
登壇者:満島ひかり、中野量太監督
『湯を沸かすほどの熱い愛』『浅田家!』で知られる中野量太監督待望の新作映画『兄を持ち運べるサイズに』が11月28日より全国公開中!
公開4週目に監督からの熱望で実現したという、満島ひかりと中野監督のティーチイン上映会。TOHOシネマズ日比谷の劇場には、映画を観終えたばかりで興奮冷めやらぬ満席のお客様が集まり、二人のレアな舞台挨拶の始まりを見守った。
最初の挨拶で満島は、「ティーチインする機会がなかなかないのでいろいろお話できたらなと思います! よろしくお願いいたします」とコメント。続いて、中野監督が、「公開4週目を迎えて、こうして満席のお客様の前に立てるのは嬉しいです。そして、満島さんはティーチインが多分好きだと思うので、二人でティーチインするのは念願でした」と語りかけると、満島は、「好きだと思います! 一人ひとりとお話したいくらい」と答えていた。
ティーチインのトップバッターは、なんと中野監督自身。「現場で集中力がすごいなと思っていて、役づくりへのアプローチの仕方を教えてほしい」と満島に質問すると、満島は、「最近いろいろな人と話している中で、人と違うのかなと思うのは、解釈が深くなるので、脚本は結末から登場人物全員の最後のシーン・最後の台詞からさらっと読むところです」と、独自の脚本の読み解き方を明かす。さらに、「そのあと頭からじっくりと、本当に自分がその場にいるような気持ちでしっかりと読みます。そのあとはほぼ読まずに、台本から感じたなにかを、撮影までになじませていく作業になります。例えば、今回は、多賀城に着いた後は、街をたくさん歩いてこんなところに看板があるのかとか感じながらなじませていきます」と答え、そのアプローチに中野監督も驚いた様子を見せた。

その後、お客様からのティーチインがはじまり、本作をこの日初めて見た男性から、「良一と一緒に骨を拾うシーンと、良一に一緒に暮らそうというシーンが好きだったが、どんな気持ちで演じましたか?」と質問が飛ぶと満島は、「良一君とのシーンはどれもとても難しくて、特に骨を拾うのは日本独特の文化だそうで、世界のいろいろな人から不思議だと質問を受けました」と振り返る。さらに、「(骨を拾う際に良一の箸の持ち方を直すシーンにおいて)監督も箸の持ち方にこだわっていて、自分が育てきれなかった子どもに箸の持ち方を教えていいのかどうかの葛藤が一瞬あるだろうなと思いつつ、良一が一番好きだったはずのお父さんの最期だからちゃんと教えなきゃとも思ったり。でもあの場面は、味元くん(良一役)が良一そのままで立ってくれていた場面なので味元君と作り上げました」と、その時の心境を明かした。

続けて、「良一にもう一度一緒に暮らそうというシーンは、私は台本を全部ゼロにして現場に臨むタイプで、泣こうと思っていたわけでもなかったのですが、彼の顔を見ているだけで涙があふれてきてしまって。実は、味元君は泣くシーンではなかったけれど、味元君も泣いてしまって」と答えると、中野監督は、「あのシーンの集中力はすごかったです。なのであんまりテストもしなくて」と振り返り、それに対して満島は、「私は23歳ぐらいから母親の役をやってきて、子どもたちはいつもピュアにまっすぐ向かってくるので、いつも助けられています」と答えた。
次の質問は満島にあこがれてお芝居をしているという女性から、「満島さんがお芝居をするうえで、一番大切にしているものを教えてください」と質問。「ありがとう!」と返した満島は、「役者も映画もお芝居も大好きですが、明日違う仕事になってしまっても仕方ないかという仕事でもあるので、そのあたりの覚悟は小さいころから持っていて、その時に後悔したくないので『昨日まで楽しかったな』と思える役者でいたいと思っています。11歳で初めて映画の現場に足を踏み入れた時に、こんな生き生きした大人たちがいるんだと。エンタメに触れることで誰かの生活が一歩でも1ミリでも動くことにかけている人たちがこんなにもいるということに毎回感動しています。ピュアでいること、でしょうか。ですので、現場でたくさん水を飲んで体の中の水分をきれいにして、人の声を聞こえなくならないようにしようとも思ってます。でも難しいな……」と、言葉を探す満島に、中野監督が、「僕は満島さんはお芝居の力を疑っていないと感じていました。こうすることがいい、と信じている強さがある」と答えると、満島も、「目の前にいる人に感動したり、スタッフに感動したりすることを毎日見つけると、この人たちと一緒にやってるから大丈夫でしょ、と思えてくる。あとは、見た人が感じたことないことをつつかれて泣いてしまったり、『救われている?』と感じたり、本人が知らない感情を引き出したいとも思ってます」と、俳優としての思いを語った。

お客様からの質問は続き、「本作での印象的だったシーンを」聞かれた満島は、「現場でも見ていて思ったのですが、スクリーンで観た柴咲さんやオダギリさんが『映画俳優』として存在していて、特にオダギリさんが理子に無防備な笑顔でカメラの前に、あんな優しい顔で立てるってすごいなと。映画への信頼感が尋常ではないなと。本当に映画が好きなんだなと感じました」と称賛。柴咲についても、「みんなの前でトライ&エラーができることや現場にとにかく自然にいるその立ち振る舞いもすごいなと思いましたし、すっぴんで鏡の前に立つシーンも、ありのままで立たれていてお客様みんなに柴咲コウという人生を見せている気がして、そんな二人の姿に感動して、映画に関わるうえでのとても大切なものを見せてくださったと感じていました」と語った。
オダギリとの現場でのエピソードについて、「一緒にお芝居していると似ているところがあるのかラクチンで、(2作目となる)現場で逢うとホッとする俳優さんです。『いい役者さんとお芝居できるぞ』という嬉しさがあります」と満島が答えると、中野監督が、「ガウン姿のオダギリさんが駅で走るシーンを撮影していたときに、休みだった満島さんが……」と話を振ると、満島が「仙台に牛タン食べに行っていて、帰ってきたらオダギリさんがホームでガウンを着て撮影していたんです」と撮影中の驚きのエピソードを明かした。お客様からは絶えず多く質問の手が上がる、作品の雰囲気が伝わるようなティーチインは、予定時間を少し超えるほど盛り上がりをみせた。
最後の挨拶で満島は、「皆さんのお話をもっと聞きたかったですが、本当に良い機会いただきました。現場にいる人が大好きで、映画への愛情を深まってきたなというのを感じていて。老若男女でいろいろな感性で映画を作れる現場にいるのはラッキーだと感じていて、今回は特にこれまでにないくらい、レビューをしこたま読んでいて、感想はさまざまで、その中にいくつか『満島さんの今までの役の中で1番好き』という感想もあり、自分が映画に対する緊張がほぐれてきた時期に、柴咲さんやオダギリさんたちをはじめとした先輩や中野監督と出会えてよかったなと思っています。ありがとうございました」と話し、中野監督が、「いいタイミングで3人がそろってくれたのは本当に幸せな監督でした。現場もこれまでの自分の現場の中で一番コミュニケーションがとれていたのではと思います。作品にも自信を持っていて、いろいろな人の心に届くと思っているので、もっと広がってくれるといいなと思います」と締めくくり、大きな拍手の中、ティーチイン上映会は終了した。
公開表記
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
全国公開中






