
登壇者:マルタ・カルシ
9月26日(金)より角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショー中の、2021年のショパン国際ピアノコンクールの舞台裏を追ったドキュメンタリー『ピアノフォルテ』。本日の公開初日、ショパン・コンクール通訳者のマルタ・カルシさんによるトークイベントが角川シネマ有楽町にて開催された。
本作が撮影された2021年ショパン・コンクールのバックステージにいたというカルシさん。「出番が終わり、ステージをおりたピアニストたちはすぐ取材に応じなければならないので、終わったばかりの、まだ興奮が冷めやらない日本人ピアニストたちの通訳をしました。映画の撮影が行われていることも知っていました。テレビやラジオ用のカメラなど、他にもカメラがたくさん会場に入っているのですが、ヤクブ・ピョンテク監督たち映画のクルーは誰の邪魔にもならないよう、静かに動いていて、誰も入れないところでも撮影していたので、どんな映画になるのかとても楽しみにしていました。沢田蒼梧さんも映画用の取材を受け、私が通訳を担当したものの、本編には収録されていなかったのは少し残念でしたが、コンテスタントたちがコンクールへ向けて準備している様子も描かれていますし、彼らの性格が、演奏や表現にどのように反映されているかよく分かります。皆と(コンクール開催期間中の)3週間ずっと一緒にいたので、とても感動しました」と当時の思い出と映画の感想をコメント。
「ショパン・コンクールは1927年、イェジ・ジュラヴレフというピアニストがショパンの遺産を守り、彼の音楽を次の世代に伝えるためにつくられました。このコンクールの独特なところは、ショパンの作品だけが課題曲になっているという点です。コンテスタントたちは、コンクールに応募するときにどの楽曲を弾くか決めなくてはなりません。最終本選では協奏曲が多いですが、2025年は『幻想ポロネーズ』が入るなど、年によって変更がある場合もあります。また、コンクールで使用されるピアノはこれまではスタインウェイ・アンド・サンズ、ヤマハ、カワイ、ファツィオリだけでしたが、今年から新たなメーカー、ベヒシュタインが追加されました。選択肢が増え、コンテスタントたちは選ぶのがますます難しくなるかもしれません」とショパン・コンクールについてや、今年のポイントについても語った。

「2021年のコンクールでは、角野隼斗さんが「自分が弾く、というよりはショパンの音楽があるところに自分が行く、という感覚。自分が無になるような感覚で音楽に集中しました」とおっしゃっていたことや、反田恭平さんは、「ステージに入るまで、自分ができることは全てやりました」とおっしゃっていたことなど印象深いです」と日本人ピアニストのエピソードも。さらに「演奏は10時に始まり、夜はだいたい8時か9時くらいまで。その間、ずっと審査が行われます。ファイナルが終わって優勝者を決めるときは夜の11時くらいに結果が出ると思ってコンテスタントたちやメディアがホールに集まってきましたが、結局、発表されたのは夜中の2時くらいでした。審査員の方は集中力だけではなく体力も必要」と審査の大変さについても言及した。
ショパン国際ピアノ・コンクールは、今年も10月2日(木)の開幕式、10月3日(金)からの第一次予選から全てYouTubeで視聴可能。ドキュメンタリー『ピアノフォルテ』もあわせてお楽しみいただきたい。
マルタ・カルシ
ワルシャワ大学日本学科卒業後、ポーランド文化・国家遺産省のプロジェクトマネージャーを経て、ワルシャワ交響楽団ツアーマネージメントをしていた。2012年からはポーランド広報文化センターの副所長として多くのポーランド音楽イベントにも携わる。現在は、日本におけるポーランド音楽イベントの主催や、ショパン国際ピアノコンクールでは通訳をしている。
公開表記
配給:コピアポア・フィルム
9月26日(金)より、角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA他全国ロードショー