イベント・舞台挨拶

『川っぺリムコリッタ』Q&A付き舞台挨拶

©2021「川っぺりムコリッタ」製作委員会

 シルバーウィーク後半の三連休初日となった9月23日(金・祝)。東京・立川にあるシネマシティにて『川っぺりムコリッタ』のQ&A付き舞台挨拶が行われ、荻上直子監督が登壇。会場に集まった観客からの質問に次々と答えていった。

 「2年前に撮影をして、公開が1年ぐらい延期してしまったのですが、こうして今日皆さんに届けることができてうれしいです」と挨拶をした荻上監督。初めにMCから本作を撮ろうと思ったきっかけを訊ねられると、「NHKの『クローズアップ現代』という番組で“ゼロ葬”という、誰にも見送られない葬儀の話がやっているのを見て、引き取り手のいないご遺骨が役所に並んでいる映像にショックを受けました。この一つひとつの人生はどのようなものだったのだろうと、お骨についての物語を書こうと思いました」と明かす。

 続いて物語を彩るメインキャストについて、「松山さんはいままで会ったことがないような役者さんで、頭で計算してお芝居をするというよりも、すごく大きなところで理解して役に溶け込んでいる方でした。満島さんは動物的で、人の心を読むので怖い女だなと思っていました(笑)。ムロツヨシさんはすごくエンターテイナーで、みんなに気を遣って周りを盛り上げようとする人。すごく努力をして、この島田という役を演じてくれていました」とそれぞれへの感謝を述べる。

 Q&Aが始まり、観客から最初に寄せられた質問は、やはり荻上監督作品の代名詞ともいえる“美味しい食事”シーンへのこだわりについて。「死をテーマにした作品ですので、その真逆である生を同時に描いていきたかった。とくに山田という主人公にとって、初めての給料で買ったお米はかけがえのないもの。すごく大事に撮りたいと思っていました」と語る荻上監督は、松山が数日間の絶食をして撮影に臨んでいたというエピソードを明かし会場を驚かせた。

 次に寄せられたのは、オリジナル作品を立て続けに作っている荻上監督はいつもどこから物語を着想するのかという質問。「いつも映画を撮りたくて仕方がないので、モチーフとなるものを常に考えています」と答える荻上監督は、毎回脚本を書き始めるきっかけとなるものがあると明かす。「夕焼けの空を見た時に、ふと知久寿焼さんが作詞した『夕暮れ時のさびしさに』のメロディが浮かび、歌詞を調べてみたら不思議な歌詞で。その要素を散りばめてみようと思った時に、脚本がぱっと書けたんです」と、本作の脚本の誕生秘話を明かした。

 他にも「役者さんの声が好き」という観客の感想を受け、「普段は役者さんを想定しないで脚本を書くのですが、これは絶対に薬師丸さんだと思って書いていました」と、本作で薬師丸ひろ子が声の出演を果たした経緯を語る荻上監督。また劇中に散りばめられた日本映画の名作へのオマージュについて訊かれると、黒澤 明監督の『どですかでん』や今村昌平監督の『うなぎ』のタイトルを挙げていく。

 そして「この舞台となった富山という土地はゆったりしていて、気持ち的にもゆったりと映画を撮ることができました。俳優さんたちもきっと自然のなかに包まれていたことでしょう。富山という土地がこの映画を助けてくれました」と、撮影場所である富山県に思いを馳せた荻上監督。イベントの最後には映画館のスタッフから花束を進呈され顔をほころばせると、「皆さんにこの映画をいっぱい広めていただいて、少しでも長く上映されればうれしいです」と語り、あたたかな拍手に包まれていた。

登壇者:荻上直子監督

公開表記

配給:KADOKAWA
全国公開中

(オフィシャル素材提供)

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