イベント・舞台挨拶

『アンドレ・レオン・タリー 美学の追求者』トークイベント

©Rossvack Productions LLC, 2017. All Rights Reserved.

 昨年1月18日に73歳で他界した、ファッション業界のレジェンド、アンドレ・レオン・タリーの生涯を描いたドキュメンタリー映画『アンドレ・レオン・タリー 美学の追求者』がBunkamura ル・シネマ ほかにて絶賛上映中。
 公開を記念して3月18日(土)、本作のトークイベントを開催し、スタイリストの北村道子氏が登壇。本作の魅力やファッション、スタイルについて語る濃密なイベントとなった。
 ※『アンドレ・レオン・タリー 美学の追求者』の上映劇場である現ル・シネマは4/9(日)まで。6月から「Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下」が開業。

「いまでも無知だから強い」
スタイリストの道を進んだ意外なきっかけ&“無鉄砲に突き進む”ことの大切さとは?

 3月17日(金)の公開初日に本作を鑑賞した北村さんは感想を聞かれると「大変面白く観ました」と述べ、「私は若い頃を知っているので、こんなに恰幅が良くなっていることにびっくりしました」と続けるとその正直な一言に会場は笑いに包まれた。初めてアンドレを認識したのはインタビュー誌を通してで、アンディ・ウォーホルのサロン兼アトリエ”ファクトリー”でアシスタントをしていた時代。ウォーホルがアンドレを重宝していたのは「彼のトークが素晴らしいからではないか?」と推測し、「彼のお婆さんの影響も大きいと思いますが、どのような会話をしていたか想像がつきますよね。品格を学んでいったからこそ、インタビューでのトークが良かったのではないかなと思います」とアンドレのルーツにも言及。作品を通して改めてアンドレの生きた場所や時代が北村さんの目にどのように写ったか問われると「ここで語られていないことが大事ですよね」と回答し、「彼は何を必要としていたんだろう、ということを考えることが大事なんじゃないかと」そして「彼が話をしていない時は、相手を分析しているんだと思います。だんだんトーク(のテンポ)が早くなっていくのは、迎え入れられているという意味ですよね」と、この映画だからこそ見ることのできるアンドレの心が変化していくさまなどを挙げました。

 元々彫刻家としての道を進んでいた北村さん。「(ファッションに)そんなに興味がなかったのですが、フランスでお金がなくて、いろいろな紙などで洋服を作ってみたら売れて。そんなことをしていたら、友人からVOGUEのアルバイトに誘われたんです」とファッションとの意外な出合いを振り返る。また、これまでも説いてきた“無鉄砲に突き進むことの大切さ”に絡めて「いまも無知だから強いですよ」と話し、「知ってしまった時点で過去に行ってしまいますよね。知らないということは未来だから、ものすごく強いんです。ないものを取り返すことはできないから」と独自の見解を展開。自身が歩んできた道のりについては「若い時から自分の地球儀を真っ白くして、自分はどうやって歩くんだろう?って、そういうことを考えてきました。ファッションに対しても同じ。例えば『この洋服一枚をシャネルはどういう意味で作ったんだろう?』と考えながら、実際に着て(洋服が)立体になるというところまでがシャネルの想いなんですよね。それが“服の力”だと思うんです」と服そのものへのリスペクト、ジッパーやファブリックなどのあらゆるもの全てに感動することの重要さを語り、劇中でボトムラインをいつも意識して服を見ていたアンドレの審美眼も話題に上がった。

「反抗のエネルギーが形を作る、その際たるものがファッション」
イマジネーションの源、そして“スタイル”を語る

 3月13日(月)、プレミア試写会を行った『アンドレ・レオン・タリー 美学の追求者』。アンドレと元「ヴォーグ」編集長ダイアナ・ヴリーランドとの関係性を話す中で、イベントに登壇した人気ブランドFACETASM(ファセッタズム)デザイナー・落合宏理さんが”大きく影響を受けた方”として挙げたのが北村道子さん。
 そんな北村さんが大きく影響を受けた方を伺うと、「死者はみんな“師”ですね」と即答。「死んで初めて自分の中に入るというか。大江健三郎の全集も読んでないけれど買っていて、彼が亡くなったら読むんだろうなって思っていたんです。初期の作品はアナーキーで面白かったし、イマジネーションがものすごく湧きました。若い時はみんな疑問だらけだし反抗しますよね、反抗のエネルギーが形を作る、その際たるものがファッションじゃないかなと思うんです」とコメントした。

 本作のキャッチコピー“ファッションは儚く、スタイルは永遠。”を起点に、話はデザイナーの仕事へ。アレキサンダー・マックイーンが40歳という若さで他界した際を例に挙げ「私だけじゃなくトム・フォードもショックだったと思うし、いろいろな形でみんなそういうことはある。だけど、喪失感があってもコレクションはパワフルだったりして、私とは違うんだなと。デザイナーは毎回(新しいものを)作っていかなければならないから」と当時を思い返しながら答えた。「そういう意味で、デザイナーは死と生の世界をリンクしていると思うんですよね。アンドレが亡くなって、新たにそういう人がどこからともなく現れるかもしれない。彼もそうだったように、ある時突然ピックアップされるんだと思う」とも話す。最後には、「アンドレが映画でも言っていたように、デザイナーは同じものは作らない。でもスタイルは続いていく。そのために4シーズンのコレクションをやっているわけです。永遠なんですよ。だから、“スタイル”を持ってない人はダメです(笑)」と笑顔で締めくくり、イベントは暖かな拍手に包まれるなか幕を閉じた。

 登壇者:北村道子(スタイリスト)

公開表記

 配給:リージェンツ
 2023年3月17日(金)、 Bunkamura ル・シネマ にて公開

(オフィシャル素材提供)

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