イベント・舞台挨拶

『夜明けの詩』来日舞台挨拶

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 シンカ配給の映画『夜明けの詩』が、11月25日(金)より全国公開となる。

 まだ冬が残るソウル。小説家のチャンソク(ヨン・ウジン)は、7年ぶりにイギリスからソウルに帰国する。喫茶店で時間を失くした女(イ・ジウン/IU)と出会う場面から、ストーリーが紡がれていく。そして、想い出を燃やす編集者、希望を探す写真家、記憶を買うバーテンダーといった、心に深い葛藤を抱えながらも人生を歩み続ける、4人との出会いを経て、チャンソク自らも心に閉ざしてきた記憶と向き合い始めた――。

 主演を務めるのは、Netflixドラマ「39歳」、映画『愛に奉仕せよ』といった話題作に出演し、柔らかい眼差しや深みのある演技力で、観客を魅了する“ロマンス職人”ヨン・ウジン。共演を果たすのは、第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で2冠に輝いた、是枝裕和監督の最新作『べイビー・ブローカー』に出演し、6月にはプロモーションで6年ぶりに来日を果たしたイ・ジウン/IU。イ・ジウンは「マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~」で主演を務め、その演技に惚れ込んだ是枝監督が『ベイビー・ブローカー』への出演を熱望した逸話を持つ。さらに韓国の名バイプレイヤーとして名を馳せるキム・サンホ(『ビューティー・インサイド』)はじめ、イ・ジュヨン(『サムジンカンパニー1995』)、ユン・ヘリ(『ジョゼと虎と魚たち』)ら演技派俳優が集結。生と死、時間、記憶という深遠なテーマを、観る者たちの心に寄り添う癒しの物語に昇華させた。

 シネマート新宿に大勢の観客が詰めかけて、キム・ジョングァン監督、古家正亨氏が登壇すると、割れんばかりの拍手がおくられた。キム・ジョングァン監督は、「初めまして、キム・ジョングァンです。本日はよろしくお願いいたします」とご挨拶。日本通として知られるキム・ジョングァン監督だが、実は広島国際映画祭2022に参加するために、11月16日から日本に滞在していたという。「日本の小説や映画が好きで、プライベートでも日本に旅行で来ています。作り手として、日本の素晴らしい作品に影響を受けています。また日本に訪れると、心が安らぎ、制作者としてのヒントも得ることができます」と、親日家ぶりも披露してくれた。

 続けて、韓国大衆文化ジャーナリストとして活動し、韓流コンテンツを知り尽くした古家正亨氏がMCを務めており、映画『夜明けの詩』について、真摯な質問を投げかけていく。

 何故本作を撮影したのかと問われたキム・ジョングァン監督が、理由を語ってくれた。「本作を撮る前に、ハン・ジミンさんと、ナム・ジュヒョクさんが出演した映画『ジョゼと虎と魚たち』の監督を務めました。『ジョゼと虎と魚たち』は、メジャー作品として。本作は、第20回全州国際映画祭の全州シネマプロジェクトとして、同じ年に制作したんです。映画『窓辺のテーブル 彼女たちの選択』という作品があり、ある空間で起きる1日の対話劇を描いたのですが、このスタイルを踏襲した別作品を作りたいと考えました。対話劇というジャンルに、非常に魅力を感じています」と解説。その返答を受けた古家氏は、監督が紡ぎ出した映像美、作品性に魅了されたと賞賛する。

 主演を務めた“ロマンス職人”ヨン・ウジンさん、“国民の妹”イ・ジウン(IU)さんといった、日本でも人気がある役者をキャスティングした経緯を、キム・ジョングァン監督が明かしてくれた。「ヨン・ウジンさんは、映画『窓辺のテーブル 彼女たちの選択』で、一緒に仕事をさせていただきました。彼が演じたチャンソクは、対話を重ねていきながら、内面も変化していき、創作に繋げていくという役柄です。繊細かつリアクションが大事なキャラクターだと考えた時に、その演技を体現出来るのは、ヨン・ウジンさんしかいないと思いました。イ・ジウン(IU)さんは、『ペルソナ -仮面の下の素顔-』の[夜の散歩]という作品でご一緒しました。この作品のテーマが“生と死”を扱っていて、『夜明けの詩』と同じだったんです。なのでシナリオを着想したときに、イ・ジウン(IU)さんに相談をしてみました。大スターである彼女は、非常に挑戦好きだと思っているので、オファーしてみたんです」と、一番気になる情報を公表してくれた。

