イベント・舞台挨拶

石井岳龍(ex.聰亙)監督作『狂い咲きサンダーロード』45周年記念復活上映 初日舞台挨拶&泉谷しげるミニライブ

Photo by Shigeo Kikuchi

 登壇者:石井岳龍(『狂い咲きサンダーロード』監督)、緒方 明(同助監督)、泉谷しげる
 ミニライブ:泉谷しげる

 『爆裂都市 BURST CITY』『ELECTRIC DRAGON 80000V』などの傑作を生み、最新作『箱男』も大きな話題を呼んだ鬼才、石井岳龍(ex.聰亙)監督が、日本大学藝術学部映画学科在籍時、23歳の若さで発表したインディペンデント映画『狂い咲きサンダーロード』。日本が世界に誇る近未来バイオレンス映画であり、今なお伝説として語り継がれ、各界に影響を与え続ける本作だが、公開から45周年を記念して8月22日より特別再上映が始まった!
 この復活上映を記念して、公開初日のシネマート新宿にて、ファンが待ちに待っていた<泉谷しげるミニライブ&舞台挨拶付き上映>が行われ、石井岳龍(ex聰亙)監督、緒方 明(当時助監督)が登壇。この日のチケットは発売後すぐに完売しており、満席となった会場は、3人の登壇を熱狂的に迎え入れ、熱い熱い一夜が始まった。

Photo by Shigeo Kikuchi

 映画史に残る胸熱のエンディングを観終えたばかり観客から、割れんばかりの拍手で迎えられた3人。進行役も務めた緒方 明が「45年ですよ! 撮影当時石井さんが22歳、泉谷さんも30歳ちょっとの若者ですよ! 若者だった時代があるんですね」と口火を切ると、石井は「尖ってましたね、めちゃくちゃ尖ってました!」と当時を振り返る。そして観客への挨拶を終えた泉谷は「(挨拶のできる)立派な社会人になりました」とおどけ、会場の爆笑を誘う。石井が「新しく作られたパンフレットやグッズ見ました? 封切の時よりにぎやかで感無量。ただただ感謝しかなく、言葉が出ないです」と感慨深そうに語ると、それを聞いた泉谷は「何おじいちゃんみたいなこと言ってんだよ!」と、大人になった石井に激しいツッコミ。

 「尖がってたんだぜ?」と撮影当時の石井について話す。「いいカット撮れたら1週間ごはん食べないでいられるって言ってたんだよ。こいつ何もんだ!と思いましたよね」。そして緒方からの「そもそも2人の出会いは?」との質問に石井は「泉谷さんからいきなり『泉谷だけど』って電話がかかってきたんですよ」と驚愕のエピソードを披露。泉谷も「石井の8mmの『高校大パニック』をぴあフィルムフェスティバルで観て『すごいのが現れた。とんでもねえなこいつ』と思って、電話番号聞いて連絡したんだよね」と応じ、1人の大学生に売れっ子ミュージシャンからいきなり直電、という衝撃の事実で会場を驚かせていた。

Photo by Shigeo Kikuchi

 ここから話は石井の音へのこだわりのトピックに。泉谷が「公開当初、上板東映という劇場で石井が『ロックだ! ロックだ!』といってとにかくボリュームを上げさせたから、音が割れてたんだよ!」とロックすぎるエピソードを披露。緒方も「東映スタジオで作品の仕上げをやったんですけど、大ベテランのミキサーさんに石井さんが『全部フルボリュームでお願いします』って言うんです。そしたらミキサーさんが『監督あのね、全部フルボリュームにすると、何も聞こえなくなるんだよ』って教えてくれて(笑)」と続き笑いを誘った。

 泉谷は本作に楽曲提供だけでなく、美術としても参加。そのことについて「当時『ヘヴィ・メタル』という雑誌とメビウスという海外の漫画家の影響を受けていて、サンダーロードのデザインもその影響がある」と告白。「こういう映画を作れたらなと思っているところに石井がバイク映画の企画を持ってきた。それで、ただのバイク映画じゃつまんないから、近未来ものにして、川崎のコンビナートあたりをぶっ飛ばさないか?と提案してデザインしたのがあれだった」と、ファンが愛してやまないポスターのデザインに使用された泉谷のイラストについて語った。「でも、確かにポスターの絵を描いたのは俺だけど、石井の映画はそれを軽く超えてきますからね。この人には絵コンテなんてどうでもいい、素晴らしいよ!」と手放しに絶賛。2人の熱いエピソードに観客も感慨深げだった。一方で石井も泉谷から受けた影響について「当時泉谷さんの家や事務所に行くと、最先端の音楽がずっとかかってるんですよ。トーキングヘッズの『リメイン・イン・ライト』とか、ザ・ポップ・グループとかね。『石井これだぜ!』って」と振り返る。泉谷は「あの絵のテイストに目覚めちゃったんだよね。75年くらいまでは吉田拓郎とか井上陽水とかと遊んでたんだけど、あの絵に目覚めて意見が合わなくなったんじゃないかな(笑)」と続き、再び観客をドッと沸かせていた。

