インタビュー

『ぼくの大切なともだち』ふかわりょう 単独インタビュー

©2006.FIDELITE FILMS-WILD BUNCH-TF1 FILMS PRODUCTIONS-LUCKY RED./WISEPOLICY

映画を観ながら、自分の中で現実生活での友達探しが、主人公の友達探しとパラレルに始まりました

 フランスの名匠パトリス・ルコント監督が贈る、おかしくも心に染みる男同士の友情物語『ぼくの大切なともだち』。本作を見て大切なことに気づかされ、応援隊長を引き受けたという人気芸人ふかわりょうが、映画の魅力と自身の友情観について語ってくれた。

ふかわりょう

 1974年8月19日、神奈川県生まれ。
 J-WAVE「ROCKETMAN SHOW!!」(金) 24:30~28:00他テレビ、ラジオに出演。
 お笑い芸人のかたわら、DJ、執筆など幅広い分野で活躍中。

今回、応援隊長になられた理由をお聞かせください。

 「応援隊長をやっていただけませんか?」と依頼をいただいたんですが、無理に仕事でやるのは嫌なので「とりあえず観せてください」とお願いし、“自分的にピンと来なかったら断ろう”と、断る気満々で観たんです(笑)。でも、観たらめちゃめちゃ面白かったんで、「これはぜひ」と。映画に関しては、お金をいただいても、良いと思えなければ出来ないものは出来ないですね。

これまでも、パトリス・ルコント監督の作品はご覧になっていたのですか?

 有名な作品しか観ていません。官能系のほうだけです。『仕立て屋の恋』とか。いわゆるフランス映画やヨーロッパ映画って、ちょっとテンポが遅かったりといった印象がありますね。別に嫌いじゃないんですけど。でも、今回のは日本人向けに創られたんじゃないかと思うくらい、ものすごくテンポが良くて心地よい感じで展開していくので、一気に観てしまいました。よくサンプルDVDって、何回かに分けて観たりするんで、今回も“4回くらいに分けて観ようかな”みたいな気でいたんですよ。でも、一気にダーっと観てしまいました。『列車に乗った男』のようなルコント映画は大人向けでしたけど、今回の映画はエンターテインメント色が強いので、若い人も分かると思いましたね。とても大事なことを言っているのに、ここまでユーモアあふれる作品に仕立てるのはすごいです。しかも、日本人が観ても違和感のない笑いの感覚があると思いました。日本人向けカットなのかと思っちゃうくらい、スコーンとハマりましたね。

ふかわさんはもともと、ヨーロッパ映画をよく観られる方なのかと思っていました。

 ヴィクトル・エリセ監督の『ミツバチのささやき』は大好きですね。あと、『ニュー・シネマ・パラダイス』『時計じかけのオレンジ』『es [エス]』なんかも好きです。いずれにせよ、心の動きが丁寧に描かれた映画が好きで、いわゆるアクションものはあんまり好きじゃないですね。「ああ、楽しかった」だけで終わるのではなく、言葉にはならないんだけど、確実に心に入ってきたな、心に何かが生まれたな、と感じさせてくれる映画のほうが好きです。
 今回の映画もどちらかというと、そっち寄りかなと思ったんです。しっとりとしてゆっくりとした感じなのかなと思って観たんですけど、日本の午後9~11時のスペシャル・ドラマ枠でも流せるくらいのテンポの良さで、普通に楽しめましたね。

結構、涙もろいほうだとか?

 僕ですか? そうですね(笑)。今回は感動で泣くというよりは、人の優しさに涙したという感じで、2~3回危ない瞬間がありました。ブリュノの優しさにちょっと「うぅっ」て来たんです。

ダニエル・オートゥイユが演じたフランソワとダニー・ブーンが演じたブリュノは全くタイプが違いますけど、ふかわさんはどちらかというと……?

