イベント・舞台挨拶映画祭・特別上映

『モリコーネ 映画が恋した音楽家』第35回東京国際映画祭 ガラ・セレクション特別上映

©2021 Piano b produzioni, gaga, potemkino, terras

 2020年7⽉世界は類稀なる存在を失った。エンニオ・モリコーネ、享年91歳。500作品以上の映画とTVの⾳楽を⼿掛けた。アカデミー賞®には6度ノミネートされ『ヘイトフル・エイト』で受賞。全功績を称える名誉賞にも輝いた。そんな伝説のマエストロに、弟⼦であり友でもあるジュゼッペ・トルナトーレ監督(『ニュー・シネマ・パラダイス』)が密着、結果的に⽣前の姿を捉える最後の作品となったドキュメンタリー映画『モリコーネ 映画が恋した⾳楽家』が2023年1⽉13⽇より⽇本公開)。「ジュゼッペ以外はダメだ」とモリコーネ⾃らが指名したトルナトーレ監督の前だからこそ半⽣を⾚裸々に回想、かつては映画⾳楽の芸術的地位が低かったため、幾度もやめようとしたという衝撃の事実を告⽩。いかにして誇りを⼿にしたかが数多の傑作の名場⾯やワールド・コンサート・ツアーの演奏と共に紐解かれていく。さらに70⼈以上の著名⼈のインタビューによって巨匠の仕事術の秘密が明かされる。そのメロディを聴くだけで、あの⽇あの映画に胸を⾼鳴らせ涙した瞬間が蘇る。同じ時代を⽣きた私たちの⼈⽣を豊かに彩ってくれたマエストロに感謝を捧げる、愛と幸福に満ちた⾳楽ドキュメンタリー。このたび今期のNHK連続テレビ⼩説「舞いあがれ!」をはじめ、『噓⼋百』シリーズ『検察側の罪⼈』『そして、バトンは渡された』など数々の映画⾳楽を⼿掛けている富貴晴美と、本作の字幕監修を担当のサウンド&ビジュアルライター前島秀国によるより深く、より広く、“モリコーネ”“映画⾳楽”の魅⼒を知る貴重なトークイベントが開催された。

 現在放映中の連続テレビ⼩説「舞い上がれ!」のほか、ヒットシリーズの劇場映画『嘘⼋百 なにわ夢の陣』(1/6公開)を担当するなど、モリコーネと同じく、テレビや映画で⼤活躍中であり、過去、NHKの⼤河ドラマの⾳楽を担当したという共通点もあるモリコーネ(「MUSASHI」)と富貴晴美(「⻄郷どん」)。
 本作について「素晴らしすぎて<トルナトーレ監督の最⾼傑作になっているんじゃないか>」「ドキュメンタリーっていろいろあると思うんですけど、ここまで素晴らしい、⼀体どれだけのフィルムを回したんだろうと思いました。映画としても素晴らしいので、もう多くの⼈に観ていただきたいなと思います」と⼤絶賛! ⾃⾝のモリコーネとの出合いが「⼩学⽣の時に観た『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』」だったと⾔う富貴は「『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(84)を聴いて映画⾳楽の作曲家になろうと思ったっていう⼈がたくさんいるはず」という前島の意⾒にも賛同、同作劇中に流れる<デボラのテーマ>を例に挙げ「映画を1本観終わったら<その世界>にしかいなかった⾃分が<あの世界>にいるような感じがして、すぐさまピアノでそのメロディーをずっと弾いて、それが最初の出合いでしたね」「永遠にモリコーネの珠⽟の1曲みたいに、本当に思います」と振り返る。


