インタビュー

『ファンファーレが鳴り響く』森田和樹監督 オフィシャル・インタビュー

©「ファンファーレが鳴り響く」製作委員会

 ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2020のオープニング作品『ファンファーレが鳴り響く』が、10月17日(土)より新宿K’s cinemaを皮切りに全国順次公開される。初長編『されど青春の端くれ』でゆうばり国際ファンタスティック映画祭 2019 にてグランプリ&シネガーアワードの二冠を受賞し、本作で商業映画デビューとなった森田和樹監督のオフィシャル・インタビューが到着した。

森田和樹監督

 2015年にニューシネマワークショップに入学し1年間映画を学ぶ。
 NCW 在籍時の実習作品「春を殺して」が新人監督映画祭短編部門・準グランプリや函館港イルミナシオン映画祭・実行委員会特別賞等の全国の多数映画祭に入選・受賞を果たす。
 初長編『されど青春の端くれ』でゆうばり国際ファンタスティック映画祭2019にてグランプリ&シネガーアワードの二冠を受賞。

「ニュースを見ては伝えたいことが出てきて、自身の欲をたくさん入れたのが今作です」とコメントされていましたが、具体的にどのようなニュースに触発されたんですか?

 過去のニュースを含めてなんですけれど、女子高生のコンクリート殺人もそうですし、酒鬼薔薇事件などの少年犯罪、最近で言えば、アキバの加藤だったり、座間の9人の殺人事件だったり、そういったもので、自分勝手な人たちがいっぱいいて、何も関係ない人たちが不幸になってしまうという不条理を、変えたいというよりも皮肉ってやろうという気持ちが強かったです。実際の事件を元にしたら、被害者の方がいるので、それはできないなと思い、自分の中でもしかしたら起こるんじゃないかと想像する事件を描きました。

笠松 将さん演じる明彦が吃音症で、川瀬陽太さん演じるお父さんからも理解されていないという設定のおかげで、明彦に同情しながら見ることができましたが、吃音症というアイデアはどこから出てきたんですか?

 僕自身は吃音症ではないんですけれど、病気で薬に生かされているというのがあって、病気を患い、治療し、資格を取って、就職面接をした時に、面接官に病気のことを話したら、「それだったら無理だね」と言われ、自分が社会的弱者だという自分の立ち位置に気づきました。吃音症の人が抱えているものとは違うかもしれないけれど、たまたま動画を見て、自分の中でリンクして感情移入しました。物語を作る時に、自分を投影したかったので、自分の病気を投影するよりも、吃音症の人の気持ちを投影したいと思いました。

昨年11月の撮影時のコメントで、「2年前に大病にかかり、今も毎日飲む13錠の薬に生かされている自分。」と書かれていました。今は薬は何錠飲んでいるんですか?

 今は減って10錠です。

祷キララさん演じる七尾光莉も、ただ単に他人の血をみたいというだけではなく、バックグラウンドがありました。それもニュースなどに触発されたのでしょうか?

 七尾の役には、酒鬼薔薇の事件だったり、アキバの無差別殺傷の事件の犯人を入れているんです。それらの事件のバックグラウンドを見ると、家庭環境に問題があったんです。七尾も、殺人欲求があるのは家庭環境だという設定にしました。

セリフで「ボニー&クライド」が触れられていましたが、インスピレーションの元になった映画はあるのでしょうか?

 『俺たちに明日はない』がすごく好きです。表現方法は違いますが、意識というか触発はされました。

脚本を書く上で注意した点はどこですか?

 自分のやりたいことをやろうという意思を通したことです。見え方を気にしたりというよりは、自分のしたいことを詰め込むことを意識しました。

笠松さんのキャスティング理由をお教えください。

 もともと一方的にいい役者さんだと思っていました。明彦のキャスティングでプロデューサーが挙げてくださった中に笠松君がいて、ご一緒したいと思いました。彼は彼なりに不安があったんですが、一緒に話した時に腑に落ちて、ぜひ一緒にやろうとなりました。

不安な部分とは?

