
登壇者:池松壮亮
MC:奥浜レイラ
『バード ここから羽ばたく』の公開に先駆け、9月1日(月)に新宿ピカデリーにて俳優の池松壮亮をゲストに、奥浜レイラを司会に迎えて、先行上映会が開催された。
『バード ここから羽ばたく』は映画の到達点で、完璧な形
昨年のカンヌ国際映画祭での上映時の反響を聞き、本作に興味を持ったという池松。その後にサン・セバスティアン国際映画祭で鑑賞する機会を得たそうで「英語字幕で観たけれど、それにしても素晴らしいと思いました。アンドレア・アーノルド監督を知らなかったのが恥ずかしいくらい、というかなぜ過去作が正式に日本公開されていないのか!?と思った。本作を機に過去作全てを拝見しましたが、凄い映画ばかりで素晴らしい監督。特に本作は現代ならではの映画の到達点で、完璧な形を見せられました」と絶賛した。
そもそも池松は、出演者の一人であるフランツ・ロゴフスキに前々から注目していたという。「この人が出ている映画は絶対に観るという人。簡単に言えば“推し”です。観るたびに驚くほど良くて、数年前から要注目人物です」と愛を込めて話した。
本作のアーノルド監督の演出術について池松は「子ども時代の無垢な瞬間を切り取るのが素晴らしい。カメラの前での無防備な姿を見ると、脚本上のものを強制的にやらせるということを極力排除しているのではないか。日本では演じる=アクションとして捉われがちだけれど、芝居の基本はリアクション。この映画は子どもたちのリアクションで物語を立ち上げる方法でやっていると思う」と分析した。

アーノルド監督は本作の撮影時「カット」とは言わず「ありがとう」と言ってシーンの撮影を終わらせていたという。これを知った池松は「それいいですね。明日から自分もやろうかな」と回答。驚いた司会の奥浜から監督する予定があるのか聞かれると「ないです、冗談です」と笑いつつ、「日本とは違って海外ではスタートの前後を地続きにすることで、芝居のスイッチを入れないということが一般的になりつつあるそうです」と解説した。
さらに池松は独特なエンドクレジットに触れて「エンドロールに役名や職種が明記されていないスタッフロールを初めて見た。そこに自分の映画に対するアーノルド監督の特別な眼差しが見える。これは我々の物語であるということがバシッと伝わってくる」と細部に渡るこだわりに唸っていた。
また池松は劇中のカエルが出て来る場面に触れて「僕はカエルが苦手で、カエルが出て来る場面は目を瞑りました。ちなみに監督は違いますが『マグノリア』のラストシーンにもカエルが大量に出て来て、僕としては好きな映画なのに同時にトラウマ映画にもなりました」と意外な弱点を告白していた。
アーノルド監督の代表作である『アメリカン・ハニー』の緊急上映も決定。日本での再評価の兆しに池松は「アーノルド監督としては珍しく『アメリカン・ハニー』はアメリカを舞台にした見事な構成の映画です。全作品に愛情と痛みが共通していて、過去作全部観た後に『バード ここから羽ばたく』を再見すると、完璧な形でキャリアの到達点にあると思わされる。アーノルド監督の作品は全部繋がっているし、1作1作向き合っているテーマも違う。監督作の数も多くはないので観やすいはずです」とおススメしていた。
北米配給はA24!アンドレア・アーノルド監督作『アメリカン・ハニー』(16)公開緊急決定!
“ここではないどこか”を求めて、刹那な旅を続けるキャラバンに飛び込んだ少女の姿を追いかけた珠玉のロード・ムービー。北米配給は今もっとも勢いのある映画スタジオA24。雑誌販売をしながら旅する若者たちの記事に着想を得た英国人のアーノルドは、実際にアメリカにおもむき、現地で出会った若者たちをスカウトしてまわった。主演にはフロリダのビーチで見出された演技未経験のサッシャ・レインを大抜擢。野生動物を思わせる彼女の佇まいと詩情に満ちたドキュメンタリータッチの映像美が、目が離せない不安定さと、かけがえのない純粋さを立ち上らせる。第69回カンヌ国際映画祭に出品され、長編4作目にしてアーノルドに3度目の審査員賞をもたらした。
山中瑶子監督は「実際にアメリカ各地を旅するかのように撮影し作り上げた“奇跡”のような映画」とコメントを寄せ、劇場で販売中の「アンドレア・アーノルド監督セレクション」のパンフレットに「スターはいい子」と題するコラムを寄稿している。
『アメリカン・ハニー』

【STORY】
貧しい地元でゴミを漁っていた18歳のスターは、スーパーマーケットで出会った男ジェイクに誘われ、バンに乗って旅する若者たちのキャラバンに参加する。彼らは雑誌の定期購読のセールスを生業にし、アメリカ中を周りながら毎夜パーティーのノリで浮かれ騒ぐ日々を過ごしていた。ジェイクに惹かれるスターだったが、次第に苦い現実が見えてくる。



出演:サッシャ・レイン、ライリー・キーオ、シャイア・ラブーフ
(原題:American Honey、2016年、イギリス・アメリカ、上映時間:163分)
提供:ニューセレクト
配給:アルバトロス・フィルム
公式サイト:arnold-film.com
「アンドレア・アーノルド監督セレクション」(『ワザリング・ハイツ ~嵐が丘~』『COW/牛』公開中)内で 9月6日(土)より、シアター・イメージフォーラム他にて全国順次公開。
『バード ここから羽ばたく』公開表記
(オフィシャル素材提供)