 ここで古家氏が、本作と日本が繋がる小ネタを披露してくれた。本編で登場するBarのシーンで使われたウイスキーグラスは、なんと新宿のゴールデン街で手に入れたものだと明かすと、観客からは驚きの声が上がった。入手時のエピソードを問われた、キム・ジョングァン監督が面白いエピソードを披露する。「新宿ゴールデン街には、多くのBarが存在しています。とあるBarでお酒を飲んでいたのですが、マスターが使っていたグラスが、とても美しかったんです。一部欠けていたグラスでしたが、何故か魅了されてしまったんです。その印象をマスターに伝えたところ、“僕は、いつも美しいと思いながら飲んでいるんです。初めて会った方に、そう言われて非常に嬉しいです。このグラスの良さに気づいてくれる方は、今まで出会えなかった”と言って、私にプレゼントしてくれたんです。なんか悪いなと思いながらも、一つの思い出として受け取りました。でもその時のマスターは、恐らく酔っていたと思います(笑)。ただBarでの体験を、『夜明けの詩』にも落とし込みました」と、魅力のある経験談を語ってくれた。

 続けて古家氏より、グラスをくれたBarのマスターに対して、映画にウイスキーグラスを登場させたことを告げたのかと、サブ・クエスチョンが展開された。「実はマスターにお知らせしたいので、昨日ゴールデン街に行ったんです。でもそのお店が見つからないんですよね(笑)。本当にお店が多すぎて、未だに見つからないんです」と、キム・ジョングァン監督が笑顔で答えると、客席から笑い声が聞こえてきた。

 また新宿ゴールデン街の魅力について問われると、「自称・路地好きなんですよ(笑)。僕の映画には、多くの路地が登場していまして、新宿ゴールデン街は、素敵な路地で溢れています。今後新宿ゴールデン街を舞台にした作品を、創作できるのではないかと考えています」と、日本を舞台にしたディープな構想も明かしてくれた。

 ここで映画を鑑賞した観客から、Q&Aを受け付ける。

『夜明けの詩』は、全体的にイギリス映画のような、静かで鬱々とした雰囲気を感じました。この作品で光を照らすとした場合、どのシーンが当てはまりますか?

 本作は、うら寂しい作品だと言えます。撮影監督とよく話したのですが、あらゆる物事には“光と闇”があると思います。その闇の中にある“光と闇”を、探してみようと思ったんです。本作で登場するシーンの中に、スクリーンが闇に包まれる瞬間があります。その暗さは、見る人に対して負担にならないように、気をつけながら撮影をしたんです。これは“生と死”を描くうえで大事なことで、絶望・否定的な部分だけでなく、希望もあるんだということを表現出来たと思っています。

日本がお好きだと伺いましたが、気になる俳優さん等いらっしゃいますか?

 たくさんの作品を手掛けた、成瀬巳喜男監督を尊敬しています。私も一つの作品だけなく、こつこつと積み上げていきたいと思っています。また犬童一心監督の『ジョゼと虎と魚たち』には、多くの影響を受けました。素晴らしい監督と役者さんたちの演技に感銘を受けたんです。いつか関わった人たちと、作品を共に出来たらなと思っています。
(古家氏より、具体的な役者名を問われると、キム・ジョングァン監督は恐れ多いと語りつつ、恥じらいながら答えてくれた。)
 女優さん主体の対話劇を作りたいと思っています。安藤サクラさん、黒木 華さんは、とても気になっている女優さんです。

 盛り上がりをみせた舞台挨拶も、終わりの時間を迎えた。最後にキム・ジョングァン監督が、観客に向けて挨拶を行た。「『夜明けの詩』は、寂しさが漂う作品ですが、その中に希望のようなものを感じ取れる映画だと思います。映画を通して、さまざまな感情を感じてもらえると嬉しいです。作品は、お会いしたことがない人や、感性が似ている方に向けての手紙だと思っています。ぜひたくさんの方に、映画館で観ていただきたいです」と締めくくり、盛大な拍手を送られながら、イベントは終了した。

登壇者:キム・ジョングァン監督、古家正亨(MC)

(オフィシャル素材提供)

公開表記

 配給:シンカ
 11月25日(金) シネマート新宿ほか全国ロードショー

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