イベント・舞台挨拶

『瞼の転校生』初日舞台挨拶

© 2023埼玉県/SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ 川口市

 映画『瞼の転校生』初日舞台挨拶が3月2日(土)、東京・渋谷のユーロスペースで行われ、主演の松藤史恩、共演の葉山さら、村田寛奈、市川華丸(劇団美松)、松川さなえ(劇団美松 太夫元)、メガホンをとった藤田直哉監督が登壇した。

 本作は、“若手映像クリエイターの登竜門”であるSKIPシティ国際Dシネマ映画祭20周年と川口市制施行90周年を記念して、埼玉県と川口市が共同製作した長編映画。大衆演劇の世界で生き、公演に合わせて1ヵ月ごとに転校を繰り返す中学生が、川口市を舞台に限られた時間の中で出会う人々と心を通わせながら、少しずつ成長してゆく姿を描いたヒューマン・ドラマとなっている。

 ⼤衆演劇一座に生まれた裕貴役を演じた松藤は、本作で映画初主演を果たしたが、主演が決まった際の心境を尋ねられると「最初に親から『主演に決まった』と聞いたんですけど、そのときはまったく実感が湧かなくて、いただいた台本(の自身が登場するシーン)に付箋を貼ったら付箋だらけになって“あれ?多いなあ”と思ったときに“頑張らなきゃ”って思いが込み上げてきました」と回顧し、撮影もやり甲斐のあるものになったようで「撮影期間は短くてギュッと撮影したんですけど、クランクアップしたときの達成感はヤバかったですね」と笑顔を見せた。

 また、齋藤 潤が演じる成績トップで不登校中の建の元カノ・茉耶役を演じた葉山と座員の浅香役を演じた村田は、大衆演劇というものを知っていたか聞かれると、葉山は「私はオーディションの話を聞いて初めて大衆演劇を知って、自分でインターネットで調べたりしました。撮影のときも史恩くんたちが演じているのを見て“こんなに面白いものなんだな”って知りました」と目を輝かせ、村田は「私も知らなくて、調べたり観に行ったりしたんですけど、1番びっくりしたのは劇場での撮影のときに『“座”長(座にアクセント)』って言うんですよね。あの発音が聞き慣れなさすぎたんですけど、新しい発見だったなって思いました」とコメント。これに市川は「(大衆演劇の)劇中で印象づけるためにイントネーションを変えて芝居の中で使ったりするので、普段の私生活でもイントネーションがおかしくなっちゃうことがありますね(笑)」と打ち明けて観客を笑わせた。

 一方、松藤は小学1年生のときに歌舞伎を体験した際、大衆演劇という存在を知ったそうで「名前だけは知っていたんですけど、そこから関わりがなくて、今回の映画をいただいたときに実際に観に行ったんです。華丸くんに『(大衆演劇を観る前より観た後での)表情がよくなったんじゃない』って言われるくらい、本当に楽しいステージでした」と声を弾ませた。

 そして、本作にも出演している大衆演劇・劇団美松の市川と松川は、本作に登場する座員の心情や生活はリアルに近いものだったか尋ねられると、市川は「その通りだと思います。劇中でバタバタしているところも僕たちは経験してきましたし、(劇中で描かれている)苦労とか苦悩も、僕が小学校とか中学校に通っているときに同じことを考えていたくらいなので、撮影しているときも完成した本作を観た後もリアルだなと思いました」と感嘆。