 いつも演技をすれば話題になって、いい役者だと言われる笠松 将という役者が、森田和樹の作品に出て、「あの笠松 将ダメだよね」と言われることが、1番不安でした。明彦と笠松 将さんを並べた時に、正反対だと思ったんです。それは笠松君も思っていたみたいで、会った初っ端に、「僕で大丈夫ですか?」と一言言ってくれて、それを言ってくれたからこそ、ご自分のことを客観視しているから信頼できると思いました。違和感なく演じてくれるだろうという期待に変わりました。

笠松さんとご一緒していかがでしたか?

 アグレッシブでした。勢い、パワーがあるし、中心にいる人だと思いました。役のこと、映画のこと、自分の見え方も考えているから、一緒にやって刺激的でした。

祷さんのキャスティング理由をお教えください。

 もともと脚本を書いている時から当て書きというか、祷さんがやってくれたらいいなと思って書いていました。祷さんが12歳の時に出演した『Dressing Up』を見て、その雰囲気に引っ張られていますが、もっともっと成熟した感じになって、より不気味さがありました。

園 子温監督の『冷たい熱帯魚』を彷彿とさせるような死体をバラバラにするシーンもありましたが、『冷たい熱帯魚』で殺人鬼役だった黒沢あすかさんが、母性いっぱいの、主人公の過保護なお母さん役だったのが面白かったです。ご一緒していかがでしたか?

 魅力的な方でした。顔合わせをした時にちょっと話をしたんですけれど、黒沢さんはこの話に関するご自身の想いを伝える時に、すごく泣かれたんです。だから演じた時も過剰なまでの過保護なお母さんで、僕の中ではいいお母さん役をやってくださいました。映画で見てきた役者さんが自分の映画に出てくださり、感傷的になりました。

川瀬陽太さん演じるお父さんは、反対に厳格な役でしたが、撮影のエピソードなどはありますか?

 川瀬さんとは初日で初めましてで、役は川瀬さんの中で出来上がっていました。

木下ほうかさんも、ぴったりの役でしたね?

 木下さんはものすごい経歴なのに、黒沢さんも川瀬さんも大西さんもそうですが、心意気で参加してくださっていると思うんです。あれだけの自分の考えを持って来てくださるのは、すごく助かりました。二人との掛け合いをどうするかとなった時に、木下さんが「こうでこうでこうだよね。俺こうするからさ、こうしたほうがいいんじゃない?」と言ってくださいました。引き出しが多いんでしょうね。こういうシーンだったらこういうふうにしたほうが面白いんじゃないかというアイデアがありました。

ゾンビの歌はどのように振り付けなど考えていったんですか?

 『されど青春の端くれ』に出てくれた小山梨奈が、ダンスも上手くて、振り付けもできると言っていたので、お願いしました。

笠松さんと祷さんは実際は7歳違いですが、同い年に見えるように、何か工夫はしましたか?

 いや、全然僕は強制したことはないです。笠松君と祷さんがやってくれることに対して、僕は肯定するだけだったんで、二人が持っているもので近づけてくれたんだと思います。

七尾さんが笑う度にぞくっとしましたが、どこで笑うかなど決めことはあったんですか?

 なかったですけれど、祷さんが笑わなかったところで、「ここ、笑ってほしいんです」みたいなやりとりはありました。

本作で特に注目してもらいたい部分はありますか?

 何かをしでかしていく中で表情や気持ちの変化がきちんと見られるシーンがたくさんあるので、笠松君と祷さんが出ているシーンは面白いと思います。

webインタビューの読者の方にメッセージをお願いします。

 “青春スプラッター”ということで、ちょっと見にくい作品かもしれないですし、もしかしたら誰かを傷つけてしまう内容でもあるんですが、自分自身を投影して、自分が受けた社会的な弱さを感じ取って作った映画なので、刺さる人には刺さると思います。
 「枠にはまらない映画にしたい」という意識がもともとあります。突飛なことをしているわけではなく、「明彦がこう思うから、こういうシーン」というようにやっています。例えば突然のミュージカルも、今までかしこまった映画を見てきた人にとっては、すごく新鮮なものがあるのではないかと思います。歪だし、ゴツゴツしている部分もあって、違和感を感じる可能性もあると思うんですが、全編を通したら成立していたので、いろんなことが刺さっていくんじゃないかと思います。
 あと単純に、出ている人たちを見ていただきたいです。エネルギッシュで、みんな前を向いている役者さんたちばかりでした。

公開表記

 配給:渋谷プロダクション
 10月17日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開

(オフィシャル素材提供)

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