イベント・舞台挨拶

『aftersun/アフターサン』スペシャルトークイベント付き試写会

©Turkish Riviera Run Club Limited, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute & Tango 2022

 いよいよ来週5月26日(金)に公開を迎える映画『aftersun/アフターサン』。それに先立ち、5月19日(金)に東京・神楽座にてスペシャルトークイベント付き試写会を実施。ゲストとして、映画ライターのよしひろまさみちと、映画・音楽パーソナリティの奥浜レイラが登壇した。

 共に本作へ絶賛コメントを寄せている2人。鑑賞後に抱いた思いについてよしひろは、自身が現在51歳であることに触れ、「両親が51歳だったときを覚えていて、こんなめんどくさい息子がいてこの人たちは働いていたんだということを思い、たまらなくなりました」と、かつての父と同じ31歳になった娘ソフィが思い出を回顧する本作のような体験をしたそうだ。さらに、幼い頃の両親との熱海旅行を思い出したという。「多感な小学生だと外に出たい、ホテルの中だとアクティビティが少なすぎてつまらなかったんです。2、3日目になるとプールサイドでカレーを食べることしかできなくて。でもあの旅行はやってくれて良かったんだ、うちも思い出をちゃんと作ってくれていたんだな、と思いました」と、自身の両親との記憶にハッと気づかされたと語っていた。


 続いて奥浜が鑑賞後に感じたことを訊かれると、「親が若い時に生まれているのですが、長女だったので未熟な親を目にするんですよ。その時は点と点が線になっていなかったけど、私が当時の親の年齢になってみて、これは相当大変だっただろうなあと感じました」と当時の両親に想いを馳せたようだ。

このことに対して、よしひろは「この映画ってそれでいいんじゃないですかね。自分事に置き換えたときに答えが見えてくる映画だなと思います」と語り、マスコミ向けの試写の際に同業者の知人たちがそれぞれ全く異なる視点で本作について話をしていたというエピソードを明かした。「どこを拾うかでストーリー・ラインが変わってくる、観客が自分事として捉えるために作られた映画なんだなと思いますね」と作品を振り返った。

 本作で鮮烈なデビューを果たしたソフィ役のフランキー・コリオについては、ゲストのふたりが「見事でしたよね」と口を揃えて称賛。さらに監督が子役のフランキーには脚本ではなく、その日のシーンのみが書かれた紙を渡していたことに言及。よしひろは「全て台本を渡してしまうと頭でっかちに考えてしまうんですよね。子どもだと考えたことしか出てこなくなってしまうから」とし、日本映画界を代表する是枝裕和監督の演出法になぞらえて、これは“是枝方式”だったと振り返った。そして、クランクインの2週間前から父娘役のふたりだけで過ごす時間をたっぷり作ることで非常に仲の良い間柄になったという撮影裏話から、話題はポール・メスカル演じる父・カラムの話に。劇中、あまりお金が潤沢にあって旅行に出かけたわけではないことが伺える描写に相反して、絨毯やビデオ・カメラ等の高価なものは買っていたことに対し、奥浜は「残るものにはお金をかけているんですよね」と指摘。これによしひろは「娘があとあと自分のことを思い出してくれるように、という工夫なのかもしれませんね」とふたりでのかけがえのない時間を過ごす父の心情を考察した。

 また、本作の魅力のひとつである90年代の楽曲について言及。そのひとつであるクイーン&デヴィッド・ボウイの「アンダー・プレッシャー」が使用されたシーンについて奥浜は「“夜の片隅にいる人々”という歌詞でドバーって……!」と涙を流し感動した様子。さらに監督自身が父の影響によって初めて歌えるようになった曲であるというR.E.Mの「Losing My Religion」については、娘・ソフィがカラオケで歌うシーンに使われており、「胸が痛かった……」とそれぞれのシーンと楽曲のケミストリーに感服していた。さらに、劇中に「テンダー」を提供したブラーが今月18日にアルバム・リリースを発表。曇天の中、独りプールで泳ぐ様子が映し出されたジャケット・デザインに対して、『aftersun/アフターサン』を彷彿とさせるデザインで、まるでカラムの心を表現しているようだと盛り上がりを見せた。

 本作の楽しみ方について奥浜は「音楽から紐解くのもアリですし、どういうカメラ・ワークなのか、なぜここにビデオ・テープのシーンが入るのかといったことを考えることで読み解いていく作品かなと思います」と作品のとらえ方が人それぞれであることを強調。よしひろも「皆さん各々違う感想をお持ちだと思うのですが、全然それでOKだと思います。それを持ち帰って自分の思い出と照らし合わせたときにまた新たな発見が出てくるはずなんです」と伝えたうえで、作品に答えを求めたがる昨今の傾向に触れながら、「別に白でも黒でもいいんですよ!【分かりやすさ至上主義】に走りすぎると人間は感性を失ってしまう。この映画は感性を研ぎ澄ませて観てもらう映画だと思うので、未見の方を誘ってまたぜひ観に行ってくれると嬉しいなと思います」と本作の、敢えて答えを明示しない“余白”について語り、イベントを締めくくった。

 登壇者:よしひろまさみち、奥浜レイラ

公開表記

 配給:ハピネットファントム・スタジオ
 5/26(金) ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿ピカデリーほか全国公開

(オフィシャル素材提供)

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