Photo by Shigeo Kikuchi

 やがて話は当時のインディペンデント映画の環境についてへ。泉谷が「当時は若いやつらが『もっと面白いものを作ろう』という熱意に溢れていた。映画ももっとお金を掛けようという流れにあった気がするけど」と言うと石井は当時の大作映画について「自分たちの映画じゃねぇな、という気がしていました。それに賛同してくれた人たちが自分たちに手を貸してくれた」と振り返る。泉谷も「『スター・ウォーズ』もスピルバーグも出てきたけど大して面白くないよね?」と衝撃発言で笑いを誘うと「もっと若いやつの内面のイラつきみたいなものを見たかった。石井はしょっちゅう怒って壁を殴ってなかった? サンダーロードで主人公が、『何笑ってんだ!』って殴る、あの気持ちだよな?」と聞くと石井は「申し訳なかったです……」と苦笑。若い頃の怒りに満ちた自分のふるまいを反省する様子を見せ、観客を笑わせた。

 トーク時間の終わりも迫り緒方が満席の会場を見渡し、「こんなに長く支えられると思わなかった。暴走族だった人たちというよりも、暴走族にカツアゲされてた側だった人たちに多く支えられている気がする。そういう人に刺さる何かがあるんだな、と今となっては思う」と語ると石井は「自分がいじめられっ子だったからね」と共感。緒方はすかさず「でも現場ではおれがいじめられてたけどね(笑)!」とツッコミ。再び大きな笑いに包まれ「孤独な闘いに寄り添う映画なんですよね」と分析し、石井や泉谷も大きくうなずいていた。

Photo by Shigeo Kikuchi

 そして瞬く間にトークの時間はタイムアップ。いよいよ泉谷のライブへ! さっきまでのおどけた表情とは一変、刀を構える侍のような眼差しでギターを手にすると、サンダーロード・ファンが待ち望んだオープニングソング「電光石火に銀の靴」を生披露。映画館の音響とは思えないほどのボリュームと音圧でかきならし、絶唱すると、熱狂したファンは拳を突き上げて応じる。客席のファンの中には、すでに感極まって涙する人の姿も。

Photo by Shigeo Kikuchi

 歌い終わった泉谷は大歓声の客席に向かい「おい! この野郎、火ぃつけやがって!」と叫び、早くもボルテージは最高潮に。熱いコール&レスポンスに続き「『翼なき野郎ども』だ!」とエンディングの名曲を奏でる。映画を観たばかりの観客はまさに感動の嵐。圧倒的なパフォーマンスが終ると「よしアンコールだ!」と不朽の名作「春夏秋冬」が始まった。泉谷の代表曲でもある同曲、最後はアカペラで観客と共に歌う場面、そして、アドリブで語られる熱いメッセージも曲中に加えられ、客席は興奮の表情と感動の涙に溢れていた。

Photo by Shigeo Kikuchi

 とてつもないエネルギーで3曲のミニライブが終ると再び石井と緒方がステージへ。石井の「いい歌ですね」というしみじみとした感想に泉谷「おい! いい歌ですねっていうレベルかよ!」という激しいツッコミ。今日は(亡くなった)山田辰夫さんも後ろのほうで観てくれている、と語る石井が「この劇場も素晴らしいし、今後もたくさんの劇場で上映していただく。昔からのファンも、新しいファンも、観て下さる方がこの映画を一緒に作ってくれていて……」と感謝の気持ちを述べると再び泉谷が「何言ってるか分かんねぇ!」と再び愛のツッコミ。石井は「それが支えです! 支えなんです!」と大声で締めくくり、この日一番の爆笑の中、最高に熱い一夜は幕を閉じた。

 まさに映画イベント史上に残ると言える、熱狂的なイベント。会場で展開された物販も、1体16,500円の高価なソフビフィギュアが朝の段階で即完売した他、完売賞品が続出。

 物販コーナーは上映前、上映後とも長蛇の列で大盛況だった。なお、シネマート新宿での上映は2週間、9月4日(木)までの予定。今後、8/29(金)より、名古屋:伏見ミリオン座、大阪:Kino Cinema心斎橋、京都:京都シネマ、兵庫:元町映画館ほか順次全国で上映開始。各地での舞台挨拶も予定されている。

『狂い咲きサンダーロード』

© ISHII SOGO ALL RIGHTS RESERVED.

ストーリー

バイク!ロック!バイオレンス!日本インディーズ映画の最高峰に輝き、今なお多くのファンを生み続ける伝説的作品

 暴走族“魔墓呂死”の特攻隊長・仁は、「市民に愛される暴走族」を目指す同輩や自分たちを取り込もうとする政治結社に反抗を試みた末、遂には右手を切断されてしまう。しかし、どん底に堕ちてなお抗うことをやめない彼は、バトルスーツに身を包み、幻の街サンダーロードで最後の決戦に挑むのだった!

 (1980年、日本、上映時間:98分)

キャスト&スタッフ

 製作:ダイナマイトプロ / 小林紘(上板東映) / 秋田光彦(狂映舎)
 監督:石井聰亙
 脚本:石井聰亙 / 平柳益実 / 秋田光彦
 撮影:笠松則通
 音楽:泉谷しげる / パンタ&ハル / THE MODS
 出演:山田辰夫 / 小島正資 / 中島陽典 / 劇団GAYA / 南条弘二 / 小林稔侍

予告編

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オフィシャル・サイト(外部サイト)

 transformer.co.jp/m/ctr

公開表記

 配給:トランスフォーマー
 8月22日(金) シネマート新宿ほか全国順次復活上映!

(オフィシャル素材提供)

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