 僕は完全にフランソワのほうです。観てすぐ、“あぁ、この人は僕の10年後、20年後だな”と思い、“今のような生活をしていると、こんなふうになるぞ”と宣告されたような気分でした。完全にフランソワと自分が重なりましたね。僕みたいな人は少なくないと思いますけど、スクリーンの中の彼に入りこみつつ、自分の中で現実生活での友達探しが、彼の友達探しとパラレルに始まったんです。どっちが先に見つかるかみたいに、不思議な感覚に陥りましたね。いわゆる感情移入とは別の次元の感情が自分の中で生まれたんですから。

ルコント監督が来日された時、お話を伺ったのですが、監督ご自身は「自分は親友がいないし、いなくても特に不自由は感じない」とおっしゃっていました。ふかわさんはいかがですか?

 僕の場合、親友と呼べる人は……照れくさいという思いもありますけど、いま現在はいませんね。潜在的にはいるんですよ。親友と呼べる人はそのうちには現れるなという実感はあるんです。ただ、今は親友と呼べる人、あるいは呼びたい人はいないと思いますね。仕事に生活を支配されているから、仕事仲間に親友という意識で接するとちょっと馴れ合ってしまうので。でも例えば、1本の番組が終わった時、ひとつのプロジェクトが終わった時、“あぁ、絆が深まったな”と実感できるんですけど、今はその絆を結んでいる最中という感じですかね。

過去はどうでしたか?

 過去はやっぱりいました。学生時代とか。僕、部活とか一生懸命やっていたので。陸上部だったんですけど、一緒に長距離を走ったりとか痛みを分け合ったりすると、やっぱり親友になりますよね。でも、生涯の親友となると難しいです。一回親友になったら、よほど裏切るようなことさえなければ、その絆は簡単には切れないという気はしますけど。

男女間で親友関係は成り立つと思いますか?

 性欲に支配されない時期が来れば、可能だと思っています。10~20代はそれしか考えていませんから難しいですけど、30歳を過ぎると全然ありだなと思えてきました。

では、孤独な時間にはどうして過ごしていますか?

 僕はそもそも、孤独に酔うタイプだったんですよ。だから仕事のモチベーションも、孤独であることのカッコ良さみたいなところに求めていた時もありました。一匹狼でいることがカッコいいみたいな。ただ、物事は一人だけでは進まないんですよね。どんなに素晴らしいアイデアを持っていてもやっぱり、周りに協力者がいないとダメなんですよ。だから、周りにいる人たちを大切にしようと気づいたことと、笑顔でいる時間をもっと長くしようと思いました。僕は結構、考え込んでしまうタイプなので、眉間に皺を寄せている時間が長いんです(笑)。“すっげ~怖い人が見てんな”と思ったら、自分の顔だった……みたいなことがよくあるので、それはダメだな、と。常に笑顔でいることが、友達を増やすきっかけになるんじゃないかなと思っています。傷つくのを恐れて、人と接するのを避けてしまうこともあるじゃないですか。“きっと、こういうことを言われるんだろうな”なんて、余計な詮索をしたりして。でも、それを怖がらずに受け入れていくべきだなと思うようになりましたね。

では、これから映画をご覧になる方々に向けて、メッセージをお願いいたします。

 『ぼくの大切なともだち』応援隊長のふかわりょうです。この映画は……まあ、面白い! 単に面白いと言ってしまったら、どんなものかと思われるかもしれませんが、とにかく観てください。特に男性の中には、“仕事で忙しくて、映画なんか観てらんないよ。映画館なんて学生時代から行ってないし、行く時間なんかあるわけないだろ”と思っている人もいらっしゃると思いますが、そんな人こそ、ぜひ観てください。きっと人生が変わります。心に余裕のある、幸せに満ちた生活に変わるかもしれませんし、失っていた大事なものに改めて気づかせてくれると思います。ぜひ、忙しい人ほど観てください。お願いします!

 芸人さんにはあまりお会いした機会がなかったのだが、こんなふうに深く真剣に考えながら、人々を楽しませようと日々頑張っていらっしゃるのだなと、短い時間だったがふかわさんのお話を伺って、いろいろと考えさせられた。
 周りにいる人たちを大切にしたいと思ったというふかわさん。友達という存在の温かさ、友達がいることのささやかなしあわせを描いているこの映画を、一生懸命皆さんに伝えてほしい。


 (取材・文・写真:Maori Matsuura)

公開表記

 配給:ワイズポリシー
 2008年6月14日(土)、Bunkamuraル・シネマ他にて公開

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