インタビュー

『ルージュの手紙』カトリーヌ・ドヌーヴ オフィシャル・インタビュー

© CURIOSA FILMS – VERSUS PRODUCTION – France 3 CINEMA © photo Michael Crotto

 フランスを代表する2大女優『シェルブールの雨傘』『8人の女たち』のカトリーヌ・ドヌーヴと、『大統領の料理人』のカトリーヌ・フロが初共演にして、息の合った“母・娘の掛け合い”で観る者を楽しませてくれる映画『ルージュの手紙』が12月9日、シネスイッチ銀座ほか全国公開となる。この度、映画界に咲き誇る大輪の花、カトリーヌ・ドヌーヴの貴重なオフィシャルインタビューが到着した。

カトリーヌ・ドヌーヴ

 1943年生まれ。フランス・パリ出身。
 10代の頃から映画出演を重ね、60年の『Les portes claquent(原題)』(未)で本格的にデビュー。62年の『悪徳の栄え』で一躍注目を集め、『シェルブールの雨傘』(63)でその人気が決定的になる。
 67年の『昼顔』で英国アカデミー賞主演女優賞にノミネートされ、『終電車』(80)ではセザール賞主演女優賞を受賞。92年の『インドシナ』で米国アカデミー賞主演女優賞にノミネート、セザール賞主演女優賞を受賞した。98年の『ヴァンドーム広場』では、ヴェネチア国際映画祭女優賞を獲得するなど、これまで数々の賞に輝き、今なお世界的大女優として映画ファンを魅了している。
 そのほかの出演作に『ロシュフォールの恋人たち』(66)、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(00)、『8人の女たち』(02)、『しあわせの雨傘』(10)、『神様メール』(15)など。

フランス映画祭の団長として来日されましたが、フランス映画の魅力や特色をお聞かせください。

 今回のフランス映画祭のセレクションを見ていただいても分かるように、ジャンルも描かれている人物も幅広いですし、また監督も多様で、今回2人の女性監督の作品もあるし、とにかく多種多様でオリジナル性があるところが魅力だと思います。今回のセレクションにもその部分が上手く反映されていると思います。

ベアトリスという女性に憧れる部分はありますか?

 ぜんぜん憧れはないです(笑)。ベアトリスにはすごく愛着はありますけれど、結果を考えずにとにかく今を生きているという人なので、すごくエゴイストなんだけどなんかこう憎めない、そういうところがいいと思いますし、彼女の生き方というのは昨日は昨日、今日は今日といった感じでほんとにどうなるかわからない枝に止まっている鳥のようにその日を生きている感じで、特に憧れるとかはないです。
 今回ベアトリスのセリフでシナリオを読んだとき私がとても笑ってしまったのが、子供について話している部分です。彼女は強がっているのかもしれないのだけれども、「子供は欲しいと思ったことも無かったし、子供がいなければ自分の面倒だけみればいいので便利だし、でも年取ったら子供がいたら便利なこともあったかもしれないわね」と言っていて、あのセリフは非常に面白かったです。

本作で自由奔放に生きるベアトリスを演じるにあたって、彼女にどんな思いを込めて、演じられましたか?

 ベアトリスは非常にエネルギッシュな役柄です。好奇心旺盛で何でもやってみるというところがあり、人生をとことん生きており、過去の愛してきた男性とか賭博とかタバコとかアルコールとか食欲とか……とにかくあらゆることに全力でエネルギーに溢れているので、演じるにあたってはやっぱり、私自身もエネルギーが必要な役柄だなと思いました。彼女は余命が限られているということが分かるのですけれど、今まで通りの生き方を貫いて一切後退しません。落ち込むということなしにどんどん進んでいく、すごくエネルギッシュな役柄です。

カトリーヌ・フロとW主演という形でストーリーは展開していきますが、彼女との共演はどうでした?

 今回だけに限らないけれども、映画を作るとなると撮影だったりリハーサルだったり、結構一緒に過ごすことになり、近しくなります。今回一緒に過ごしてみて分かったのは、彼女は内に秘めたものを持っている人で、現場では役柄に集中していましたね。

カトリーヌ・フロ演じる助産婦のクレールは生を導く存在で、ベアトリスはこれから死に向かっていくかもしれないという女性です。生と死を描いた作品でもあると思うのですが、どうでしょうか?

 シナリオでは対照的な女性が描かれていてそこが魅力でした。

ベアトリスは自らの死を感じて娘に会いに行くという行動をしますが、もしドヌーヴさんが同じ状況になったらどうしますか?

