インタビュー

『ヒッチャー ニューマスター版』ロバート・ハーモン監督 オフィシャル・インタビュー

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 2021年1月8日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次公開となるルトガー・ハウアー出演のサイコ・スリラー『ヒッチャー ニューマスター版』について、ロバート・ハーモン監督のメールインタビューが実現した。

 2019年7月に75歳でこの世を去った名優ルトガー・ハウアーが、謎の殺人ヒッチハイカー役として怪演し話題となった映画『ヒッチャー』(86)が、『ヒッチャー ニューマスター版』となって、公開から35年を迎える2021年1月8日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次公開となる。HDリマスター化によって鮮やかによみがえった本素材での上映はこの度が世界初となる。

 本作は、殺人ヒッチハイカーを乗せたばかりに、その後逃げても逃げてもひたすら狙われ続ける青年の恐怖と絶望を描き、アメリカ全土に“恐怖のヒッチハイカー”というトラウマを植え付けたサイコ・スリラー。シンプルなストーリーながら、全編に異様な緊張感を持続させることに成功、と同時にド派手なアクションの連続で、観る者に恐怖と興奮を与える傑作として、今もなお多くの映画ファンに愛されている。

 メガホンをとったのは本作で監督デビューしたロバート・ハーモン。殺人鬼の動機や人物背景などをほぼ排除し、彼らの置かれた状況だけを丁寧に描くことで登場人物の本質をにじませていく演出が光っており、J・J・エイブラムス監督は『10 クローバーフィールド・レーン』(16)製作時に本作の影響を受けていることを明かしている。この度、35年ぶりに「ニューマスター版」として蘇った本作の日本公開を受け、ロバート・ハーモン監督のメールインタビューが実現! 『ヒッチャー』は人生において多くの道を開いてくれた重要な作品だと語る監督が、印象に残っているシーンや、有名監督たちが『ヒッチャー』を称賛していることに対する思いなど、日本のファンのためだけに快く答えてくれた。

それぞれのキャストはどんな理由で選ばれたのですか?

 基本的に3人しか出てこない映画ですから、通常よりもキャスティングの重要度が大きかったと思います。通常の場合でも、キャスティングは本当に重要ですから。ルトガー・ハウアーがこの役を演じるために生まれてきたことは、関係者の誰の目にも明らかでした。はっきりと言えるのは、今日こうして35年前の映画の話ができるのも、ルトガーがこの役を演じると決心してくれたからです。

メインキャストの3人に、当時どんな印象を持たれましたか?

 ルトガー・ハウアーのことは、もちろんよく知っていました。彼のオランダ時代の映画(ほとんどがポール・バーホーベン監督の作品)のことはよく知っていましたし、ちょうど『ブレードランナー』(82)の撮影を終えたばかりでした。そんな彼と一緒に仕事ができるというので、ワクワクしました。
 ナッシュを演じたジェニファー・ジェイソン・リーはご存知の通り、後に素晴らしいキャリアを積むことになるのですが、当時はキャリアの初期段階にいました。彼女のことは『初体験/リッジモント・ハイ』(82)や『グランドビューU.S.A.』(84)などの映画で知っていましたし、一緒に仕事ができるのが本当に楽しみでした。また偶然にも、彼女がバーホーベン監督の『グレート・ウォリアーズ/欲望の剣』(85)の撮影を終えたばかりだったことも知っていました。この映画は『ヒッチャー』のキャスティングが行われていたときにはまだ公開になっていませんでしたが、ジェニファーとルトガーが知り合いで、お互いに相手を気に入っていたと聞いて、良い兆しだと思いました。
 C・トーマス・ハウエルも、ジェニファーと同じように、キャリアの初期段階にいました。『アウトサイダー』(83)や『若き勇者たち』(84)に出演した俳優としてよく知っていました。彼をキャスティングできて一緒に仕事をすることができたのも、信じられないほどの幸運だったと思います。

演技に関し、ハウアーさんに何か要望はありましたか?

 ルトガーに、ジム・ハルジー(ハウエル)を自分の息子のように扱うよう頼みました。ルトガーはこのアイデアをとても気に入っていました。このコンセプトを念頭に置いて映画をご覧いただければ、役者の演技のいたるところにそれが反映されているのがお分かりいただけると思います。抑えた演技ですが、大変効果的な演技です。私は実のところ、この映画がこんなに長く愛されているわけは、このコンセプトを基にしたルトガーのおかげなのではないかと思っています。

カーチェイスや爆発といったダイナミックなアクションから緊張感ある俳優の演技まで、様々なシーンがありますが、特に印象に残っているシーンはありますか?

< ジムとナッシュを追いかける警官がショットガンを発射し、誤って自分のタイヤを撃ち抜いて起こる2台の車の横転シーンは特に大変でした。カメラを大量に配置しなければなりませんでしたし(確か9台だったと思います)、すべてのタイミングを合わせなければいけず、難しかったです!
 ノン・アクション・シーンでは、ルトガーがC・トーマス・ハウエルとカフェで向かい合って座るシーンが特に好きです。C・トーマスの目に2ペニーが置かれることになるんですが。私にとって、このシーンは本当に効果的で、2人の関係が進展する途中に入れるのにぴったりのシーンだったんです。

ジョン・ライダーとジム・ハルジーの関係は独特です。ジョンに対するジムの気持ちが少しずつ変化していきます。ジョンがジムを好いているようにも見えます。2人の関係を撮影する際に、どんなことに気をつけられましたか?

 特に気をつけたのは、この映画を「悪人とヒーロー」という単なるジャンル映画にはしない、ということでした。2人の登場人物が、なんらかの「死闘」で単にぶつかり合うような映画のことです。明らかにこの映画でも、前半くらいまではそうした要素がたくさんあります。ですがその後、ジョンが自分に何を求めているのかをジムが次第に理解し始めるにつれ、物語は変わり始めます。

クリストファー・ノーラン監督をはじめ、『ヒッチャー』が好きという監督がたくさんいると聞きました。この作品が若手の監督や映画作品に大きな影響を与えたということについて、どう思われますか?

 多くの一流監督が『ヒッチャー』を大好きな映画として挙げていると聞きました。本当ならば、とても嬉しいことです。監督仲間からの評価は、熱狂的なファンからの応援と同じくらい大きな喜びを与えてくれます。クリストファー・ノーランや、スタンリー・キューブリック(長年助監督を務めたキャスリン・ビグローから『ヒッチャー』に対するキューブリックの思いを聞いた)もそうです。いずれも私にとって英雄のような存在ですので、もう本当に、素晴らしいというしかありません。

スタンリー・キューブリック監督が『ヒッチャー』をどう思ったか気になります。

 ある朝、キューブリックが自身の撮影現場で、皆に『ヒッチャー』を観るようにと言い張り、自分がこの映画をどれだけ気に入ったか話したらしいんです。この話が本当かどうか、私には知る由もないんですが、この情報の出所を疑う理由もありません。

35年ぶりの劇場公開に胸を躍らせる日本のファンへメッセージをお願いします。

 日本のファンの皆さん、ぜひお会いしたかったです! 私は日本に行ったことがありませんし、行ってみたいと思っています。本当なら今回の日本公開が良い口実となったはずなんですが! 『ヒッチャー ニューマスター版』、楽しんでいただければと思います。そして、初公開から何年も経つこの作品に今でも興味を持っていただいて、どうもありがとうございます。

公開表記

 配給:アンプラグド
 2021年1月8日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次公開

(オフィシャル素材提供)

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