イベント・舞台挨拶

『ヤジと民主主義 劇場拡大版』上映後トークイベント

ⒸHBC/TBS

 2019年7月15日、安倍元首相の遊説中に、市民が政権に異議をとなえただけで警察に即座に取り囲まれ移動させられた“ヤジ排除問題”は、表現の自由、民主主義がおびやかされたとして当時大きくメディアで報道された。その後、北海道放送が「ヤジと民主主義」というドキュメンタリー番組をTVで放送し、ギャラクシー賞や日本ジャーナリスト会議賞をはじめ数々の賞を受賞し、2022年には書籍化、そして2023年春には「TBSドキュメンタリー映画祭」にて『劇場版 ヤジと民主主義』というタイトルで上映。
 ヤジを飛ばしたことによって排除された市民2人が原告として警察側を訴え、1審は勝訴しましたが高裁では判断が分かれ、双方が上告し裁判は続いている。本作はテレビや書籍では描けなかった当事者たちの思いも追加取材し、映画版として劇場公開『ヤジと民主主義 劇場拡大版』は現在大ヒット上映中。

 2月8日(木)からはじまった「映画・テレビの枠を超えた」ドキュメンタリー映像の祭典、【座・高円寺】ドキュメンタリーフェスティバル。15回目を迎える今回は“Democracy”をテーマに特集上映が組まれ、各方面で活躍中のドキュメンタリーに造詣の深いゲストセレクターたちに、お薦めのドキュメンタリーを自由に選んで上映された。初日にゲストセレクターの映画監督・是枝裕和が選んだのが『ヤジと民主主義 劇場拡大版』。山﨑裕侍監督とのトークイベントが実現した。

 多くのドキュメンタリー・ファンが詰めかけた場内、たった今まで『ヤジと民主主義 劇場拡大版』が上映されて熱気溢れる会場に、万来の拍手の中ゲストセレクターの是枝裕和と山﨑裕侍監督が登壇した。今や劇映画の監督として世界にその名が轟かす是枝監督だが、元々はテレビで多くのドキュメンタリーを生み出してきた生粋のドキュメンタリスト。その是枝監督が“Democracy”というテーマの下、選んだ本作についてどのように“掘り下げて”いくのか? 注目のトークとなった。

 話は、是枝監督が山﨑監督の経歴を聞くことから始まり、徐々に映画の内容に入っていく。
 山﨑監督はテレビ朝日「ニュースステーション」「報道ステーション」ディレクターを担当の後、HBC北海道放送に中途入社するが、多くの事件に対して、普通のテレビマンとは異なるアプローチをするエピソードの数々が披露され、早くも是枝監督による「ドキュメンタリスト・山﨑裕侍の分解作業」に会場は興味津々。

 そして是枝監督が作品について言及する。「大杉さんと桃井さん、二人がこの戦いを通して学んでいき成長する。観ている私たちもあの二人に寄り添いながら、影響されていく。まさに民主主義、この映画の中で私の一番好きなところです。その点は意識されて構成していたのでしょうか?」と質問。
 山﨑監督は「二人のように声を上げる人は、変わった人、特殊な人という見られ方をしがち。ですので、そうではない二人を描こうと思いました。観ている私たちは、何かおかしなことがあっても二人のようにヤジを飛ばすことはできない。けれども二人のそばに寄り添い、二人に影響されて自らも声をあげたり、という存在だと思います。二人に密着し、取材を重ねていくことでそれをリアルに感じました」と、作品の映し出したものを強調した。

 次に、話は山﨑監督のHBCでの現在の取り組みについて。是枝監督は「東海テレビにいらっしゃった阿武野勝彦さんのように、面白いものを作る地方局には必ず一人、核となる人がいて、若者が伸び伸びと自由に作れる環境があると思います。山﨑さんを中心にHBCにもそういう環境が生まれつつあると思うのですが、山﨑さんは今、 HBCでの取り組みの中で、何を考えられているのですか」と投げかける。
 山崎監督は「是枝さんのツイートで、僕の好きな言葉があって『テレビは声の大きい人の拡声器になってはいけない。小さな声に耳を傾ける社会の聴診器にならなくてはいけない』というのがあります。声の小さな人々に取材していくことで、社会にいまどういう歪みがあるのかを映し出す。実際、ある女性記者の問いを発端に、風俗で働く知的障害を持った女性の方々を支援する番組を作りました。彼女らのように、僕らが目を向けないと知ってもらえないことがたくさんあるので、そういう人たちの拡声器になれる番組を作っていきたい。若い人たちには、そういう人たちに頼られるような記者になってほしい」と、報道にかける思いを露わにした。

 そこから話は、センシティブなテーマを扱うことが制作に及ぼす影響について踏み込まれていった。

 是枝監督は「山﨑さんは多くテレビの視聴者から多くの批判が来るような題材も取材される。さらに映画の中で、元北海道警の原田さんが『きみら(メディア)は無視されてるんだよ』とおっしゃっていました。違法行為を犯す権力が、明らかにメディアを恐れなくなったと感じています。山﨑さんはテレビ報道のこういった状況にどう抵抗しようと思われているのですか」と質問。

 山﨑監督は、「共感されにくいテーマを扱うときに、コンプライアンスが問題になってきます。表現ひとつ取っても、これは批判がくるんじゃないか、という意見が出る。確かにそれは大事なんだけれども、それを気にして取材すらしなくなるのは良くないと思うんです。取材しなくても誰も咎めないけれども、取材しなくては世の中の現状が伝わらない。そういうところに自ら突っ込んでいかないといけないと思います」と答えた。

 二人の想いが詰まった印象的な言葉のやりとりに会場は終始感嘆の声が漏れ、和やかながら沸き立つような熱い意志が観客席に満ちた、充実した雰囲気のままトークは幕を閉じた。

 登壇者:是枝裕和監督、山﨑裕侍監督

 座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバルは2月8日(木)から12日(月)まで開催。
 詳細はHPまでhttps://zkdf.net/(外部サイト)

公開表記

 配給:KADOKAWA
 12/9(土)よりポレポレ東中野、シアターキノほか全国順次公開

(オフィシャル素材提供)

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