては、本作で描かれている内容はあまり馴染みがないと思うかもしれない。しかし世界の情勢やそれぞれの国の状況は変わっていきます。これから日本もどうなるか分かりませんし、これは明日のあなたの話かもしれません!」という言葉には同意するように頷く観客の姿もあり、監督2人が本作に込めた思いも存分に感じる有意義なトークイベントとなった。

公開表記

 配給:松竹
  8月1日(金) 新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開

(オフィシャル素材提供)

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