イベント・舞台挨拶

『プーチンより愛を込めて』公開記念トークイベント

©Vertov, GoldenEggProduction, Hypermarket Film-ZDF/Arte, RTS/SRG, Czech Television2018

 引退を宣言したエリツィンの指名を受け1999年12月31日、プーチンが大統領代行に就任してからの1年間を追った貴重な映像を編集し、カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭 最優秀ドキュメンタリー賞を受賞したドキュメンタリー『プーチンより愛を込めて』の公開を記念して、黒井文太郎(軍事評論家)、岡部芳彦(神戸学院大学教授・ウクライナ研究会会長)を迎えてのトークイベントが開催された。汐月しゅう(元宝塚歌劇団星組)が、本作を見る意義などについて、詳しく話を聞いた。

 冒頭黒井は、「エリツィンのロシア大統領選挙を取材するなど、ロシア関係をずっとウォッチしている」と挨拶。ウクライナ研究会会長の岡部は、ロシアの「入国禁止リスト62番に入っている」が、実は、「阪神大震災で家が潰れた時に、エリツィン期のロシアで留学をしていた」とロシアとの関係を説明。「(高校3年生だった)ソ連崩壊直後に、『今しかないソ連崩壊を見に行こう』というツアーの募集を見て、1月から2月のセンター試験から大学受験の時期に、『大学受験は毎年あるけれど、ソ連崩壊は1度しかない』ということで行った」という驚きのエピソードも披露した。

 本作の感想を聞かれた黒井は、「タイトルを聞いて、最初、プーチンを褒める映画なのかと思ったけれど、プーチンの話を聞いていく中で監督自身のツッコミが入ったりだとかしていて、監督もその後指名手配されている。当時のプーチンのこういう映像は見たことがなかった。プーチンという人間に興味があるので面白かった。エリツィンのシーンが思ったより多く、エリツィンとプーチンの関係性が面白いと思った」と話した。岡部も、「エリツィンが結構出てくるというのが印象的」と同意。

 岡部は、「今から4年ほど前にエリツィン・センターというエリツィン大統領の博物館を3~4時間見て、エリツィンのファンになってしまった。エリツィン大統領は意外に几帳面な人で、展示を見終わると、『エリツィン大統領は人間的にも欠陥があったけれど、ロシアに自由をもたらしたのは間違いない』と締めくくられていた。そのエリツィンがプーチンを後継者に選んだというのはすごく皮肉なこと」と自身の印象を話した。

 黒井は、「プーチンは“強硬派”で出てきたわけではなく、エリツィンが自分たちの汚職から逃げたいということで、有力者の首相の首を据え変えた。プーチンはエリツィン・ファミリーを捕まえなかったので、そういう意味では義理を通している。本作で描かれている選挙では、プーチンの対立候補は共産党で、プーチンはエリツィンの陣営として出ていたので、プーチンはこの時点では猫をかぶっていた。プーチンはKGBの仲間と一緒に新興財閥をやっつけるということで立ち上がって、“KGBの力を復活させる”という強硬派に急速になっていった。2000年から大統領になったが、2003年くらいから石油の値段が高くなってロシアが強くなっていった」と当時について解説した。岡部は、50歳以上の国民の、「『あの時の地獄がまた訪れるくらいなら、今のロシアのほうがいい』というのがプーチン政権の支持につながっている」と説明。

 最後に岡部は、「人は変わる。プーチンが出てきた当時、今までのソ連・ロシアにはない若くて清々しい人が出てきたと思っちゃっていた。長いスパンで一人の政治家、世界的な人間を見ていくというのは大事なことだと思う。そういう意味で、この映画は示唆に富んでいる」と話し、黒井は「ウクライナの問題、プーチンの問題に興味を持っている方が多いと思う。僕はシリア問題もやったが、(ドキュメンタリーの製作者の)皆さんは命懸けで情報を伝えている。いろいろなものを見ていただければなと思う」とドキュメンタリーの製作者に敬意を示し、観客にメッセージを送った。

 登壇者:黒井文太郎(軍事評論家)❌岡部芳彦(神戸学院大学教授・ウクライナ研究会会長)
 MC:汐月しゅう(元宝塚歌劇団星組)

公開表記

 配給:NEGA
 池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開中

(オフィシャル素材提供)

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