イベント・舞台挨拶

『火だるま槐多よ』公開記念イベント

©2023 Stance Company / Shibuya Production

 “ピンク四天王”の一人と称される佐藤寿保監督の最新作『火だるま槐多よ』が12月23日(土)から1月12日(金)まで新宿K’s cinemaにて公開されるのを記念して、12月16日(土)に、『火だるま槐多よ』公開記念イベントが開催された。

 『火だるま槐多よ』のモチーフとなった「尿する裸僧」をはじめとする村山槐多作品を収集し、顕彰してきた窪島誠一郎氏を迎えて、本作の企画が始まる前から、それぞれ村山槐多著の「悪魔の舌」を読み、展覧会「没後90年 ガランスの悦楽 村山槐多」にも行っていたという『火だるま槐多よ』監督の佐藤寿保と脚本の夢野史郎がスペシャルトークを行った。

 『火だるま槐多よ』のモチーフとなった槐多の作品や槐多のエピソードなどについて語り、最後のフォトセッションには、聴衆として来ていた主演の佐藤里穂が飛び入り参加した。

 冒頭窪島は、「長野県の上田市という人口が13万8000人の小さな町から、昨日、日頃より心から敬愛し、尊敬し、馬鹿にしている佐藤寿保さんに会いにきた」とジョーク混じりに愛情を込めて挨拶。

 佐藤監督は、「松濤美術館の村山槐多展で『尿する裸僧』の実物を見て、『村山槐多(の映画)をやりたい』と漠然と思った。ただ伝記をやっても面白くないと思っていた。コロナ禍になって、悪夢を見て、『尿する裸僧』が出てきて、これは村山槐多をやらないとダメだなと思った。窪島さんが村山槐多の絵を収集していなければ、今も蔵の中のままだった作品でもあるので、映画化することが決まった時に、窪島さんに会いに行った」と窪島との出会いを紹介。

 窪島は、村山槐多について、「45万人の若者が亡くなった100年前のスペイン風邪の死者の一人。たった22歳で亡くなった絵描きで、その絵を私が41点、日本で一番収集したということで、一躍名を上げて……はいないのだけれど(笑)、槐多と私も違う意味で悪戦苦闘した」と説明した。

 村山槐多は詩人・作家でもある。脚本の夢野は、「僕は村山槐多の絵を知った後に彼の書いた文章を読んでいたら、文章家としての槐多に非常に惹かれるところがあって、本作ではそういう面と、佐藤監督の『尿する槐多』への思い入れをないまぜにしたらできるのではないかと思った」とシナリオ開発の出発点を語った。

 本作のポスターは、ガランス色で、キャッチコピーは「世界をガランスに塗りつぶせ!」である。窪島は「槐多の絵は、ガランスを駆使した絵がほとんど。ガランスというのは深い紅の色。いわゆる赤の中にウルトラマリンという濃い藍色が入る。同じ赤でも晴れやかな赤でない。特に女性の裸体を描いた絵は、おっぱいがガランスで鳴門の渦潮のよう。槐多は『ガランスにて描き奉れ』という有名な詩(『一本のガランス』)を残している」と解説。

 大半の裸体が全てお玉さんという女性を描いた絵で、「直情主義」という槐多を例に、窪島は「人間には未熟が大切。未熟を失ったらいけない。その点で、監督は未熟の塊である。その純度が表現者として今問われているんじゃないか」と持論を展開。夢野は「最初脚本の依頼が来た時に、『村山槐多の伝記的な部分も入れるけれど、これは佐藤寿保監督、自分のことをやりたいんだな、俺なりの佐藤寿保を書けば、村山槐多になるんだな』と思った」と回想した。

 MCを務めた切通は、「『火だるま槐多よ』を観て面白かったのは、過去に何か根拠があるんじゃなくて、未来に向かって『こういう生き方をしていきたい、表現をしていきたい』というところ。ネタバレなので言わないけれど、突拍子がないところに理由がある。映画を観ていると、起承転結の時間の流れを見ているんじゃなくて、だんだん映画の世界が、詩や絵に近くなっている。ぜひ観てほしい」と映画評論家として本作を推した。

 佐藤監督は、「各地に散らばっている原画の素材をもらって、映画の中に取り込んで、パフォーマンスという形で詩の一節なりを抜粋して若い表現者たちが演じた。オーディションで出演が決まってからそれぞれの役者が村山槐多について調べて、それぞれが考えた村山槐多像をシナリオに肉付けしてくれたと完成品を観て感じて、嬉しかった」とキャストへの賛辞も忘れなかった。

 佐藤監督は、槐多について、「キャラクターに惹かれる部分がある。村山槐多は10代の頃エドガー・アラン・ポーを翻訳したりと、子どもの頃から天才児であった。でも画家として認められたいといろいろな年代で作風が変わっていった。ガキの頃、前の生徒の背中に落書きを突然し始めたり、変な仮面を自分で作って猿踊りをした。その辺はこの映画でも活かしている。今の世においては、病名をつけられていただろう。変な男の子だったけれど、デスマスクまで関係者の手によって作られて今の世に残っている。その辺も取り込んだ」と伝記映画ではない本作で描いた槐多のエピソードについて触れた。「映画の中で全部取り込むのは難しいけれど、今を反映した村山槐多像を噛み砕いて、映像の中に閉じ込めた。それをスクリーンを通して皆様に五感で感じてもらえれば」と想いを語った。

 12月23日から、新宿のK’s cinemaで、『火だるま槐多よ』の公開と佐藤寿保特集上映が始まる。佐藤監督は、「K’s cinemaは音響施設や観る環境としては大好きな映画館。特集上映も今後もう観られないような作品をセレクトしたので、ぜひ足を運んでいただきたいなと作り手として思う」とアピールした。

 最後に佐藤監督は、「窪島さんがいなければ、『尿する槐多』、村山槐多との出会いもなかった。一期一会というか、これを機会に、よりディープに私の作品に染まっていただけたらと切に願う。今のご時世、村山槐多的な存在って非常に重要だと思う。今後も心の中に生き続ける作家だと思う。映画を観て、村山槐多により深く興味を持っていただければと思う。劇場でお待ちしています」と聴衆にメッセージを送った。

 登壇者:窪島誠一郎(「無言館」「残照館」館主、作家)、
夢野史郎(脚本家)、佐藤寿保(監督)
 司会:切通理作

公開表記

 配給:渋谷プロダクション
 12月23日(土)~1月12日(金) 新宿K’s Cinemaにて公開他全国順次公開

(オフィシャル素材提供)

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