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『市子』第28回釜山国際映画祭 公式上映&舞台挨拶/Q&A

©2023 映画「市子」製作委員会

 杉咲 花主演、戸田彬弘監督による映画『市子』が第28回釜山国際映画祭のコンペティション部門のひとつであるジソク部門に正式出品された本作の公式上映が、10月5日(木)に映画の殿堂(釜山シネマセンター)にて行われ、杉咲 花、若葉竜也、戸田彬弘監督の3人が登壇した。
 前日10月4日に行われたオープニングのレッドカーペットとセレモニーに参加した杉咲と若葉は、本日のワールドプレミア上映について「(お客さんと)一緒に観るのも滅多にない経験ですし、終わった後Q&Aもあるので緊張しますが楽しめたら」(杉咲)、「これが一番緊張するかもしれません。初めての感触なので、海外の方にどう受け入れられるか興味があります」(若葉)と語っていた。すでに国内でも「世界に届けたい名作」「全てが〈別格〉」などマスコミから絶賛の声が続々と上がり話題となっている本作は、第36回東京国際映画祭ではNippon Cinema Now部門にも正式出品が決まっており、この釜山国際映画祭での上映がワールドプレミア上映となった。

 上映前の舞台挨拶では、「偉大な映画祭にお招きいただき光栄に思っています。今日が世界初上映と言うことで、どのように伝わるか緊張します」と戸田監督がまずは挨拶。本作の主演を務めた杉咲は「アンニョンハセヨ。杉咲 花です。自分にとって特別な映画が、ようやく皆さんに観ていただけることができてうれしいです。一緒に観られる機会はなかなかないので緊張するんですけど、楽しみたいと思います」と韓国語を交えた挨拶で会場を沸かせ、若葉も「映画祭はもちろん楽しませてもらっているんですけど、一人の人間としてこの国と釜山という街を楽しんでいます。今夜も楽しい時間を作っていきたいと思いますので皆さん共有してください」と続き、韓国での上映に対する喜びを伝えた。本編の上映が終わると、拍手が沸き起こり、観客と一緒に鑑賞をしていた戸田監督、杉咲、若葉が、映画祭の醍醐味でもあるQ&Aを行うため舞台に再び登壇。満席の劇場で鑑賞した観客からの質問を受け始めた。

 最初の質問で「この作品に携わることになったきっかけ」を聞かれると、原作となる舞台も執筆している戸田監督は「この物語自体が、もともとは舞台の脚本で、それを映画化するという話になり、主演・市子を誰に託すかを考えながら脚本を書いていました。自分としては杉咲 花さんにやっていただきたいという思いが強く、お手紙を書かせていただきました」と裏話を披露。

 「監督からいただいたお手紙がすごく記憶に残っていて、自分の監督人生において分岐点となる作品だと思っていると言われ、この作品に懸ける並々ならぬ想いを感じました。そして、自分が市子という役を演じられる機会を与えられたことについても深く感動し、震える想いでオファーをお受けしました」と杉咲がエピソードを語ると、「僕には(監督からの)手紙はなかったんですけど(笑)、この台本をもらったときに、自分以外の俳優が長谷川という役をやっているのをあまり想像したくないなという想いになりました。そういうことは普段感じることがないので、すごく特別な作品だったんだと思います」と若葉が回答。さらに多数の手があがり、熱心な質問が続く。

 「映画を撮影するときに、感情的な部分で消耗することが多かったと思うのですが、実際はどうでしたか?」という質問に杉咲は少し考え込み、一言一言を噛みしめるように「市子として、カメラの前に立つときに、満ち足りていない感覚を持つことが必要な気がしていて、その気持ちに向き合うことに集中していました」と役に入り込んでいた様子を語る。

 さらに若葉は、「僕は、市子の人生をお客さんと一緒に見ていくという立場なので、その事実を知った時のリアクションは、本当に新鮮なものじゃないといけないと思っていました。台本を読み込んだり、ここで意図的にこういう声を出そうとか、涙を流そうとかではなく、その時に自分がどんな気持ちになるんだろうということを楽しんで演じました。なので、初めてこの映画を観たときは、自分の想像とは違う表情をしている自分自身を見ることができ、戸田監督に感謝しています」と答え、この回答に俳優2人の作品に懸ける想いが込められる。

 また、上映後ならではの「自分たちが作ったこの映画で、好きなシーン、印象深いシーンを教えてください」と問われると、戸田監督はネタバレともなるであろうシーンをあげ「この作品は、セリフがないシーンがたくさんあるのですが、中でも、台詞がまったくないこのシーンは杉咲さんのお芝居ひとつにお任せしていて、6分ほどの長尺のシーンを俳優さんのお芝居ひとつに任せて撮っていくといことが非常に楽しくもありました。映画の中で重要なシーンのひとつなので印象に残っています」とコメント。若葉は「あんなに頑張った北くん(森永悠希)に“いらない”とはっきりと告げる市子のシーン。ただ、あのシーンが好きです。市子のヒーローになるんだと意気込んでいた北くんに、『もう過去の人には会いたくない、なぜならケーキ屋をやるから』と言うシーンは……、僕は何度観ても笑ってしまいます」と、笑いをこらえながら回答し、客席でもシーンを思い出してか、笑い声が。

 杉咲は「私は婚姻届けを長谷川君から受け取るシーンは特に印象に残っています。若葉くんとは、今回で3回目の共演になるのですが、自分がどういうふうに現場にいたいとか、どう表現したいということよりも、第一に相手のために現場に立ってくださる方で、目を見つめていたら、自分が想像していたものからどんどんはみ出しいき、想像もできなかったところに到達できたシーンになった気がしていて、若葉君には、本当に感謝しています」と答えた。

 最後は笑顔で写真撮影。「海外の方にどのように作品を受け取ってもらえるか」に緊張をしていた杉咲、若葉、戸田監督の3人だったが、映画の本質に深く切り込んでくるような質問も多数あり、作品のエネルギーと観客の作品への熱量が合わさり、登壇者3人にとっても観客にとっても、忘れられないワールドプレミア上映になったことだろう。なお、釜山国際映画祭の受賞結果の発表は、10月13日(金)に予定している。ぜひ『市子』の動向に注目してほしい。

 登壇者:杉咲 花、若葉竜也、戸田彬弘監督

釜山国際映画祭コンペティション ジソク部門とは?

 キム・ジソク賞は、2017年に設立され、昨年から正式なコンペティションとなった釜山国際映画祭を代表する部門のひとつ。新人監督を対象としたニューカレンツ部門と並ぶコンペティション部門で、今年は本作を含む10本の作品がキム・ジソク賞を競う。これまで同賞へ出品された日本映画には、杉咲も出演している『楽園』(19/瀬々敬久監督)や受賞を果たした『羊の木』(18/吉田大八監督)がある。

公開表記

 製作幹事・配給:ハピネットファントム・スタジオ
 12月8日(金) テアトル新宿、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開

(オフィシャル素材提供)

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