イベント・舞台挨拶

『パスト ライブス/再会』試写会 上映後トークイベント

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 第96回米国アカデミー賞®では、作品賞と脚本賞の主要2部門ノミネートの話題作『パスト ライブス/再会』。その公開に先立ち、2月8日(木)に東京・渋谷にてトークイベントを実施。漫画家・コラムニストの辛酸なめこと、映画ライターのよしひろまさみちが登壇した。

 すでに本作を鑑賞済みである2人。よしひろは「アカデミー賞®作品では1番身近な作品」と位置付けた。これには辛酸も共感を示しつつ、「積み重ねてきた歴史というか、二人が少年と少女に戻ったような感動もあったり、普通の恋愛映画にはない魅力を持った、なんだかストイックな作品だなと思います」と、本作の持つ力強さを語った。

 さらに2人は物語の構成を現実世界も交えて深堀り。よしひろは「新型コロナウイルスの流行があってzoom等オンラインで人と会っていた時期があったじゃないですか。この映画にもオンラインで繋がるシーンがありましたけど、それは心の慰めになっていたのかな」と、ニューヨークに住むノラとソウルに住むヘソンが、24歳のときオンライン上で再会を果たすシーンを振り返る。「孤独なニューヨークでの生活で、ヘソンが子どもの頃泣き虫だったノラに「ニューヨークでは泣けないの?」と距離を縮めてくる会話をしたり、日常の出来事で盛り上がったりしていたので、何かあってもいいくらいだったけど、ヘソンがNYへ会いに行く勇気がなかったんですよね」と歯がゆさを口にした。しかし本作の二人は、その12年後にニューヨークで再会を果たす。この再会も踏まえてよしひろは、韓国で「運命」の意味で使われる物語のキーワード“縁”―イニョン―については、さまざまな形があると捉えているようで、「同窓会やSNSとかで昔の知り合いとコンタクトをとっても、話が盛り上がらなかったことがある。やっぱり縁が消えるっていうのも大事なのかな。学校を卒業すると同時に、その相手との縁もそれで“卒業”というか、もう1回連絡取らなくてもいいことはあるんじゃないかなと思いました」と、会う選択肢・会わない選択肢すべての“縁”の積み重ねに現在が成り立っていることを説き、この例に対してつい頷いてしまう観客の姿も多く見られた。また、辛酸も実体験を交えながら物語のキーワード“縁”を語る。「幼稚園のときにちょっと好きだった子がいて。1年前にたまたまテレビを見ていたら、レーシング・チームのエンジニアをしてる方で、その子と名前が一緒だ!という人がいたんですね。活躍している嬉さからその方を調べたら、結局私よりだいぶ年上で違う人。だけど違うって分かるまでの3日間はドキドキして楽しかったですね」と、日常に訪れた小さな“縁”について振り返っていた。

 トークは盛り上がりを見せ、テーマは男女間の恋愛観の違いについて。よしひろは「男って引きずるんですよ。(ヘソンにとってノラは)同じぐらい頭が良かったちょっと憧れの女子、だんだん美化されていくんですよね。偏見かもしれないですけど、女性の友達と話していてよく思うのが、元彼のことって割とすっぱり忘れていたりする」と語ると、これに対して辛酸も「女性はフォルダで上書きだけど、男性は別のフォルダってよく言われますよね。フォルダが違うんですよね」と“恋愛あるある”を語り合った。また、本作においては、ニューヨーク在住のノラとソウル在住のヘソンの間で生活環境の違いも顕著に描かれていることを指摘。辛酸は「ニューヨークにいるノラは上昇志向。小学生の頃の分かれ道のシーンで彼女は階段を上へ上がっていく、一方、ソウルにいるヘソンは比較的緩やかで平坦な道」と重要なシーンのメッセージ性を紐解いた。二人が選ぶ人生の価値観を表現したシーンに仕上がっている。

 さらに、よしひろは脚本を見た際に、場面説明や登場人物の状態を表す“ト書き”ばかりだったことに驚いたという。「たしかに考えてみたらそんなにセリフ多くないよね? それはやっぱり演技がすごく重要、あの演技があってこそなんです」と役者陣の演技を絶賛。つたない英語を話していたヘソンを演じたユ・テオについて辛酸は、「自分より英語できない人がいるんだとか思って嬉しく思ってたら、欧米で生まれ育っていて、英語、ドイツ語、韓国語のトリリンガルだった」と語り、会場は笑いに包まれた。実際に、ユ・テオはドイツ出身で、高校卒業後はニューヨークやロンドンの演劇学校で演技を学んでいたため、つたない英語の話し方は完全に演じていたことが分かる。ノラを演じたグレタ・リーについても、アメリカ出身の韓国系移民2世であり、英語が母国語。本作の魅力のひとつとも言える2人の韓国語でのやりとりでの巧妙な演技にはぜひ注目いただきたい。

 最後によしひろは本作について、「これは皆さんのお話に置き換えてご覧いただいて、咀嚼して人に勧めてほしいですね。再会した人との何かしらの経験は、どこかで1回ぐらいはあると思うので、そこに落とし込んでこの2人の関係を考えると、割とストンと腑に落ちる瞬間があるんですよね。そういうふうに見るとすごく刺さるよと言っていただくと、良いんじゃないでしょうか。男女の恋愛観・価値観はだいぶ違うものでもありますし、カルチャー・ギャップやジェンダー・ギャップも楽しんでいただければなと思います」と語り、イベントを締めくくった。

 登壇者:辛酸なめこ、よしひろまさみちさ

公開表記

 配給:ハピネットファントム・スタジオ
 4月5日(金) TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開

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