インタビュー

『アダマン号に乗って』ニコラ・フィリベール監督インタビュー映像 到着!

©Michael Crotto

 本年度ベルリン国際映画祭コンペティション部門で最高賞の金熊賞を受賞した日仏共同製作によるニコラ・フィリベール監督最新作『ON THE ADAMANT』(英題)の邦題を、『アダマン号に乗って』とし、4月28日(金)にヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほかにて全国公開となる。

今年2月、第73回ベルリン国際映画祭コンペティション部門で俳優クリステン・スチュワートら審査員たちが華々しい作品群のなか最高賞《金熊賞》を贈り、「人間的なものを映画的に、深いレベルで表現している」と賞賛された本作。手掛けたのは、世界的大ヒット作『ぼくの好きな先生』(02)で知られる、現代ドキュメンタリーの名匠ニコラ・フィリベール監督。多様性が叫ばれる以前から、多様な存在や価値が共にあることを淡々と優しい眼差しで映し続けてきた。パリ、セーヌ川のきらめく水面に照らされた木造建築のユニークなデイケア・センターの船<アダマン>。精神疾患のある人々を無料で迎え入れ、絵画、音楽、ダンスなど創造的な活動を通じて社会と再びつながりを持てるようサポートしている。この船では誰もが表情豊か。共感的なメンタルケアを貫くこの場所をニコラ監督は「奇跡」だという。深刻な心の問題やトラウマを抱えた人々にも、素晴らしい創造性があり、お互いの違いを認めともに生きることの豊かさを観るものに伝えてくれる。本作は、間違いなく最も「優しい」映画であり、この時代にもたらされた“希望”そのものである。

 この度、二コラ・フィリベール監督のインタビュー映像が到着! フランスでも先週、劇場公開したばかりの『アダマン号に乗って』。共同製作国である日本の観客にもいち早く届けたいというニコラ監督の思いが叶い、今週末に緊急公開となった日本に向けて、アダマン号について、金熊賞受賞となる映画ができるまでの裏側について語ってくれた。

「アダマン号は、彼らを孤独から引き出して、世界とつなげる手助けをする場所。」

 「少しでも人間的な精神医療にスポットライトが当たってくれれば」。
 第73回ベルリン国際映画祭コンペティション部門で金熊賞を受賞した『アダマン号に乗って』。ドキュメンタリー映画が金熊賞をコンペティション部門で受賞するのは、長いベルリン国際映画祭の歴史においても二度目という快挙。受賞時の気持ちについてニコラ監督はこう語る。「受賞以前に作品がノミネートされたことが嬉しかったです。今まで参加はしていても、ノミネートされたことはありませんでした。金熊賞受賞は予期していなかったので、本当に驚きました。自分にとっても、作品にとってもいいことだと思っています。作品が今後、精神医療に与える影響にも期待しています。精神医療の世界は今、苦しみの中にあるので、少しでも人間的な精神医療にスポットライトが当たってくれれば嬉しいです」。

©Michael Crotto

 アダマン号は精神疾患者のためのデイケアセンターでいろんな患者が毎日やってくる。一体どんな場所なのだろうか。「アダマン号は2010年に開所しました。パリの中心部、セーヌ川に浮かんでいます。係留されているので、航行する船ではありません。言うならば“浮かぶ建造物”です。乗っているときは水の上にいる感覚があります。船の中にはさまざまな空間があります。患者はその中を自由に移動できて、閉ざされた空間はありません。船に使われている素材はガラスや木材など重厚感があり、光がたくさん入ります。パリの中心にいるのに別の場所に来たような錯覚にとらわれる、とてもゆったりとした場所です。水が近くにあるというのも重要ですね、場所そのものに癒し効果があるんです」。
 つい訪ねてみたくなる場所だが、基本的には観光客などがふらりと訪れることができる場所ではない。そういった面でも患者たちの穏やかな時間は守られている。では、どんな患者たちとスタッフで成り立っているのだろうか? 「通ってくるのは主にパリに住む患者さんです。定期的に通う人もいれば、不定期に通う人もいますし、複数や単体のワークショップに来る人もいれば、ただ雰囲気に浸ってコーヒーを飲みに来る人もいます。スタッフも患者さんもみんな私服なので、誰が患者さんで誰がスタッフなのかも区別がつかないくらいで。レッテルがないんですね。患者さんが“病気”の枠に閉じ込められておらず、ちゃんとした“人”として見られているんです。スタッフは、彼らの“勢い”を少し引き出そうとします。彼らを孤独から引き出して、世界とつながる手助けをするのです。アダマン号はそういう思想をもった場所です」と答えてくれた。

 映画の中では、そうした患者たちが気ままに弾き語りをしたり、絵を書いたり、ジャム作りをする様子などを観ることができる。気分の良い日もあれば、そうでない日もある、どんな日でもアダマン号は、ありのままを受け入れてくれる場所に感じられる。彼らの日常をとらえた『アダマン号に乗って』の撮影は7ヵ月間、収録映像は100時間にも及んだ。その中でもニコラ監督が一人きりでカメラを携え、撮影をしたものがほとんどを占めるそう。

©Jean-Michel Sicot

 最後にアダマン号の「アダマン」の意味を聞いてみるとこう答えてくれた。「フランス語でダイヤモンドの中心という意味です。ダイヤモンドの核となる硬い部分です。英語でadamantは「確固たる」という意味です。フランス語ではあまり使われませんし、私も意味を知りませんでした。“アダマン”って音がきれいですよね」。
 ニコラ監督は、観客に確実なメッセージを伝えたくて、映画を撮るのではないのだと言う。今回で言えば、観客の手を取って、アダマン号に彼らを誘う。そして観客がそれぞれ、精神医療に興味をもつもよし、他者との交流に関心をもつもよし、ただその場にいる気分になるだけでも良いのだと話してくれた。

 ぜひスクリーンに足を運び、セーヌ川のせせらぎに耳を傾け、川のきらめきの上で、アダマン号の人々が送る日常の空気を楽しんでほしい。

公開表記

 配給:ロングライド
 4月28日(金) ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開

(オフィシャル素材提供)

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