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『ケイコ 目を澄ませて』第27回釜山国際映画祭トークショー

©2022 映画「ケイコ 目を澄ませて」製作委員会/COMME DES CINÉMAS

 岸井ゆきの主演、三宅 唱監督の映画『ケイコ 目を澄ませて』が第27回釜山国際映画祭 特別企画プログラム「Discovering New Japanese Cinema」に正式出品、本作の公式上映が10月9日(日)に釜山シネマセンターにて行われ、岸井ゆきのと三宅 唱監督が登場した。本作は、本年2月に行われた第72回ベルリン国際映画祭のワールドプレミアを皮切りに、世界各国の映画祭に続々出品が決定し、世界中の映画ファンを魅了してきたが、いよいよアジアまで広がり、この釜山国際映画祭がアジアプレミアとなった。

 まず三宅監督から「アンニョンハセヨ。こうして釜山の大きなスクリーンで大勢の方と一緒に観ることができて楽しかったです」、岸井から「アンニョンハセヨ、岸井ゆきのです。アジアで最初のプレミアをご鑑賞いただきありがとうございます。この日を待ち望んでいたので感無量です!」と韓国語を交えた挨拶で映画祭での上映の喜びを伝えると、満席の会場より大きな拍手と声援が沸き起こった。
 三宅監督は「この映画を作るまでボクシングについて全く知りませんでした。なぜ殴ったり殴られたりするのか分かりませんでした。でも多くの人がボクシングに夢中になってしまう。この謎について考えていくと、もしかしたら自分たちの人生についても考えていくことができるのではないかと思いました。この作品の主人公のモデルとなった小笠原恵子さんの生き方、純粋に自分のやりたいことをして、自分の人生を生きようとするエネルギーがこの映画の中心にあると思っています。岸井さんは映画の中でその全てを表現してくれています」とこの作品を作ったきかっけを披露した。
 さらにこの日は映画『新聞記者』で第43回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞したシム・ウンギョンが応援に駆け付け、本作に魅了され、岸井に圧倒されたことなどを語ると、岸井は「ボクシングのトレーニングを3ヵか月行いました。その中でケイコを形作っていきましたが、トレーニング中からこれは二度とできない作品、役柄であるなという実感がありました。体づくりのために糖質制限をしていたので、すごく狭い世界しか見えなくなって、自分が見たいものしか見られない、聞きたい音しか聞こえないという状況でした。ある一点に集中力を注ぎ、その精神状態の中でケイコというキャラクターは作られていきました。この映画で身体が朽ちてもいいと思うほどに、このような経験は二度とできないだろうし、二度とできない瞬間をおさめてほしいと思いながら日々撮影に臨んでいました」と作品にかける並々ならぬ想いを打ち明けた。
 三宅監督は岸井とボクシング指導を担当した松浦慎一郎氏との撮影前のトレーニングをこう振り返る。「ボクシングの練習を始める前までは、ボクシングとはリングに一人で上がって闘う孤独なスポーツだと思っていました。しかし実際に練習してみると、パンチをあてるのがものすごく怖いと感じ、互いに相手へのリスペクトがないと、ボクシングは練習すらできないということを学びました。ある日の練習で体格の全く違う僕と岸井さんがリングにあがって闘うという練習をしたときに、僕が本気で殴るわけにはいかないので遠慮してガードばかりしていたら、岸井さんから『なぜ本気で殴ってこないのか、なぜ真剣に向かってこないのか』と真っすぐ言われました。強さ、弱さは関係なく、その真っすぐな姿勢というものが、元々岸井さんにあり、ケイコというキャラクターにもあったのだと思います。それが“共に生きる”という姿勢にも繋がると、僕は練習中に感じ続けていました」と印象的なエピソードを語った。それに対し岸井は、「映画のためというよりか、自分自身がいかに強くなれるか、を考えてずっとやっていました。この映画をやり遂げられなかったら、俳優でいるのは難しいと思うくらい、必死で日々練習に臨んでいました」と本作にかける強い想いが溢れ出た。
 三宅監督から、「目の前に素晴らしい役者さんがいて、素晴らしいスタッフの働きがあって、素晴らしいロケ地があって、それを撮り逃さないようにするということをまずは意識していました。それから、シム・ウンギョンさんがおっしゃってくれた“共に生きる”ということは、このように劇場で多くの人と“共に観る”こととも繋がっていると思います。どんな物語であれ、僕が映画を作るときは、スクリーンの向こうの世界とお客さんが、どのように同じ時間を過ごせるのかということについて考えながら作っています」と映画作りへの想いを語った。
 そして最後に岸井から「私は映画が本当に好きなんです。この仕事を始める前からずっと観てきました。16mmフィルムで撮るということを知って、映画の撮影中にしか聞くことができないカラカラというフィルムの音を聞けるんだと思い、もう全てをここに懸けるしかないんだという気持ちになりました。三宅監督と一緒に映画を撮るということ、16mmフィルムで撮るということ、そしてそのために集まってくれるスタッフの皆さんがいて、この映画を作ることができました。私はベルリン国際映画祭も他の映画祭も参加が叶わなかったので、この釜山が初めての映画祭となり、この映画を観た方とコミュニケーションとれる良い機会となりました。いま皆さんの表情を見て、この映画を観て何か感じていただけたんだなということを思い、とても嬉しいです」と、海を越えて言語を超えて世界へ『ケイコ 目を澄ませて』を届けることができたことへの喜びを語った。

登壇者:岸井ゆきの、三宅 唱監督
応援ゲスト:シム・ウンギョン

(オフィシャル素材提供)

公開表記

配給:ハピネットファントム・スタジオ
2022年12月16日(金) テアトル新宿ほか全国公開

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