
映画『LOST LAND/ロストランド』が、ヴェネチア国際映画祭でワールドプレミア上映された。

第82 回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ・コンペティションに選出された藤元明緒監督の最新作『LOST LAND/ロストランド』のワールドプレミア上映が現地時間9⽉1⽇に⾏われ、参加した藤元監督をはじめ制作チームが熱烈な歓迎を受けた。同作は、世界で最も迫害されている⺠族の⼀つといわれるロヒンギャの⼈々の証⾔をもとに紡がれた物語。無国籍の幼い姉弟が家族との再会を願い、いくつもの国境を命がけで越えていく旅路を描いている。

世界で初めてロヒンギャ語で制作された⻑編映画である『LOST LAND/ロストランド』は現地でも注⽬度が⾼く、1500席キャパの会場は満員。上映終了後には⼤勢の観客によるスタンディングオベーションが巻き起こり、会場のSala Darsenaは熱気に包まれた。


⽇本、フランス、マレーシア、ドイツの国際共同製作で完成した本作を代表して、藤元明緒監督、プロデューサーの渡邉⼀孝、ロヒンギャ側の共同プロデューサーであるスジャウディン・カリムディンが上映終了後の舞台挨拶に登壇した。観客との質疑応答で藤元監督は制作のきっかけについて「10年以上ミャンマーにかかわって、ロヒンギャたちのことはずっと気になっていたが、現地で彼らのことを語ることにはタブーな空気があり、⾃分の⽴場を考えて沈黙していた。その罪悪感がきっかけとなった。そして、映画作りを通して彼らと友情を築きたいと思った」と語った。また、渡邉プロデューサーは「この映画は、⽇本やマレーシアのクルー、そして、アジアとヨーロッパにまたがる4ヵ国のプロデューサーなど、さまざまな⼈種や⾔語を持つ⼈々が集まって作られた。企画への共感を持ったインディペンデントな映画作りの精神を持つフィルム・メーカーたちの⼒が結集された結果であることも付け加えたい」と話し、さらにスジャウディン・カリムディンは、この映画への想いについて「ここに来ることができて嬉しい。この企画を聞いたときに⾃分も関わりたいと思った。これは⾃分たちの話だと思ったし、このフィルムは現在も起こっていること。絶望的な状況ではあるが、監督は映画の中でたくさんの希望を⾒せた。たくさんの声なき⼈々のために、どうか彼らの声を届けて欲しい」と語った。

また、スジャウディン・カリムディンは、この映画への想いについて「ここに来ることができて嬉しい。この企画を聞いたときに⾃分も関わりたいと思った。これは⾃分たちの話だと思ったし、このフィルムは現在も起こっていること。絶望的な状況ではあるが、監督は映画の中でたくさんの希望を⾒せた。たくさんの声なき⼈々のために、どうか彼らの声を届けて欲しい」と語った。

ワールドプレミア終了後、世界三⼤映画祭であるヴェネチアに参加した感想として、藤元監督は「体感したことのない熱量が会場に充満していて、映画がしっかりと届いたことを実感しています。本当は主演の⼦どもたちなどロヒンギャの出演者とも⼀緒にこの⽇を迎えたかったが、彼らには市⺠権も国籍も今はなく、パスポートも取れないので、海外に来ることは出来ない。いつか皆さんと⼀緒に、ふたりも映画を観ることが出来ればと思う」と話した。
9⽉6⽇、映画祭最終⽇に発表される各賞受賞への期待が⾼まる。
藤元明緒(監督)
平時とは程遠いこの時代に、自分たちにどんな映画を作れるのか、映画に何ができるのだろうか。悩み続けた先に、この作品が生まれました。
映画の力を信じて支えてくださった方々のおかげで、本作を世界にむけてお披露目できることを嬉しく思います。そして何よりも、出演してくれた人たちの願いが、どうか多くの人の心に届きますように。

プロフィール
1988年、大阪府生まれ。ビジュアルアーツ専門学校大阪で映画制作を学ぶ。在日ミャンマー人家族を描く初長編『僕の帰る場所』(2018年)が第30回東京国際映画祭アジアの未来部門 作品賞&国際交流基金アジアセンター特別賞を受賞。2021年、ベトナム人技能実習生を描く長編第二作『海辺の彼女たち』(日本ベトナム国際共同製作)を公開。同作品はPFF第3回「大島渚賞」、2021年度「新藤兼人賞」金賞、第13回TAMA映画賞最優秀新進監督賞、第31回日本映画批評家大賞・新人監督賞などを受賞。主にミャンマーなどアジアを舞台に合作映画を制作し続けている。キシコから来日、舞台挨拶も決定した。
キャスト&スタッフ
脚本・監督・編集:藤元明緒
出演:ムハマド・
ショフィック・リア・フッディン、ソミーラ・リア・フッディン 他 撮影監督:北川喜雄
音楽:エルンスト・ライジハー
エグゼクティブプロデューサー:國實瑞惠、安川正吾
プロデューサー:渡邉一孝
共同プロデューサー:アンジェル・デ・ロルム、スジャウディン・カリムディン、エリス・シック クリスチャン・ジルカ
コンサルティング・プロデューサー: エリック・ニアリ
企画・制作:E.x.N
製作:E.x.N、鈍牛倶楽部、キネマトワーズ
共同製作:PANORAMA Films、Elom Initiatives、Cinemata、Scarlet Visions
特別協力:シネリック・クリエイティブ
(原題:HARÀ WATAN|英題:LOST LAND、2025年、日本=フランス=マレーシア=ドイツ、上映時間:99分)
公開表記
配給:キノフィルムズ
2026年 春公開
(オフィシャル素材提供)