
登壇者:岸井ゆきの、宮沢氷魚、天野千尋監督
岸井ゆきの、宮沢氷魚がW主演を務め、第32回東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門でも上映された映画『ミセス・ノイズィ』(20)でその人間の機微を絶妙に描き、NYジャパンカッツ観客賞、日本映画批評家大賞脚本賞を受賞するなど監督としての手腕が注目されている天野千尋の最新作『佐藤さんと佐藤さん』が、11月28日(金)に公開する。また本作は第38回東京国際映画祭ウィメンズ・エンパワーメント部門公式出品作品として選ばれている。
公開に先駆け本日10月30日(木)に東京国際映画祭での上映と完成披露舞台挨拶が実施され、岸井ゆきの、宮沢氷魚、天野千尋監督が登壇した。舞台挨拶では、初共演でのお互いの印象や天野監督から見ての二人の魅力や今回ウィメンズ・エンパワーメント部門に公式出品された心境など語った。
この日の映画祭での上映が一般の観客への初めてのお披露目となり、天野監督は満員の観客を前に「緊張しています……!」と語ったが、岸井は「とても緊張しているんですけど、同時にすごく嬉しい気持ちでいっぱいです。きっと面白いと思います!」と出来栄えに自信をのぞかせ「たぶん、この映画は自分のことを話したくなったり、自分のことを振り返ってみて『こんなことあったな』って思える映画になっていると思うので、帰り道に誰かと話したいなっていう気持ちになっていただければと思っています」と語る。
宮沢も映画のお披露目を迎え「1年以上前に撮影したんですけど。ようやく今日、皆様に観ていただけるということで、ようやくスタートラインに立てたのかなという気持ちがすごくあって、今日を迎えるのが楽しみでした」と晴れ晴れとした表情を見せる。
同じ“佐藤”の名字を持つサチとタモツの15年の軌跡を描く本作だが、岸井と宮沢は今回が初共演。お互いの印象について岸井は「初共演だったんですけど、本読みで初めてお会いしたときから『絶対会ったことあるよね?』みたいな印象があって……。(会ったことは)ないんですけど(笑)。それくらい、驚きのない空気感というか本当に自然にお互いのことを楽に話せるような関係性がすぐにできたので、お芝居に没入しやすかったです」とふり返る。さらに岸井は、宮沢の人間性について「本当に優しくて穏やかなので、(現場によっては)ピリつく現場も時にはあるんですけど、そういうことは起こらないだろうなっていう安心感もありました。本当に穏やかな時間を一緒に過ごさせていただきました」と語り、宮沢は「ちょっと恥ずかしいです」と照れくさそうに笑みを浮かべる。

宮沢も「クランクインする前から、ゆきのちゃんの作品はたくさん観てきて、本当に魅力的な女優さんだなというふうに思っていました。共通の知り合いがいて、『ゆきのちゃんは本当に素晴らしいよ。本当に優しくて魅力的なんだよ』という話は聞いていたんです。本読みの日に初めてお会いして、僕の想像していたゆきのちゃんよりも遥かに優しくて、太陽のような存在でした」と絶賛する。

物語の魅力について、岸井が「約2時間の脚本で、この15年をギュッと詰め込めるのってすごいことだと思うんですよね。その物語が、決して大雑把ではなく、すごく些細なことを大切に描いていて、私は『この世界に入りたい』と思いました。実生活では体験したことのない夫婦生活というものをもしかしたらここで垣間見ることができるかもしれないと思いましたし、演じるのが楽しみになった脚本でした」と語れば、宮沢も「とにかく脚本が丁寧で、15年のスパンを描いているので、ピックアップする部分は本当にごくわずかなんですけど、それがきれいに線を結ぶように繋がっていたんです。僕は読んでいて、描かれていない空白の時間、そして2人がその先に歩む人生というものがどういうものなのか、すごく興味がわいてきて『この世界の一員になりたい』、『タモツという人物を演じたい』という思いがふつふつと高まりました」と語り、脚本を読んだ段階から、本作に強く惹きつけられたと明かす。
そんな2人のキャスティングについて、天野監督は「私も2人の作品をたくさん観てきて、2人が好きでオファーしたんですが、実際にサチとタモツを演じてもらったら想像以上に良くてよかったです!」と手放しで称賛する。岸井について、天野監督は「本当にお芝居の密度が濃くて、一個も嘘やごまかしがない芝居をメチャクチャ力強くやってくれるんです。『サチってこんなに力強い人だったんだ!』と改めて知るみたいなことがたくさんありました。映画を観ていただくと分かりますが、サチはデリカシーがないところや、突っ走っちゃうところがあって(笑)、下手したら嫌なヤツに見えかねないんですけど、岸井さんはチャーミングで愛嬌があるので、サチを許せてしまうキャラクターにしてくれました」と岸井の表現力を称える。

一方、宮沢に関しては「クールな役をやられている姿をよく拝見していたんですけど、(本作のタモツは)見ていただけたら分かるんですけど、ちょっと情けないんですね。こういう情けない役を氷魚くんに演じてもらったら、実は面白いんじゃないか?って目論んでいて、実際にタモツを見たら、本当に面白いし、このクールなビジュアルだからこそ、情けなさが愛おしく見えて、脚本になかったタモツ像が見えてきました」とギャップによる魅力を強調。改めて「2人に頼んだことですごくキャラクターが膨らんだなっていう気がしています」と主演の2人への感謝を口にした。
なお、本作は東京国際映画祭において、昨年より新設された「ウィメンズ・エンパワーメント」部門での上映となるが、天野監督は「女性を応援するということで、すごく大切なムーブメントだと思いますし、いまの時代の必要だと思うので、(選出されて)光栄です」と同部門での上映の喜びを口にしつつ「複雑な気持ちもあって、あえてウィメンズ・エンパワーメント部門をつくって女性を応援しようという世の中の状態なんだなと感じるので、こういう状況がなるべく早く変わっていくといいなという気持ちも同時にあります」と思いを語る。
岸井も、自身が女性の監督やスタッフと作品づくりをする機会が多いことに触れつつ「みんな、すごくたくましいんですが、“ウィメンズ・パワー”というより、その人“個”のパワーがすごく強いなと思っていて、ウィメンズというところをあまり気にしてはいなかったんです」と性別ではなく個人として相手と向き合うことの大切さを語り、自身についても「たくましく生きています(笑)! それがこの映画を通じても見えてくると思いますし、(同部門に)選出されたことは嬉しいですし、背中を押すような作品だと思いますがが、男女がというよりパワーそのものを見出していただけたらと思います」と呼びかける。
宮沢は、映画の現場でも女性スタッフが増えていることに言及。本作では、妻のサチが弁護士として外で働き、タモツが家で育児をする姿も描かれるが「僕たちはそれが正解だと伝えたいわけではなく、夫婦やパートナー、恋人、家族がそれぞれの正解、幸せを見つめるための形を探し出してほしいので、そういう意味で、この部門にノミネートされたことはとても嬉しいです」と作品に絡めて語った。
公開表記
配給:ポニーキャニオン
2025年11月28日 全国ロードショー!
(オフィシャル素材提供)








