インタビュー

『RHEINGOLD ラインゴールド』ファティ・アキン監督 インタビュー

Linda Rosa Saal

 『女は二度決断する』でゴールデングローブ賞外国語映画賞を受賞したほか、世界三大映画祭で主要賞を獲得するなど、世界中で高い評価を受けているドイツの若き才能、ファティ・アキン監督の最新作『RHEINGOLD ラインゴールド』。3月29日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネマート新宿、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国順次ロードショー中。

 先日、ドイツとオンラインを繋いで行ったファティ・アキン監督のインタビューを映像とテキストで併せて解禁された。実在するドイツのスターラッパー・カターの破天荒な人生を映画にしようと思ったきっかけや、そのカター役に“イケメン過ぎる俳優”エミリオ・ザクラヤをキャスティングした裏話など、本作をより楽しめる貴重な話をたっぷりとしてくれた!

“素材がとにかく強い”カターの人生はイカれてる!?

 本作はカターが2015年に上梓した自伝「Alles oder Nix: Bei uns sagen man, die Welt gehört dir(オール・オア・ナッシング:世界はお前のもの)」をベースに、ファティ・アキン監督らしい、脚色を大胆に加えた映画となっている。「ドイツでは知らない者はいない」と言われるほどの有名人となったカター。カターの破天荒な人生を映画にしようと思った理由を尋ねると、「何といっても人生が『イカれてない?』というぐらい面白いと思った。7つの人生を生きてきたかのような、冒険あり、アップダウンあり、ドラマあり、ハッピー・エンディングあり……。素材がとにかく強くて、1本じゃなくて3本の映画を作れるんじゃないかと思うくらい。ひとりの主人公にも関わらず、ジャンルが次から次へ移行していくところにも興味を惹かれた」とカターの人生に惹かれた理由を語ってくれた。カターの実際の人生からはかなり大胆な脚色が加えられているが、「原作はファンに向けた本だった。でも、カターに興味がない人、ヒップホップに興味がない人、例えば日本の方とか、そういう観客の方々にどう伝えられるかを考えた結果、『変えた』というよりも自分の映画に『翻訳した』という感じ」と大胆な脚色の理由を明かした。

主演エミリオがイケメン過ぎる!
「ストリートの奴らはこいつが俺だと受け入れないぜ!」
カターの衝撃の言葉があったものの……

 本国ドイツではアイドル的存在で人気を博していたが、本作でそのイメージを脱却したエミリオ・ザクラヤ。正反対のイメージだった“ギャングスタ・ラッパー”カターに彼をキャスティングした経緯を聞いてみると、キャスティングを担当しているファティ・アキンの妻、モニク・アキンが強烈プッシュしてきたそうだが、監督含めスタッフ全員が驚いたという。「だってカターはイケメンとは言い難いのに、エミリオは腹筋が割れててGQとかファッション誌から飛び出してきたんじゃないかってくらいのイケメン。マジで!?と思ったよ」と監督は述懐する。だがモニクは「いい役者だし、実は肉体派だから!」と監督を説得した。「何よりエミリオ自身も、『誰かのカレシ』みたいな役ばかり演じてきてて、そういった『イケメン俳優イメージを壊したい』と思ってた。『この役を絶対にやりたい』と強い意志があった。役が決まった後は、昼も夜もずっとカターと一緒ecuに行動して、彼の動き方やしゃべり方を身に着けて、食べて食べて食べて20kg体重を増やして、トレーニングして筋肉を付けて、頭を剃って、髭も作って、突然完全にカターになってた」という驚異の役作りの裏話を教えてくれた。「もちろん本人よりはハンサムだけれども(笑)」の一言も忘れない。あまりのイケメンキャスティングに「カター自身も『ストリートの奴らは絶対にこいつが俺だって受け入れないぜ』と言っていた」そうで、カターを聴いていたスケボーキッズに「『映画が公開したら観てくれる?』と聞いたら、『観ないよ! だってエミリオなんてカターじゃないじゃん!』と言われたんだ」という衝撃的な経験を監督はしたそうだが、映画の公開が始まると誰もが彼の演技に納得、映画は大ヒットし、エミリオの起用は大成功だったことが証明された。

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「観客たちが“体験的な作品”を望んでいる」
映画に対する愛を込めた、ドイツNo.1ヒット作『RHEINGOLD ラインゴールド』

 『RHEINGOLD ラインゴールド』はドイツでの公開で大ヒットし、DC映画『ブラック・アダム』を抑えるという快挙を成し遂げた。興行成績は1000万ドル近くまで上り詰め、ファティ・アキン監督作品で最もヒットした作品となった。その大ヒットした理由をどう考えるか尋ねると、まず第一声は「そりゃ、いい映画だからだよ(笑)!」と言いながらも、「映画的な体験ができる作品だからかな」と分析する。コロナのロックダウンで人々はソファで映画を観ていた。「だからこそ、観客たちが以前以上に“体験的な作品”を望んでいると感じていた。それで、僕もたくさんのものが詰まった作品を作りたいと思ったんだ。状況が落ち着いたいま、映画館に戻って、大きなスクリーンで『映画的体験』という充実感を得られるような作品をね」とジャンルを横断していく作品に仕上がった理由を語る。本作はアクション、コメディ、キャラもの、社会派、そして音楽映画とジャンルレス。一つのジャンルに縛られず、1本の映画でいくつもの「映画体験」をすることが可能だ。「ドイツでは何度も観てくれる人がいた。それだけ豊かな作品になったのかもしれない。それが多くの人が観てくれた理由なのかな。あと、自分自身の映画に対する愛を込めた作品なんだ。それが伝わったのと『映画的体験』がヒットの理由だと思う」と、リピーターが多かったこと、ヒットの理由を自分なりに分析した。

ファティ・アキン監督 プロフィール

 1973年8月25日、ドイツ、ハンブルク生まれ。
 両親はトルコ移民。『愛より強く』(04)でベルリン国際映画祭金熊賞、『そして私たちは愛に帰る』(07)でカンヌ国際映画祭脚本賞とエキュメニカル審査員賞、『ソウル・キッチン』(09)でヴェネチア国際映画祭審査員特別賞受賞と、30代にしてベルリン、カンヌ、ヴェネチアの世界三大映画祭主要賞受賞の快挙を成し遂げる。その後も、ダイアン・クルーガー主演『女は二度決断する』(17)ではダイアンにカンヌ国際映画祭女優賞をもたらし、ゴールデングローブ賞外国語映画賞を受賞とその演出手腕は高く評価されている。
 『RHEINGOLD ラインゴールド』はドイツで1000万ドル近い興行成績をマーク、ファティ・アキン作品で最も成功した作品となった。数々の映画祭を席巻し続ける、ドイツを代表する名匠監督である。

公開表記

 配給:ビターズ・エンド
 ヒューマントラストシネマ有楽町、シネマート新宿、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか絶賛上映中!

(オフィシャル素材提供)

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