 彼女の立場になることはないと思いますが、ベアトリスは自分にとって何が大切かとかそういうことで行動しているわけではなくて、自己中心的な人で、ただ自分の余命が少ないと知り一人でいるのが怖い、誰かに頼りたいというエゴからああやって突発的に連絡をとってきたということがあります。ベアトリスはその日その日を生きていて、後ろを振り返ることもない人間なので。

ベアトリスとクレールが出会ったことで、それぞれが贈り物を貰ったような気がします。

 その通りで、お互いに出会えたことによって、それぞれが気づくことができなかったことに気づくということはあります。

脚本のどこに惹かれましたか? また完成した映画を観て、脚本を読んだ時の印象と違っていましたか?

 シナリオを読んで一番魅力を感じたのはやっぱり描かれている人物たちで、映画が完成して観ても、シナリオで読んだときに想像していた人物たちがきちんと描かれていました。描かれている人物が非常に面白いというのが一番気に入ったところです。登場人物が人間的だしセンチメンタルな部分もあるし、すごく生き生きとした人たちでした。もちろん撮影されてからどういう編集になるのかは分かりませんが、実際仕上がったものを観てみたら、私がシナリオを読んでこの人物のこういうところが好きだったという要素がそのまま描かれていました。

そういったことは今まで出演されてきた作品でもそうだったのでしょうか? それとも違うことのほうが多いのでしょうか?

 シナリオ通りに映画が完成するのは毎回ではありません。でも今回の作品については本当にシナリオを読んで想像していた通りの作品に描かれていました。でも時々素敵なサプライズがあって、シナリオで描かれていた時よりも良くなったなと思うこともあります。大抵はそうではないですけれども。なかには、撮影中どうなってしまうんだろうという作品もあって、仕上がって観たら良かったという作品もあります。例えばトリュフォーの『終電車』、あれなんかも撮影現場は大変だったけれども、仕上がったらすごく良かったです。

これまでのキャリアの中で、どのように作品の選んでいるのでしょうか?

 シナリオが気に入るというのももちろんですけども、監督に魅力があるかというのも大きなポイントです。今自分がやっている選択は25歳の時にはやっていなかったと思うし、その時の自分が共感できるシナリオだったり監督だったり、そういう人たちと仕事をしてきたので、作品を選ぶ時に、一貫性があるというよりは、その時その時に自分が共感するものを選んできました。

出演を決める条件はなんですか?

 シナリオが面白いか、自分が演じる人物だけではなく、その周りの人物も面白く描かれているかが決め手になります。

プロヴォ監督の作品はご覧になっていたのですか?

 『セラフィーヌの庭』は観ました。とても気に入りました。

いつも気鋭の監督たちと仕事をしていますが、自分からアプローチするのですか?

 一概には言えませんが、作品を観て会ってみたいなと思うこともあれば、偶然の重なりで出会ってご縁が出来たということもあります。

ポスターにある唇はカトリーヌさんのものですか?

 これは違いますが、映画の中の手紙に出てくるものは私のものです。

俳優の面白さや喜びを教えていただきたいです。

 トリュフォーの言葉を引用すれば、「喜びであると同時に苦しみである」ということだと思います。想像上の人物に命を吹き込むことは非常に面白いことだと思います。自分の人生で経験しないようなことを役柄で経験できたりする。自分でない誰かを演じることは非常に面白いことだと思います。

ご両親も俳優ですが、何か教わったこととかはありましたか?

 大家族で私は4人姉妹でした。親は親、子供は子供で世界が独立していたので、特にそういった面で教えてもらったということはないです。

経験を重ねた上で、今の俳優という仕事への向き合い方とかを学んで行ったのですか?

 自分のキャリアの中では、ジャック・ドゥミとの出会いが考え方に影響しています。彼は普遍的な独自の世界観を持った監督だと思います。

何歳まで女優をするとか決めているのでしょうか?

 特に決めていなくて、面白いシネリオがあって縁があればずっとやりつづけていきたいですね。

仕事をしていないときは何をなさっているのですか?

 撮影中にできないことをやりたいので、オフの時には友達に会うこともあれば映画館に足を運び映画を観ることもありますし、多くの役者がそうであると思いますが、撮影じゃなくても映画のために何かをやっていることもあります。

公開表記

 配給:キノフィルムズ
 12/9(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国ロードショー!

(オフィシャル素材提供)

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