 松川は「大衆演劇の生活はまさに映画そのままでして、映画は1ヵ月に集中して描かれているんですけど、私たちは1年365日、毎日違う演目をやり、また昼公演と夜公演も演目を変えるんです。それを30日繰り返して、1ヵ月ずつ移動していきます。私のせがれも座長をやっているんですけど、うちにいる劇団の男の子もみんな子どもの頃から舞台を踏んでいるので、まさに1ヵ月ずつ転校しながらという生活を送ります。なかなか生活に馴染めなかったりしたこともたくさんあって、進路に悩むところもリアルに描かれているなと思いました」と情熱的に話し、本作を経て松藤と劇団美松の関わりが深くなったそうで「役を演じてくれただけではなく、劇団とともにお泊まりなんかもしてくれました。昨日(1日)が初日で、その前に10tトラック2台で荷物を移動するんですけど、そのお引越しまで手伝っていただきました。映画のあとにリアルな座員をやってくださっています」と告白。これに松藤は「千秋楽のときに泊まったので、荷物をお手伝いしようと思って参加しました」と明かし、松川は「史恩くんじゃなくて座員さんに見えました」と笑顔で語った。

 さらに、本作を企画した理由を聞かれた藤田監督は「もともと若い子を中心とした映画を作りたいなと思っていて、いろいろな経緯があって初めて大衆演劇を観たときに、思ったより若い人が中心となって活躍している姿を見て、それが意外でした。勝手な想像で(年齢が)上の方々がやっている文化だと思いきや、すごく若い人たちが活躍している姿をを見て、これを映画化できないかなと思ったのが出発でした」と経緯を明かし、建は自身を投影したキャラクターだと、本作が完成したあとに気づいたそうで「劇中の建って何者でもなくて、でもどこかアウトローでいたい。自分から学校に行かないことを選んで、自分がやりたいことをやって、中学生が過ごす普通の生活をしない。でも、それってレールから外れきっていなくて。僕も10代の頃って自分が特別な人間で何者かになるんだって、漠然とした思いで人とは違うんだって気持ちを持って生きていたので、その葛藤みたいなところが被りました。一方で裕貴が役者をやっている姿を見て、建からすると、裕貴にはやることがあるとことに対して羨ましさがあるんですよね。自分も建も、やりたいことがある感じではない中途半端なところで生きていたので、そういうところも自分と重なっていたなと思います」としみじみと語った。

 そして、自身が演じた役と似ている点を聞かれると、松藤は「僕は俳優の仕事を生後半年からやっているので、物心ついたときから演技をしていて、裕貴も小さい頃から大衆演劇の舞台に出ているので、少し違うんですけど道は同じで、気づいたら演技をしていたという部分が似ていますね」と答え、葉山は「茉耶ちゃんは勉強を頑張っている女の子なんですけど、私もこの1年間ずっと受験勉強で忙しくて、一生懸命、勉強する気持ちには納得しましたし、私も友だちにはっきりと意見を言うほうなので、建とか裕貴に物申すシーンはやりやすかったです(笑)。ただ、白塗りの人を幼馴染の家に突然連れて行くまでの勇気はないかなって思いました」とコメントして、会場の笑いを誘った。

 村田は「浅香はもともとアイドルをやっていて、新たに大衆演劇の道に進むという人生でしたが、私ももともとアイドル(9nine)をやっていて、そこから活動を休止して、そのあとどうしようかと思ったときにお芝居の道に進んだんです。置かれた状況の中でどうやって生きていくかみたいなことを考えていくというのは、私も浅香も同じだなと思って共感しました」と感慨深げに語った。

 最後に、メッセージを求められた松藤は「裕貴という役は劇団の座員としかほぼほぼ関わっていない中、建や茉耶という新しい友だちができて、最初はどう接したらいいかわからずに、たどたどしい感じで、探り探りの接し方をしていたんですが、だんだん本物の友だちとして変わっていくので、そんな変化の中にある裕貴を見ていただけたら嬉しいです」とアピールし、「そして、この映画を通して大衆演劇というものに興味を持っていただけたら、ぜひ劇場に足を運んでいただいて、大衆演劇に触れていただいたら、一段とこの物語が面白くなると思います」と呼びかけた。

 登壇者:松藤史恩、葉山さら、村田寛奈、市川華丸(劇団美松)、松川さなえ(劇団美松)、藤田直哉監督

公開表記

 配給:インタ―フィルム
 ユーロスペースほか全国順次公開中

(オフィシャル素材提供)

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