作品紹介

『フォンターナ広場―イタリアの陰謀』

©2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

イントロダクション

 60年代後半。東西冷戦の時代。イタリアでは、他の国と同様に学生運動の波が高まり、それが労働者にも広がっていた。〈熱い秋〉と呼ばれたその季節を終わらせたのは、未曾有の爆破事件だった。1969年12月12日16時37分。ミラノ。かの有名な大聖堂ドゥオモの裏にあるフォンターナ広場に面した全国農業銀行が爆破されたのだ。死者17人、負傷者88人。歴史的な惨劇。

 だがしかし、現在まで、この事件の犯人は一人として特定されていない。それはなぜなのか。事件を操ったのは誰だったのか。このイタリア最大の未解決事件に挑んだのは、『輝ける青春』で1966年から37年にわたるイタリア現代史をみずみずしい筆致で描いた名匠マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ監督。本作では、壮大なパズルを解くように真実をたぐりよせていく全編緊迫感に溢れる演出で観客を圧倒し、そして、同時に、巨大な力に翻弄されながらも真実を見いだそうとする人間の姿を描ききり、深い感銘を与えている。まさにジョルダーナならではの傑作だ。

 数十人に及ぶ登場人物の中で、中心となるのは、事件を捜査するカラブレージ警視と容疑者とされるアナキストのピネッリ。カラブレージはピネッリの取り調べにあたるが、彼が席を外した隙に、ピネッリが転落死を遂げる。自殺か、事故死か、殺人か。容疑者と刑事。対立する立場にはあるが、ある種、相手を信頼している二人の関係。それがカラブレージに捜査を続けさせ、やがて国家の関与が疑われる大きな闇へと彼を引き込んでいく。事件は40年以上前の出来事でありながら、イタリアを代表する俳優たちの肉体と声が、その時代を現代に甦らせる。事件に巻き込まれた者たちの、人間としての悩み、希望、絶望、信念が観客の心に伝わり、それによって、現代にも通じる巨大な力のグロテスクさを浮かび上がらせるのだ。

 演じるのは、カラブレージ警視にヴァレリオ・マスタンドレア、ピネッリにピエルフランチェスコ・ファヴィーノというまさに脂ののった実力派。ともに多数の映画賞にノミネートされ、ファヴィーノはこの年の俳優賞を独占した。また、二人の妻を演じる美しきラウラ・キアッティ、ミケーラ・チェスコンも見事な存在感を示す。そして、『エル・スール』などで知られる名優オメーロ・アントヌッティ、アルド・モーロその人が生き返ったかのようなファブリツィオ・ジフーニ、現代イタリア映画に欠かせないルイージ・ロ・カーショなど、俳優たちの〈オーケストレーション〉はまさに第一級の映画の醍醐味となっている。

©2012 Cattleya S.r.l. – Babe Films S.A.S

ストーリー

 1969年12月12日16時37分。ミラノ。大聖堂ドゥオモの裏側にあるフォンターナ広場に面した全国農業銀行が爆破される。死者17人、負傷者88人。

 国家を揺るがす未曾有の大事件である。左翼の関与を疑う捜査当局は、アナキストたちを次々に連行する。だが現場の指揮をとるカラブレージ警視は、アナキストのリーダー的存在であるピネッリの人間性を信頼し、今回の爆破が彼らの犯行だとは簡単には信じられなかった。そして、ある夜、アクシデントが起こる。ピネッリが、3日間の不法拘留の末、カラブレージが取調室を離れた隙に転落死を遂げてしまったのだ。自殺か、事故死か、殺人か。

 爆破事件の真相は? ピネッリの死の真相は? イタリア政府、情報局、軍警察、極右組織、ネオファシスト、共産活動家、アナキスト、さらにはNATO軍、CIAといった海外の組織も関与する闇が大きく広がり、カラブレージはしだいにその闇に近づいて行くのだった……。

原題:Romanzo di una strage、2012年、イタリア=フランス合作、上映時間:129分)

ギャラリー

スタッフ&キャスト

監督:マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ
原案・脚本:マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ、サンドロ・ペトラッリャ、ステファノ・ルッリ
出演:ヴァレリオ・マスタンドレア、ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、ミケーラ・チェスコン、ラウラ・キアッティ、ルイージ・ロ・カーショ、オメーロ・アントヌッティほか

オフィシャル・サイト

  www.moviola.jp/fontana/(外部サイト)

公開表記

ムヴィオラ
12/21(土)、シネマート新宿ほか全国順次公開

(オフィシャル素材提供)

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