
抑圧の時代に、真実を語り続けた一人の女性の静かな叫び。世界が忘れた「声なき物語」が、いま再び蘇る。第97回アカデミー賞🄬で、ブラジル映画初の国際長編映画賞を獲得したほか、主演女優賞、作品賞にもノミネート! 名匠ウォルター・サレス監督(『セントラル・ステーション』『モーターサイクル・ダイアリーズ』)が手がけた最新作『アイム・スティル・ヒア』(8/8公開)より、フェルナンダ・トーレスと夫ルーベンスを演じたセルトン・メロのインタビュー映像が解禁された。
1970年代、軍事独裁政権が支配するブラジル。元国会議員ルーベンス・パイヴァとその妻エウニセ(フェルナンダ・トーレス)は、5人の子どもたちと共にリオデジャネイロで穏やかな暮らしを送っていた。だが、スイス大使誘拐事件を境に政情は一変し、抑圧の波が市民を覆ってゆく。ある日、ルーベンスは軍に連行され、そのまま消息を絶つ。突然、夫を奪われたエウニセは、必死にその行方を追い続けるが、やがて彼女自身も軍に拘束され、過酷な尋問を受けることとなる。数日後に釈放されたものの、夫の消息は一切知らされなかった。沈黙と闘志のはざまで、それでもなお、彼女は夫の名を呼び続けた──。自由を奪われ、絶望の淵に立たされながらも、エウニセの声はやがて、時代を揺るがす静かな力へと変わっていく。
この度解禁となるのは、ヴェネチア国際映画祭でのワールドプレミア翌日に収録された、フェルナンダ・トーレスとセルトン・メロによる2ショット・インタビュー映像。本作でブラジル人俳優として初めて第82回ゴールデングローブ賞・主演女優賞を獲得し、第97回アカデミー賞でも主演女優賞にノミネートされたトーレスが、軍事独裁政権によって突然夫を失った妻エウニセを演じ、その夫ルーベンスを演じたメロと共に本作を語っている。
本作に出演した感想について、トーレスは「これはブラジルだけの話じゃない。今、世界中で起きている問題」「国家から暴力的な迫害を受ける中で、どう生きていくかを考えさせられる映画」だと語る。そして「父親が行方不明になり、家族がどれほどつらい思いをしたのか、軍政下でどう生き抜いたのか。今を生きる私たちこそ考えるべきことよ」と強調し、スクリーンにパイヴァ家を甦らせる意義を訴えた。
本作の原作「Ainda Estou Aqui」を執筆したパイヴァ家の息子マルセロとはもともと親しい友人であったトーレス。役作りのために「マルセロを通じて彼の家族とも親しくなり、話を聞かせてもらった」と振り返る。その上で「主に参考にしたのはエウニセの写真とインタビューだった」と語る。彼女はエウニセについて「優しくて上品な女性であると同時にとても強くてたくましかった」「正義を追求することを決して諦めなかった」と表現「自分を憐れまない 彼女の毅然とした生き方を大切にして演じたわ」と語る。
一方、夫ルーベンスを演じたメロもまた、実在の人物に向き合うこととなった。「ルーベンスはエウニセと違って、残されているのは写真だけ」と明かし、その人となりを掴むために、実際にパイヴァ家の人々と対話を重ねたと言う。だが、最終的には監督やフェルナンダ、スタッフたちとも話し合って彼がどんな人物だったか自由に想像」「僕なりのルーベンスを作り上げたんだ」と語り、さらに「この作品における僕の役割は観客の記憶に刻まれることだった」と真摯にその思いを口にした。
『セントラル・ステーション』でブラジル人俳優として初めてアカデミー賞🄬にノミネートされた名女優フェルナンダ・モンテネグロ。現在も95歳(インタビュー時は94歳)で現役を続ける彼女が、本作では老年期のエウニセを演じ、親子で共演していることも話題に。
トーレスは、そのことについて「私はいつも母と一緒に劇場にいた。家よりも劇場のほうが両親と過ごす時間が長かったの」と懐かしそうに語り、「まさに我が道を行く人なのよ」と笑顔を見せる。共演のセルトン・メロも、「彼女(モンテネグロ)はブラジル映画界にとって“母”のような存在。そしてフェルナンダ(トーレス)は、僕にとって“姉”も同然」と語り、2人揃って偉大な先輩へ尊敬の念を表する。そして「この作品は心を深く揺さぶる人間ドラマよ。失踪した夫を探し続ける妻そして最後に登場して締めるのが母なの」と<鍵>を閉めるジェスチャーをしながら賛辞を贈った。
最後、本作が現在の世界と呼応するものであることについて、強い想いを語ったトーレスとメロ。「独裁政権は弾圧しようとしたけど人々はそれに屈せずレジスタンス芸術が開花した」「この映画が描いてる普遍的なテーマはブラジルだけでなく世界中の観客の心に届くはず。今まさに世界で起きてる問題を彷彿とさせるからよ」「世界中の観客の心に深く響く、実に稀有な作品」とその想いとともに締め括った。
ストーリー
国会議員のルーベンス・パイヴァとその妻エウニセは、5人の子どもたちと共にリオデジャネイロで穏やかな日々を過ごしていた。だが、スイス大使誘拐事件を契機に、国の空気は一変する。抑圧の波が広がる中、ある日、ルーベンスは軍に逮捕され、そのまま連行された。愛する夫を突然奪われたエウニセは、必死にその行方を追う。しかし、その過程で彼女自身もまた軍に拘束され、数日間にわたる過酷な尋問を受けることとなる。極限の状況の中でなお、彼女は沈黙を貫き、夫の行方を捜し続けた。自由を奪われ、愛する人の消息も知らされぬまま、それでもエウニセは諦めなかった。夫の名を呼び続けたその声は、やがて静かに、しかし確かに、歴史を動かす力へと変わっていく──。
(原題:Ainda estou aqui、2024年、ブラジル・フランス合作、上映時間:137分)
キャスト&スタッフ
監督:ウォルター・サレス
脚本:ムリロ・ハウザー、エイトール・ロレガ
出演:フェルナンダ・トーレス、セルトン・メロ、フェルナンダ・モンテネグロ
音楽:ウォーレン・エリス
撮影:アドリアン・テイジド
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公開表記
配給:クロックワークス
2025年8月ロードショー
(オフィシャル素材提供)