 続いて、⾃⾝の「好きな作品であり、⼀番モリコーネらしい作品」という『ミッション』について、「聞いてるとドキドキしますし、モリコーネさんが、⾃分が代表作っていうか、⾃信があるって⾔ってるのもすごく頷ける作品だなって」と明かす。本作は、ルネサンスからバロックにかけての⾳楽と現代⾳楽の前衛的なかけ離れた⾳楽2つが融合した楽曲が特徴的だが、通常「前衛的な⾳楽、現代⾳楽になると、乾いた⾳楽が多くて、メロディックではない」しかし「モリコーネさんは、前衛的なものと豊かなメロディー、彼しか書けないメロディーが異質に感じないというか、それがすごい組み合わさっている」「現代⾳楽だけでいうと<泣ける>とか<⼼に沁みる>とか、映画⾳楽でもいろいろな作曲家がそういうふうにやっていると思うんですけれど、そこの域まで達してない」「だからエンニオ・モリコーネという⼈が素晴らしいと⾔われてるのは、⾼次元のところで融合してるだけでなく、そこからその⾳楽を聞いて、涙が出る。あったかい気持ちになるっていう、⼼に訴えかけるメロディーを書ける。そこが素晴らしいと思いますね」とその魅⼒を熱く語り、前島も「今の⾔い⽅で⾔うと<エモい>、つまり<エモーショナル>を部分っていうのを、絶対に忘れてない」と、⼀⾒⽭盾したこの2つの要素を映画⾳楽の中で1つにしてしまうモリコーネの凄さを解説した。
 劇中でのモリコーネと同じく、ドラマや映画などの商業的な⾳楽と、芸術的な⾳楽を書くときの葛藤についてのシーンも共感したという富貴。⾃⾝も「ドラマとか映画の⾳楽を作る時の頭と、現代⾳楽を書く時の頭って、全然違うふうに考えて、頭を切り替えて作曲している」「モリコーネさんは同じ舞台の上に2つをうまく組み合わせてるっていうのは、すごい! 真似したいけど、なかなか難しいと思う」と感嘆、しかし「多分、最後まで彼はずっと葛藤し続けていたんだろうな、っていうのは分かる」同じ作曲家としての苦悩を重ね合わせた上で、しかし動物の鳴き声を作曲の⼀部として採⽤するという、現代⾳楽があったからこそ⽣まれたモリコーネ独特の表現である『続・⼣陽のガンマン』での有名な<コヨーテの遠吠え>などを例をあげ「現代⾳楽があるから、彼はいろいろなところの引き出しが増えて、それで彼の世界が出来上がってると思ってます」「映画⾳楽も<現代⾳楽>が彼から無かったとしたら、もしかしたら、映画⾳楽作曲家として、そこまで⼤成していなかったかもしれないと私は思っていて。やっぱり2つの要素、2つの顔を持つことで、新しいステージに⾏けたんじゃないかなと思っています」とその魅⼒を語った。
 富貴⾃⾝がNHK⼤河ドラマ「⻄郷どん」(18)で作曲を担当していたという縁もあり、モリコーネが⾳楽を⼿がけたNHK⼤河ドラマ「MUSASHI」(03)にも⾔及。「彼の全てが詰まっているようなサウンドトラックだと思っています」と⾔い、前島も「メイン・テーマもね。トラペットで主題を出して、トランペットは、今⽇の映画ご覧になって分かるように、モリコーネの1番得意な楽器ですよね。<ここぞ>っていう時に使う」「もう必殺技ですよね。トランペットはね、本当に真正⾯から勝負をかけてるっていう」「ある意味で⻄洋のヒーロー・ドラマと全く同じスタンスで、すごかった」と、振り返った。劇中「作曲したら、まず奥さんに曲を聞かせる」「お⽗さんや恩師からその受けた、教えとか、愛情とか、そういうものを⾮常に⼤切にして⽣きてる」など、溢れ出るモリコーネの温かかった⼈柄のシーンの話題にも触れながら、富貴が“同じ作曲家として思わず笑ってしまった”シーンとして、モリコーネが『アンタッチャブル』(87)への作曲リストをブライアン・デ・パルマ監督に提案した際、絶対に採⽤して欲しく無いが“⼀応の候補”としてリストの最後に⼊れておいた楽曲が採⽤されてしまい、ショックを受けた、と明かす箇所に⾔及。
 富貴⾃⾝も「デモで6曲を書いて(⼀応⾯⽩いからリストに⼊れるけど)『最後の6番⽬を採⽤するのはやめてね』って⾔ったのに」「なぜか6番⽬が採⽤されてしまう」“作曲家あるある”を明かし「こんな⼤巨匠になっても同じことをやっているんだなって、思わず笑ってしまった」と⾔い、前島も「洋の東⻄、この業界は同じということですね」と笑った。
 最後、トークに聞き⼊っていた満席の客席に向かって、富貴の「本当に傑作だと思っていて、映画⾳楽仲間だけじゃなく、⼀般の⼈たちにいっぱい宣伝したいなと思うので、ぜひ皆さんもいっぱい宣伝してください」という熱い⾔葉でイベントは締めくくられた。

登壇者:富貴晴美(作曲家・編曲家・ピアニスト)、前島秀国(サウンド&ビジュアルライター)

公開表記

配給:ギャガ
2023年1月13日(金) 全国順次ロードショー
TOHOシネマズ シャンテ、Bunkamura ル・シネマほか

(オフィシャル素材提供)

関連作品

スポンサーリンク
シェアする
サイト 管理者をフォローする
Translate »
タイトルとURLをコピーしました