記者会見

『エンジェル』フランソワ・オゾン監督 来日記者会見

©2006 – Fidelite Films – Headforce 2 – Scope Pictures – FOZ – Virtual films – Wild Bunch – France 2 Cinema

 英国の女流作家エリザベス・テイラーが1900年代の初頭に生きた1人の女性の生き様を描いた「エンジェル」が、25億円を投じ、女性映画の名手、フランソワ・オゾン監督の手によって美しい映像で映画化された。監督にとってフランス語ではなく、初めて英語を使用した初の時代劇作品となった。監督は『スイミング・プール』以来3年ぶりの来日。

まずはご挨拶からお願いします。

 こんにちは。この3年の間、僕は僕なりにたくさんの仕事をしてきました。そして、大切な『エンジェル』と共に日本に戻ってこれたことを嬉しく思います。

フランス語ではなく英語で作品を作ることなった理由を教えてください。

 この作品は英国の女流作家エリザベス・テイラーの原作で、モデルになったマリー・コレルという女性が実在しました。彼女はとても不思議な人で、私は彼女に恋をしたような気持ちになりました。ヴィクトリア朝、エドワード調を生かした舞台背景がフランスでは見つからなかったので、イギリスを舞台に英語で撮ることにしたのです。

エンジェルを演じたロモーラ・ガライさんについて教えてください。

 16歳から40歳位までを演じ分ける女優を見つけるのは大変でした。たくさんの女優をオーディションしましたが、ロモーラは特別でした。いろいろな表情を持っているのです。とても美しく、平凡に見える部分もあって、チャーミングです。生意気そうなところもあって、エキセントリックに見える部分もあります。エンジェルが持っている長所、短所すべてを持ち合わせていました。彼女は見事にエンジェルを体現してくれました。
 多くの女優は脚本を読んで、エンジェルという人物に対して「こんな女性は変だ」とジャッジをしてしまうのですが、ロモーラはエンジェルの性格をすぐに把握していました。
 「エンジェルは女優なんだよ、自分自身を演じているだけなんだ」と私が話すと、ロモーラはすぐに理解したようでした。彼女との仕事は素晴らしくうまくいきました。
 イギリスの俳優たちと一緒の仕事は初めてでしたが、彼らはすべてのセリフを頭に入れてから現場に臨みます。本当にプロフェッショナルで、一緒の仕事はとても楽しかった。

本作は1950年代を舞台に描かれていますが、その時代への思いを聞かせてください。

 1950年代のハリウッド映画はとても好きです。第2次世界大戦でヨーロッパにいずらくなった監督たちがハリウッドに移民して活躍していた時代です。娯楽映画のように見えながらも深いテーマを持ち、きちんとした世界観も持っています。そして、テクニカラーを使用して鮮やかな映像を見せていました。エンジェルは夢の世界に生きている人物なので、ピッタリでした。

衣装へのこだわりや楽しまれた点はありますか?

 衣装にはこだわりがありました。エンジェルの衣装で彼女の人生、栄光と凋落が現せると思いました。栄光の頂点にいる時エンジェルは赤いドレスを着ていますが、喪服を着て、最後はボロ服を着るようになります。そんな部分がとても面白かったですね。エンジェルはエキセントリックな人で、夢の世界に生きていましたから時代に合わせる必要はなく、自由に表現する事が出来て楽しめました。

あなたが女性を描くときにこだわる部分は??

 男性のほうが女性を客観的に見ることができるので、描きやすいというメリットがあります。カメラの後に隠れながら、彼女と距離をおきながら、自分の持っている部分を見せる、自己投影する、というやり方が可能です。

『スイミング・プール』で描かれたような作家と編集者の関係について映画監督としてどのように思われますか??

 『エンジェル』の原作は『スイミング・プール』を撮る前に読んだのですが、コスチューム・ドラマということで僕には無理かなと思っていましたし、その頃『8人の女たち』を撮り終えたばかりで、次は軽い感じのものを撮りたいと思っていたので先に『スイミング・プール』を撮ることにしたのです。小説家と編集者の関係を描くことでアーティストがどう生きているのかを描いてみようと思いました。プロデューサーと監督の関係に重ね合わせている部分もあります」

エンジェルとノラとエスメのトライアングル・ラブは原作にあったのでしょうか? 原作と違う点はありますか?

 3人の出会い方は原作とは少し違っています。エスメは才能のない画家になっていましたが、才能はあったけれど当時は認められてはいないが、死後に認められる、エンジェルは生きている間は成功を堪能するが、死後は誰からも見向きもされないという設定にし、二人のアーティストの生き方の対比を見せました。アーティストにとってどちらの道が幸せなのかということを語りたかった。アーティストは成功するとうぬぼれに陥り、自分に都合のいいものだけを周りにおいて暮すという生き方をしがちですが、そうなってはいけないのです。アーティストは常に進化していかなければいけない、エンジェルのような生き方をしてはいけない、ということを言いたかったのです。

 この後、花束を持って夏木マリが登場。オゾン監督と一緒に仕事がしたいと熱烈アピール。


 オゾン監督の印象を「若くて、ナイスな感じ。それでいて、大人の女性のことを良く分かって描いていらっしゃいます」とコメント。もしオゾン監督の映画に出れるのなら「人生をリタイアしていてちょっと記憶がなくなっているような女をいい男を支えている……そんな役をやりたい」と語った。
 監督は夏木の印象を「とてもエレガントで美しい。マリさんはフランス人男性と結婚できますね」と監督が話すと、「やっぱり~? これからはフランス人のように愛を優先に生きたい!」と夏木。監督は「返事の仕様がないですね……」と苦笑い。

 女性を魅惑的に捉えて描く天才、フランソワ・オゾンの最新作『エンジェル』は究極の女の夢の世界をおしゃれに、皮肉をこめて見事に描いていた。若くして成功を収めたアーティストは自分の世界に閉じこもってしまいがちだが、それではいけないんだ、ということを自分への自戒を込めて作った作品だと語ったオゾン監督の今後の作品がますます楽しみになった。

(取材・文・写真:福住佐知子)

公開表記

 提供:ギャガ・コミュニケーションズ
 2007年10月20日(土)より、丸の内プラゼールほか全国松竹・東急系にてロードショー

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