インタビュー

『アダマン号に乗って』初日舞台挨拶

© TS Productions, France 3 Cinéma, Longride – 2022

 本年度ベルリン国際映画祭コンペティション部門で最高賞の金熊賞を受賞した日仏共同製作によるニコラ・フィリベール監督最新作『アダマン号に乗って』が、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほかにて全国公開中。
 この度、ニコラ・フィリベール監督が『人生、ただいま修行中』(19)以来、4年ぶりの来日を果たし、4/28(金)初日舞台挨拶を行った。さらに、本作の予告のナレーションを務めたエッセイストの内田也哉子がゲスト登壇し、フィリベール監督に花束を贈呈。内田は、大ヒット作『ぼくの好きな先生』(02)の日本公開時にコメントを寄せるなど、ニコラ監督と20年来の縁があり、この度ゲスト登壇した。

 本年度のベルリン国際映画祭で最高賞の金熊賞を受賞した『アダマン号に乗って』。日本での公開を迎えた4月28日(金)、この日のために、前作『人生、ただいま修行中』以来4年ぶりとなる緊急来日を果たしたニコラ・フィリベール監督が、大きな拍手に包まれながら登場。集まった日本の観客に向けて、「ここにこうして来られたことがとても嬉しく、誇りに思っています。金熊賞の受賞が決まったとき、全く予想をしていなかったので本当に嬉しかったです。コンペティション部門に選出されたことだけでも嬉しかったのですが、最高賞を受賞したということは、ドキュメンタリーというジャンル、そして精神医療が認められたのだと思い、なおさら嬉しいです」と語る。先日公開されたばかりのフランスでは、大ヒットスタートを切ったそう。「ちょうど1週間とちょっと前にフランスで公開されたばかりなのですが、好調なスタートでとても嬉しいです」と監督は笑顔で話した。
 ここで、ベルリン金熊賞受賞と日本公開をお祝いして、エッセイストの内田也哉子が花束を抱えて登場。大ヒット作『ぼくの好きな先生』(02)の日本公開時にコメントを寄せるなど、フィリベール監督と20年来の縁がある内田さん。監督に花束を渡しながら、フランス語でお祝いの言葉を贈る。「本日は『アダマン号に乗って』日本公開おめでとうございます! そして、ベルリン国際映画祭の最高賞、金熊賞の受賞も本当におめでとうございます。ドキュメンタリー映画としては本当に快挙だと思います。日本でもたくさんの人にご覧になっていただけると思います。素晴らしい作品をありがとうございました」。続けて、「『ぼくの好きな先生』からもう20年も経つのですね。あの作品に出合った時も静かな衝撃を受けたのですが、本作もカメラの前なのに人々が本当に自然に溶け込んでいて、でも監督の作家性もあって、なんていう稀有な作品だろうと思いました」と本作を大絶賛。

 そして監督へ「ドキュメンタリー作品を撮る情熱、醍醐味はどのようなものでしょうか」と質問を投げかけた。そんな内田の質問に監督は、「ドキュメンタリーを撮ることは、私にとっては他者に出会うことであり、世界と出会うことでもあります。そして他者について学ぶことであり、自分について学ぶことでもあるんです。フランスではドキュメンタリーというジャンルは本当の意味での“映画”ではなく、ジャーナリスティックなものとして過小評価されている部分があります。もちろん、そういった報道的なドキュメンタリーもあります。しかし僕自身はドキュメンタリーは映画そのものだと思っているので、ドキュメンタリーに対する考えが少しでも変わっていけばと思っています」と、ドキュメンタリー映画に対する熱い思いを語った。


 さらにフィリベール監督は「“アダマン号”は船でありながら、セーヌ川に浮かんでいる建造物です。船は旅をしませんが、この映画『アダマン号に乗って』はここまで旅をしてきました。この“アダマン号”を日本に届けることができてとても嬉しく思います」と思いを打ち明けた。
 内田は監督へ、「世界でも稀に見るおとぎ話のような本当の話ですよね。日常を切り取ったドキュメンタリー作品でありながら、監督がまるでお坊さんのように禅問答をされている。それに私たち観客も一緒にたゆたう感じ。きっと映画を観終わって、波が打ち寄せるように思いを巡らせることができる作品だと思います。素晴らしい作品をこの世に誕生させてくれてありがとうございます」と感謝を伝える。そんな内田の言葉を受けて、監督は「おとぎ話のような作品とおっしゃってくださいましたが、アダマン号はおとぎ話ではなく、現実に存在する場所なんですよね。ただ精神医学の場所として、決して代表的な場所なわけではないんです。フランスの精神科医療の現場は制度から見捨てられてしまったような、あまりいい状態ではありません。でもそれに抵抗する人たちがいる。それがアダマン号にいる人たちなんです」と話す。そして「精神疾患を持つ人たちに対して、私たちは不信感を持ってしまいがちです。でも彼らは人間としてきちんと存在している。感受性が強くて、少しか弱い、それこそが私たちとの共通項であり、だからこそ私たちの胸を打つんだと思います。彼らも私たちと同じ人類の一部なんです」と語り、内田も「まさしく私もそのように感じました」と頷いた。

 最後に、ニコラ監督は日本の観客たちに向けて「この映画を気に入ってくださることを心から願っています。そしてこの作品を好きだなと思ったら、ぜひお近くの方にも勧めてくださったら嬉しいです」と笑顔で締めくくった。

 登壇者:ニコラ・フィリベール監督、内田也哉子(エッセイスト)

公開表記

 配給:ロングライド
 ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほかにて全国公開中

(オフィシャル素材提供)

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